空想日記〜猫の就活〜

うちの猫が就職するらしい。

「みーちゃん就職するの?」

「うん。家から通えるとこだから安心して!」

私はみーちゃんが働きに出ることが心配だった。世の中人手不足を叫ぶが人は選り好みする。間違った、猫手不足。みーちゃんはかけがえのない子で豊かな才能と優しい心を持っている。誰かに優劣をつけられると思うと私が思い詰めてしまいそうだ。

しかしみーちゃんは外の世界に挑戦したいというから応援するしかない。面接から帰ってきたらちゅーるをあげよう。

10社落ちた頃からみーちゃんは口数が減った。あんなに明るかったのに。理由は病気で尻尾が短いからだそうだ。そこを全ての会社で指摘され疑わなかった自分の一部を欠点と認識してしまったようである。確かにみーちゃんの尻尾は訳あって短いが猫としての能力が劣ることは一切ない。
でもわかる。わかるよみーちゃん。私も人間界で就職活動したことがあるんだけどね、同じ能力の人がいたらわかりやすい欠点を持つ方が弾かれてしまうんだ。

「みーちゃん今大丈夫?」

「ん?なに?」

「みーちゃんが最近遊んでくれないから寂しいな。」

「しょうがないな〜少しだけだぞ!」

次の日も面接に向かったみーちゃん。グループの子にその年で社会経験のない猫ってありえないと言われたらしくだいぶしょげていた。

いつしかみーちゃんはお家から出なくなった。もう家から通える範囲に受けられる会社がないって。

みーちゃんはひとりでこっそり泣いていた。

短い尻尾がタンスから少し見える。

私には何もしてやれない。みーちゃんの決意で就職に挑戦したが、現実は厳しかった。みーちゃんが応募した会社また求人出してるなんてのもある。なんであの子は誰にも選ばれなかったのだろうか。私はみーちゃんを選び続けるけどそういうことじゃないんだよな。

私も無力で泣いてしまった。

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