#74 手ぶら生活への道
手ぶらで歩きたい。僕が生き方において望むことはただそれだけだ。荷物をゴロゴロ転がしたり手に持ったり、背中に背負ったりせずに、手ぶらで腕を振って歩きたい。他には何もいらない、ただそれだけでいいのだ。
僕はこの望みを叶えるために、今でも日々格闘している。最近、ポケットのないパンツを手に入れた。柔らかくてワイドな涼しいパンツで履きごごちは気に入っているのだが、いかんせんポケットがない。僕のような ”手ぶら派” にとって、着用している衣服にポケットがないのは死活問題だ。どれだけミニマルな生き方を意識しても、現代に生きるには携帯が必要だ。外出するにはその他に家の鍵や財布を持って出なくてはならない。鞄を持ちたくない僕たちはそれらをどうするかというと、衣服のポケットに入れるのだ。衣服にポケットがあって初めて成り立つのが ”手ぶら派” のスタイルなのだ。僕はパンツを履いて財布と携帯を持ち、途方に暮れた。しばらく考えたが、財布と携帯の居場所を見つけることはできなかった。しかし今からポケットのあるパンツに履き替えるのもなんだし、そもそも履き心地は気に入っているこのニューパンツをどうにかクビにしたくなかった。というわけで、僕は今までも何度もトライした方法をもう一度実践した。
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