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それは丘の上から始まった 1923年横浜の朝鮮人・中国人虐殺 書評

◆著者  後藤 周
◆販売 「ころから」1800円(+税)
 
 関東大震災から100年、震災を機に発生した朝鮮人・中国人虐殺について丹念に取材し、残された資料を基に、事実を明らかにした著作。
 積み上げられた事実は衝撃的。
 「朝鮮人殺害さしつかえなし」の流言(デマ)のもとに行われた殺戮の実態は「これが本当に起きたことか」と、にわかには信じられない、非人間的なものだ。
 事態の根底に「朝鮮人・中国人差別」があったことを、正面から受け止めなければいけない。なぜなら不条理な「外国人差別」は、現在の日本社会でも、大手を振ってのさばっているから。
 日本政府は虐殺について「事実関係を把握できる記録が見当たらず」と言い放ち、東京都知事は就任以来、虐殺犠牲者への追悼メッセージの送付をやめてしまった。歴史に正面から向き合わない為政者たちの振る舞いは、「次の悲劇」の温床となりえる。


 著者は中学校教師を務める傍ら、30年以上にわたり事件の記録を収集。その蓄積は150冊のノートになっているとのこと。歴史の真実を追及する「執念」ともいうべき強く熱い思いを感じる著作である。

 神奈川県出身者として、衝撃なのは、横浜という街が、この事件の発信地であり、「震源地」であった、という事実だ。生まれ育った地域で起きたことへについて、あまりにも無知であったことへの衝撃を受けた。
 多くの人に読んでほしい、今年ぜひ読むべき本のひとつ。

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