革命

「新しい同志が増えるたびに、あなたがよりいっそう、裏切られやすくなるということなのですぞ。ワイオミングお嬢さん。革命は大衆を同志にすることで克ち取られはしないのだよ。革命は、ごく少数の人々が実行することのできる科学なのです。それは正しい組織を持ってるかどうか、とりわけ、意志の疎通如何にかかっているのですよ。そして、歴史における適当な時期に、実行するのです。正しく組織されており、うまく時期が合っておれば、それは無血革命ということになるのですな。不器用に、あるいは時期尚早なときに行われると、その結果は、内乱、群衆による暴力行為、追放、恐怖です。失礼な言い方を許していただきたいが、現在までのところはどうも不器用に行われてきましたな」

ワイオはとまどっていた。

「あなたのおっしゃる“正しい組織”って、どんな意味ですの?」

「機能的な組織ですな。電気モーターはどういう具合に設計しますか?それに浴槽を取り付けますか?ただそこにあるというだけで?花束がそいつの役に立ちますか?岩の塊は?いや、その目的に必要な部品だけを使用し、必要以上に大きくは作らないでしょう・・・・・・それから安全装置を取り付けるのです。機能が設計形態を支配するのですよ。

革命においても同じことです。組織とは、必要以上に大きくあってはいけないのですよ・・・・・・単に参加したいというだけの理由で同志を入れては絶対にいけませんな。そしてまた、他の人に自分と同じ見解を持たせるという楽しみのために、他人を説得しようとしてはいけないのです。時期が来れば、その人も同じ意見を持つようになりましょうからな・・・・・・そうでなければ、あなたは歴史における時期を間違ってい判断したということですよ。ああ、教育機関がつくられることになるでしょうが、それは分離されなくてはならんものです。つまり、扇動宣伝は基本構造と関係がないものだからです。

基本構造に関してというとですな、革命というものはまず陰謀から始められます・・・・・・つまり、常に裏切りによる被害を最小限にくいとめるように組織されます・・・・・・つまり、常に裏切り者は存在するものですからな。ひとつの解決法は細胞組織であり、これまでのところ、それ以上の発明はされていませんな。

多くの理論づけが、最適な細胞の大きさについてなされて来ました。わしの考えるところ、三人の細胞が最上であると歴史は示していると思いますな・・・・・・三人以上となると、いつ食事をするかについても意見が合わず、いわんや、いつストライキをやるかなどについてか尚のこととなります」


ロバート・A・ハインライン 「月は無慈悲な夜の女王」

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