深く喰いこんでいる

俺が頭に来たのはその女が憎んでいる物事のリストではない。そいつは明らかにサイボーグみたいな気違いなんだ。おれが気に入らないのは、常にそういう禁止に賛成するやつがいるということだ。きっとほかの連中が喜んでしたがることをとめたがるのは、人間の心の中に驚くほど深く喰いこんでいるってことなのだろう。規則、法律・・・・・・常に他人に対するものなのだ。俺たちの暗い面であり、われわれ人類が木々の上から降りるようになった以前から備えているものであり、俺たちが立ち上がって歩くようになったときに振り捨てるのを忘れたものなのだろう。つまり、そういう連中のひとりとして言わない・・・・・・「わたしが止めるべきだと知っていながらそうすることができないことですから、どうかこれを通して下さい」同志、常に人間というものは他の連中のやっていることを憎悪して、いつも駄目というものなんだ。彼ら自身のためになることだからそんなことをやめさせろ・・・・・・それを言い出す者自身がそのことで害を加えられるというんじゃないのにだ。


ロバート・A・ハインライン 「月は無慈悲な夜の女王」

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