草森紳一 毛沢東の趣味は水泳と卓球だった。

毛沢東の趣味は水泳と卓球だった。いうまでもなく中国では卓球がお家芸である。
ピンポン球にもピンからキリがあり、球の丸みの検査がある。下に受皿の付いた傾斜板の上を転がしてみるだけである。一級品の球ならば中央の受け皿にまっすぐ転がっていく。こういうのは試合に用いられる、釣り合いの取れていない、変更のある球は偏って落ちる。こうした球は日常の使用に供される。

文化大革命中、香港への脱出者は、あとを断たなかった。
1971年には11300人であり、翌年には24100人と倍にふくれあがっている。このときピンポン球は思いもかけない用途に使用されていた。

「海を泳いで香港に渡る青年たちは、独特の<浮き袋>を使っている。毛沢東がピンポンを好み、ピンポンが一般に普及しているので、ピンポンはいくらでも手に入る。そこで、たくさんのピンポン球を袋に詰めて、<浮き袋>にするのである。避妊具をふくらませて、網袋に詰めるものもいるという」

『毛沢東の悲劇』の柴田穂は、ピンポン球の利用のちがった側面を報告している。避妊具の利用は、ピンポン球と同様に一人っ子政策により、いくらでも手に入った。

草森紳一「中国文化大革命の大宣伝」(芸術新聞社)より

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