フォークナー「今日申し上げたことを思い出します。
「今日申し上げたことを思い出します。善人であるためには、悪人と同じように、支払わなければならない代価があるということです。その勘定書がまわってきたとき、善良な人間は、そんなものは知らないとは言えません。むりに払わされるはずのものではないといって、こばむこともできません。正直な人間が賭博をしたのと同じです。悪人が支払いをこばむのは勝手です。だれも、悪人がその場で払うとか、いつか別のときに払うとかいうことは期待しません。しかし、善人がこばむことはゆるされません。悪人よりも善人であるためのほうが、支払いには長い時間がかかるかもしれません。そういう勘定書の支払いをあなたは以前に一度もしなかったわけではないでしょう。こんどはそのときほどひどくはないはずです。」
フォークナー 「八月の光」