バスケW杯 アメリカ戦の大敗から日本バスケは何を学ぶべきなのか
<おことわり>
※この文章はかなり穿った見方で極論を書いています。また僕自身はバスケがド下手なので、非常におこがましいことを書いていることを重々自覚しています。大前提として全ての選手や関係者にリスペクトの気持ちを抱いています。これは妄言であり便所の落書き程度に思っていただければ幸いです。
日本時間昨夜、FIBAワールドカップ2019でグループE1次ラウンド日本対アメリカの試合が行われました。この試合が地上波で生中継されたことにはバスケットボールファンの1人として、かなり熱いものを感じました。
結果は98-45でアメリカが勝利しました。この数字をどう見ればいいかーバスケを知らない人でもボロ負けだというのは一目瞭然ですが、最強の国アメリカ相手だから仕方ないんじゃないの?と思う人もいるだろうと思います。
まず一つ考慮しなければならないのはアメリカ代表に選出されたメンバーは、全員NBAで活躍している選手ではありますがスーパースターと呼べる人材はいないということです。「次の」スーパースター候補たちではありますが、正直セルビアやフランスなどと戦って絶対に勝てるほどの戦力ではないと思います。
またアメリカ代表も昨日の試合ではシュートを外しまくってましたが、NBAの公式球とFIBAの公式球はメーカーが違うため微妙なシュートタッチの違いがどうしても生まれる。たぶん試合の中でアジャストしていくので、これからの2次ラウンド以降はもう少しシュート精度が上がると考えられます。
ということは飛車角落ちの、しかもシュートタッチが本調子とは程遠いアメリカ代表相手にダブルスコアで負けた。これは善戦したとは言えないのではないか。もちろん日本代表だって怪我があってベストメンバーではないですが、それにしても少し期待はずれだった感は否めない。
何がダメだったか、スタッツを見てまず明らかにヤバいのはリバウンドでボロ負けしてることですが、むしろ僕はそれは仕方ないと思います。相手をしっかりとボックスアウトしてリバウンドを取るということは、守備の最も基本的な動作です。日本代表にまで選出されたメンバーがそこをいい加減にやってるとは考えられないので、それだけアメリカ代表の方が身体能力で圧倒していたということだと思います。
それよりも根が深い問題は、スリーポイントの差にあると思います。最もアメリカ代表も3Pの成功率は34%と、決して高い数字とは言えません。
が1試合を通して彼らは41本も打ちまくり、14本を成功させています。一方、日本代表は14本打って入ったのはたったの3本。お分かりでしょうか?実はこの3Pの本数の差だけで33点も差がついているのです。
実はここ5年ほどで、NBAの(世界の)バスケットボールは大きなパラダイムシフトが起こっています。簡単に言えば、より科学的・数学的になったのです。野球でもセイバーメトリクスという統計学的な見地から戦術を組み立てることが顕著になってきて、例えばバントは優れた戦術ではないとか、一番いいバッターは2番に置くべきだとか、今までの常識が見直されてますよね。それと同じことがバスケットにも起こっています。
ましてバスケは1試合で互いに100点近く得点するスポーツなので、いかに効率よくシュートを決めるかが非常に重要になってきます。そこでポイントになるのが「期待値」という考え方です。
どフリーのレイアップやダンクはほぼ確実に決まるため、得点の期待値が高いです。同じように3Pもシュートが入る確率は低いですが、入れば3点になるため上手い人が打てば期待値が高い。
一番期待値が低いシュートは何かというとミドルシュートです。フリーのキャッチ&シュートで打てる状況がほぼないので、ざっくり言えば成功率は5割いかないくらいでしょう。
すると3Pは33.4%以上の成功率で決められるのであれば、ミドルシュートを打つよりも効率の良い攻め方になるわけです。あくまで理論上なのですが、これは現在世界のトレンドとなる考え方です。今やポイントガードからセンターまでがスリーポイントをこれぐらいの成功率で決められることが当たり前となっています。
昨日の試合に話を戻すと、日本は完全にアメリカの術中にハマっていました。つまり期待値が最も低いミドルシュートばかり打たされていたのです。ゴール下には2メートル越えの巨人たちが待ち構えているため、簡単に切り込んで勝負にはいけない。かといって高い確率でスリーポイントを決められるシューターもいない。苦し紛れにトップでピック&ロールして守備を乱そうとしました。
ところがアメリカ代表のビッグマン達はドロップと言われるディフェンス、要するにミドルシュートやフローターのシュートならフリーで打たせていいから、とにかくイージーなシュートだけはさせないという守り方を徹底しました。これはもし日本代表のパワーフォワードやセンターが3Pを打てれば打破できる戦術なのですが、無論できないことを分かった上で徹底的に苦し紛れのシュートを打たせ続けることに成功したわけです。
もう一つ、アメリカ代表にあって日本代表に無かったものが「スペーシング」、つまりいかにコートを広く使えるかという考え方です。FIBAと違いNBAのスリーポイントラインは1メートルぐらい後ろにあります。つまりアメリアの選手達は普段からより広いエリアを守ることに慣れているわけです。バスケにおいて攻撃する時は、コートを広く使えれば使えるほど有利です。ゴール下に構える巨人達を外に引っ張り出せれば、小さい選手でも中に切り込んでイージーなシュートを打てるからです。
ただ日本バスケ、Bリーグとか高校バスケの決勝なんかを見ると、インサイドでゴリゴリとポストプレーをして得点を重ねる前時代的なスタイルが未だに主流だと言わざるを得ない。もちろん、ゴールに近い方がシュートの確率は高いし、インサイドで支配的な選手がいれば守備が収縮してアウトサイドにボールをキックアウト出来る。だからこの戦術は得点効率がそこまで良くないものの、短期決戦においては超有効なので間違いだとは思いません。
ただしインサイドを担う選手が高校ならアフリカからの留学生だったり、Bリーグなら助っ人外国人選手だったりと、アウトソーシングに偏り過ぎていたことが日本の成長を阻害していたことは間違いなく事実だと思います。なぜなら昨日明確に結果として出たから。ファジーカスクラスの選手でも、インサイドで思うようにポストプレーが出来ない。そういう状況で、八方塞がりになってしまったでしょ?
もう一つスペーシングでいうと、昨日八村選手がほとんど存在感なく消えていたのもここに理由があります。彼のポジションはパワーフォワードですが、スリーポイントラインの外から積極的にドライブしてミドルレンジでジャンプシュートを打つのが得意な選手です。そのプレースタイルを活かすには敵のディフェンスがなるべくゴールの近くにいないことが重要なのですが、昨日の日本のようにスペーシングが上手く出来ていない場合、ドライブしたところで簡単にヘルプディフェンスに捕まってしまうので打つ手が無かったわけです。後はこんなとこでボディコンタクトするプレーをしてNBA開幕前に怪我するリスクを取らなかったという見方も出来ると思います。
逆に気を吐いた馬場選手の何が良かったかというと、速攻から積極的にバスケットにカットインするプレーで得点を重ねたこと。さすがサマーリーグに出てただけあります。失うものは何もないので、馬場選手はかなり自分をアピール出来たと思います。僕もすっかりファンになりました笑。
最後に僕が一番言いたいことを言います。
昨日の敗戦で一番大切なのは、ここから何を学ぶかだと思います。僕は選手というか、特にバスケットボールに関わる日本の全ての指導者がマインドをアップデートさせる良い機会になって欲しいなと思います。
数学的な効率を意識した3P重視のオフェンススタイルとスペーシングという概念はある意味セットです。いい加減、前時代的なビッグマンのポストプレーに偏重するバスケットから卒業しませんか?
ぶっちゃけリバウンドが全然取れなかったのも、スペーシングへの意識が低いからだと思います。普段からものすごく広いエリアを守っているNBAの選手達は、リバウンドで飛び込んでくる相手をどう抑えるかに慣れています。3Pをたくさん打つ攻撃主体のバスケ=守備の軽視ではありません。
何よりアメリカ代表の監督ポポビッチは3Pが嫌いでミドルレンジシュートを重視することで有名な指導者ですが、彼が1試合に40本も3Pを打たせていることが時代の変化をこれ以上なく表していると思います。
日本人のように上背がない人種にこそ、スモールバスケットは有効だし、Bリーグがトランジションのめまぐるしいゲーム展開で、1試合120点くらい入るようになったら、もっともっと楽しくなる。そしたら人気も上がってWINーWINだと思います。
僕が高校生の時、バスケ部ではほとんどシュートの練習はありませんでした。ハイポストで体を張った選手がボールを受け取り、ローポストのビッグマンにボールを通すか、そこから一人で仕掛けるかとか、そんな練習ばっかりでした。今のNBAを見てください。ハイポストでボールを受けるなんて、まずあり得ない。
バスケットはメジャースポーツの中でも特にリベラルで、そして理系的なスポーツです。日本の部活が持つ、非効率的で理不尽で保守的で精神論的な考え方と最も対極にあるスポーツです。僕はバスケ部は嫌いでしたがバスケットボールというスポーツは今も大好きです。昨日の敗戦が、これからバスケットに触れる日本子ども達に少しでもプラスになることを願っています。
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