空想日記〜電柱田中〜
「ヴァンパイア先輩こんちゃーす。」
電柱に向かって挨拶をする田中。
もう彼は期限切れなのかもしれない。
少子化が騒がれている中、人間の浪費は止まらない。使い捨てにされたボロ雑巾が彷徨っている、そんなクールジャパン。
田中は入社当時真面目で明るく素直なやつだった。人にとって使いやすいやつだった。自分が使い捨てられる前に誰かを使い捨てて渡り切るしかないなんて本当に頭がおかしい。
田中は毎日俺に朝一番笑顔で挨拶をしてくれていた。
「南先輩おはようございます!」
なぜか俺にだけ先輩をつけて懐いていたように思った。今目の前で電柱に向かった叫んでいる男は田中なんだろうか。
自分が不甲斐ないから後輩が追い詰められたのか。そう言われたら俺も終わりだ。俺だって壊れないように壊れないように自分のことで精一杯だ。みんなみーんな精神科行き。パソコン壊れました!よりよく聞く休職願い。
田中、俺はお前に何もしてやれないのだろうか。
「田中、今から飯でも行こう。カフェとかチェーンならやってるだろ。」
「まわあわまあまま。ヴァンパイア先輩はミルク!!!!!」
「大丈夫、俺は会社に電話入れて遅刻するから。田中はご飯食べて家で寝ろ。ずっとまともに寝れてないだろ。」
朝7時、鼻にツンとくる冷気の中我々はどこまで正気でいられるだろうか。