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「オーダー車だから良く走る自転車とは限らないんだよ。」というお話(7)

今回は、再びラグフレームに戻り、まだお話ししていなかったラグフレームにおける「応力集中」について記したいと思います。また、廣瀬さんの塗装に対する考え方などについてもご紹介します。

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カットモデルは物語る 5 「ラグフレームと応力集中」

廣瀬さん、あの風貌でしたから「常に超然とされ、何事にも動ぜず、ご自身に対する評判など全く意に介さない方だったのだろう」。そう思われがちですが、実はさにあらず。ご自身に関する噂や評判など、内心、けっこう気にされていました。
そして人の噂話というのは、案外遠くまで聞こえてしまうものなのですよね。それが陰口のようなものであればあるほど…。
古い話で、もうとっくに時効でしょうから二つだけご紹介させて頂きます。

廣瀬さんの耳に届いていた陰口の一つ目。
「ヒロセのラグは分厚くて嫌だなぁ」「ラグは薄く仕上げてこそカッコイイのにね。」

二つ目の陰口。
「ヒロセのラグはロウがラグからはみ出ていてカッコワルイ。」「ラグは角が強調されてこそ美しいのに、なんか、こう、境目がだらしがないんだよね。ロウ付けが下手なのかな?」「きっとヤスリで整形して角を出す手間を惜しんでいるんだよ。」

陰口の発生源は、他所のお店のお客さんや、クラブの方々。中でも玄人、ベテランを自認されているような方々だったとか。そして、そういう方々に影響された学生さんなんかが、通ぶってあちらこちらで広めた陰口だったそうです。

一部の識者や、メディアや、声の大きい人が、それっぽいことを流布し、それが一定範囲伝播することで、正しく無かったり、不確実な認識が、通説としてまかり通ってしまう。どの「業界」でもよくあるお話です。エコーチェンバー現象というのは何もSNSの中に限った話では無いのですよね。

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YouTube動画も含めた私のヒロセへの取材とアウトプットに対し、ご評価を頂ければとても有り難いです。どうぞ、よろしくお願い致します。(廣瀬秀敬自転車資料館 制作者)