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『天空の城ラピュタ』のアニメ俳句鑑賞
こんにちは!
アニメ俳句部部長の広瀬康です。
先日、アニメ俳句部で『天空の城ラピュタ』の俳句を募集したところ、97句の俳句が集まりました。ありがとうございます!
みなさまが詠んでくださった句の中から広瀬が個人的にいいなと思った句をピックアップし、鑑賞文を書きました。
句のあとに作者名を敬称略で記させていただきます。
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風青し宝のためじゃない力 天宮ほたて
ラピュタの財宝を得るためではなく、シータを助けるために行動するパズーにみなぎる力のことだと思いました。季語「風青し」は初夏の青葉を吹き抜けてくる風の色であり、パズーの健康的な若さも象徴しているようです。
玉葱を剥くぎゅうぎゅうの台所 雨野理多
海賊船内の台所での料理シーンを詠んだ一句。シータに好かれようとドーラの息子たちが手伝いに来てましたね。この句は「ぎゅうぎゅう」というオノマトペが良く、息子たちが手伝いに着たせいで狭苦しくなった台所の感じがよく表現されていると思います。
天空の町の水なら澄みにけり イサク
ラピュタを流れる水を詠んだ一句。空気の澄んだ天空にある町の水ならば、澄んでいると感じ取る感性が光っています。「天空の町の水なら」という仮定に彼方のラピュタを思う感じが出ていて良いと思いました。
雲の峰地下の結晶ざわめけり 一久恵
石たちが妙に騒いでいるというポムじいさんの発言を、詩的に結晶がざわめくという表現にする技術。雲の峰と地下で高低差が表現できており、大きな世界を描けていていいですね。
肉喰らう海賊主婆や星月夜 うさぎとさくら
「肉食らう海賊主婆」はドーラのことですね。ハムを食いちぎるドーラのシーンが思い浮かびました。腹を満たした後は、星月夜を飛んで海賊行為に繰り出すのかもしれません。
夏終わりラピュタ探した積乱雲 うし
アニメの中だけでなく、現実の世界にもラピュタがあるかもしれない。そんな夢想を誰もが一度はしたことがあるでしょう。強い上昇気流によって鉛直方向に発達したあの巨大な積乱雲の中にラピュタを探した、そんな夏の終わりをしみじみと感じます。
夏草や飛行石色した手紙 里山子
飛行石そのものではなく、あの青く澄んだ色に着目した一句。飛行石のような綺麗な青色のインクで書かれた手紙を思いました。飛行石の青と夏草の緑の対比が効いています。
龍の巣最後の砦突破せよ 佐藤元信
「龍の巣」をラピュタを守る「最期の砦」と捉えた一句。並簡単にはラピュタにたどり着けない、けれどあともう少したどり着ける感じが「突破せよ」という必死の命令によく現れていると思います。
ぼくたちの滅びのことば夏の海 錆
終盤、パズーとシータが唱える滅びのことば「バルス」を夏の海と取り合わせた一句。「ぼくたち」はパズーとシータだけでなく、視聴者である我々も含んでいると解釈しました。崩壊した城やムスカが落ちて行った夏の海の輝きが読後感として残ります。
いかづちが龍を象るまで進め ツナ好
ラピュタを孕んでいる竜の巣の中を詠んだ一句。アニメの中でも「いかづち」は龍の形に描かれていましたが、それを「龍を象る」と詩的に表現したのがすごいです。最後の「進め」の命令形で季語「いかづち」と作中主体との距離がぐっと近づいていく感じもあり良いです。
峰雲の奥には城がある事実 土佐藩俳句百姓豊哲
雲の中にあるラピュタ。にわかには信じられないその存在を「事実」と言い切った点に惹かれました。「峰雲の奥」という空間把握や下五の「事実」の体言止めが巧みです。
夏きざす久石譲のオーケストラ 鳥田政宗
ラピュタは音楽もいいですよね。ジブリの音楽と言えば久石譲。彼の指揮するオーケストラの物語のような音色に夏がきざします。人名が悪目立ちすることなく自然に句の中に収まっているのが良いですね。
滅びは再生へ風光る朝よ 猫髭かほり
遠い昔に滅びたラピュタ文明。でもいつか滅びは再生へと転じる。その悠久の循環のきっかけとなるような「風光る朝」なのかなと思いました。最後の「よ」の軽い詠嘆が効いていると思います。
名優のこゑは永遠ハルジオン ノセミコ
ムスカの声を演じられた寺田農のことを詠んだ一句かなと思いました。その人が亡くなっても、映画を再生すると、その人の声が聞こえる。永遠に残る名作ならば、その声も永遠である。「追想の愛」という花言葉を持つハルジオンもこの句に合っていますね。
施しの金捨てられぬ貧しさや 笛地静恵
ムスカに金貨3枚でこの件から手を引くよう言われ、従ってしまったパズー。プライドにかけて本当は受け取りたくなかった金貨ですが、それを捨てることもできない貧しさを「や」で詠嘆していて気持ちが伝わります。
荒城に健やかなる死鶲飛ぶ 三浦海栗
無人の天空の城には、墓と墓守のロボットと鶲の巣がありました。「健やかなる死」からカットが切り替わり、下五で「鶲飛ぶ」と生命の輝きを見せている点が上手いです。
悪用はしてはならぬぞ飛行石 もりや
大きい飛行石であれば、島を浮かせるほどの力を持っています。神秘的なこの石を悪用してはならないと言った、訓戒のような一句。口語の上五中七がいいですね。
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謝辞
みなさま、素敵なアニメ俳句をありがとうございました。
今回の『天空の城ラピュタ』の俳句97句は一覧画像にしてアニメ俳句部のアカウントからツイートする予定です。でき次第、後日、ツイートします。
今後もアニメ俳句部はアニメと俳句をかけあわせたイベントを開いていきます。
リクエストご要望等ございましたら、いつでも気軽にリプライやDMをお送りください。
ではまた。