太宰治 「僕は、絶対に詭弁家ではない。
「僕は、絶対に詭弁家ではない。なんでも、みな、正確に知っている。自分の馬鹿さ加減も、見っともなさも、全部、正確に知っている。そればかりでは無い。僕は、ひとのうしろ暗さに対しても敏感だ。ひとの秘密を嗅ぎつけるのが早いのだ。これは下劣な習性だ。悪徳が悪徳を発見するという諺もあるけれどまさしくそのとおり、ひとの悪徳を素早く指摘できるのは、その悪徳と同じ悪徳を自分も持っているからだ。自分が不義をはたらいている時は、ひとの不義にも敏感だ。誇りになるどころか実に恥ずべき嗅覚だ。僕は、不幸にして、そのいやらしい嗅覚を持っている」
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