帰国子女長男の高校受験振り返り〜やる気スイッチの入れ方〜
2013年にフィリピンに移住して、小学校入学から6年間をインターナショナルスクールで学び、卒業後帰国した長男は、中1の2学期に都内公立中学へ転入。2年半の歳月を経て、この度都立一般入試で全日制の志望校に合格した。
ほんの2年半前、転入してしばらくは小学校で習う漢字もろくに読めず、得意だった数学も問題が理解できなくて不甲斐ない思いを味わい、武器になるはずだった英語も文化の違い⁈(アルファベットの書き方)で減点され、、日本語に苦労しながらも、目の前のことに真剣に取り組むようになって、ついに一般受験で勝負できるまでになったのは我が子ながらよく頑張ったなぁと。長男を中1の転入当時から知る現担任の先生にも嬉しい驚きの言葉をかけられている様子。
じゃあどうやってここまできたのか、ずっと記録に残しておきたいと思っては先延ばしにしてきた重い腰を上げて、私と長男のこの道のりを私の視点から記しておきたいと思う。
実は子どもたちには、学校で習う勉強の得点力を求めたりする感覚はない。
海外のインターナショナルスクールに入れといてあまり説得力ないかもしれないが、英才教育や高学歴も興味はない。習い事も通塾もさせたことはない。子どもたちが6年通ったインターナショナルスクールは宿題を出さない主義で、それもとても気に入っていた。
子どもたちには、とにかく身体も心も健やかに丈夫に育って欲しいと、食にはこだわって、経験と感覚を養うことに重きを置いてきた。
勉強もただその練習であり道具の一つに過ぎず、本人がその環境でどうありたいか、どうなりたいか、どうしたいかについては割としつこく確認してきたという自覚はある。
そう、私が子育てでしたいことは、愉しみながら、枠を超えながら、生き抜く力を育てること。海外に住むという選択をしたのも、敢えて枠を出て外からの視点を持てるようにという意図が強かったかな。
決して正しさやルールを教え込み、従順にすることではない。安定とか安泰などおもしろくもないと、私の感覚はなんのモチベーションも寄越してこない。いや、子どもたちが寧ろそれを求めているのなら非常に申し訳ない。。この辺り、私は恵まれているんだろうな…という感謝の想いは常にうっすらとはある。
子どもたちには世界一周とか海外移住とか連れ回しはしたけれど、それは私がその時しかできない且つやりたいことをエイやと一念発起してやったのがそのタイミングだったというだけで、私がレールを用意して、行く道を先導し、転んだら引っ張り上げてベクトル修正するのでなく、道なき未知も工夫して進む智慧と勇気を背中で見せ伝え、問題や困難に対処したり乗り越えたりする練習を惜しみなく共にすることである。(実際できているかはおいといて…!)
軽く受け流せばいい事柄には極力時間を割かない一方で、大切なポイントはしっかり向き合って掘り下げては潜在的な勘違い思い違いをクリアにする。その上で、じゃあどうしたいかを顕在化するということには割と丁寧に取り組んできた。
具体的には、長男が苦手とする作文の課題のお手伝い要請を逆に利用して、日ごろの言動の観察から予測されることをヒントにインタビューしながら、彼の本意や潜在的な想いを掘り起こす作業を一緒に行い、言語化文章化するということを丁寧にやった。上手い文章書くことではなく、掘り下げてアウトプットするお手伝い。
その一環で彼の苦手な作文も書き方の学びになったら…という魂胆もあったけれど、残念ながら今のところ、作文の上達には至っていない…笑。しかしながら、この丁寧な想念の掘り起こし作業で「こうしたい」を長男本人がありありと見ることになった。それがあってこそ、彼も目の前のことに本気で取り組む気持ちにスイッチが入ったのではないかと見ている。
まずはこのスイッチこそが肝だと思っている。
ただ、スイッチが勉強にあるのか、スポーツにあるのか、或いは芸術にあるのかもしれないし、既存のカテゴライズには当てはまらない全く想定外の何かにあるのかもしれなくて、私はそのスイッチを探ることに力を注いだ。ステレオタイプで耳障りのいい綺麗事や流行りの「こうありたい」は、単にすり込みで、当人にとっては偽りである可能性もあって、それではスイッチは入らないし、入れてるつもりで頑張っても、逆にストレスばかりためて、挙げ句の果てに病んでしまうとか全然あるからだ。(私がしかとその轍踏んできた。苦笑。。)ここはマジ固定観念取っ払って丁寧にやるのがおすすめだ。
ここで一つ、その手伝った彼の作文の一部を転記する。
【僕はなぜ勉強するのか】
僕は受験生だ。さて夏休み、塾に通うという選択はしなかったが、家で1日9時間くらい机に向かっている。勉強は別に嫌いではないが、決して好きではない。ではなぜ僕は勉強しているのか。
僕は夏休みに入ったらゲームは一切やらないと決めていた。そして実際やめた。ゲーミングパソコンはカバーをかけて視界に入らないようにしている。ゲームを絶つことは思ったほど難しくはなかった。
ゲーム、これまで休みの日などは5,6時間を費やしていた。ゲームを突き詰めることで開けていく人生もあるだろう。しかし、今はゲームではなく受験勉強に力を尽くそうと思った。それには中途半端にゲーム時間を削るのではなく、ゼロにする方がいいと思った。
高校受験にあたって、偏差値や知名度のより高い学校に惹かれたが、学問を究めたいわけではない。ではなぜそのような学校に惹かれるか考えた。
偏差値の高い学校に行けば、当然授業のレベルが高く、開けていく未来の選択肢や可能性のレベルや質も高くなるのではないかと思う。例えば高校の先、大学に進むにしてもそうでなくとも、より質の高い自分で挑めるようにしておきたい。
夏休みにいくつかの高校に行って、雰囲気を味わってきた。偏差値の高い高校や、今の学力で行けそうな高校、どちらも見たけれど、
-中略-
学校の魅力は偏差値だけじゃないということも感じた。
なぜ自分は勉強をするのか。未来のためだ。
昔からずっとお金持ちになりたいと思っていた。フィリピンという貧富の格差のある国で育ったからかもしれない。同級生はフィリピンの中では比較的裕福な家庭で、フィリピン中流家庭の生活とは、物質面でも格差はあるが、それ以上に、お金に翻弄されない精神的なゆとりに違いを感じた。
そう、お金持ちといっても、大きい家、高い車、高級品に囲まれたいわけではない。お金に翻弄されず、心地よい環境で、心豊かに暮らしたいという意味だ。
未来の自分がそこに近づくためにも、今自分にできるのは、目も前にある勉強に集中して、少しずつ諦めずに挑んでいくことではないかと思う。
別に好きでもない勉強、定期考査前のようにやっているが、思うように進まなくて苛立つことも多い。でもこの挑戦は自分のためだから諦めない。
(2021年8月)
いえそれでもね、まだ15歳、コレ‼︎と思った「こうありたい」も3年後にはちょっと違ってたなんてことは全然あり得ることで、そうなったらわかった時点で軌道修正すればいいし、それも必要ならば手伝うのが私の役割とも思う。
目的地がズレたって、本気で真剣に取り組んだ経験は無駄にはならなければ、糧にしかならない。
一方で夫は要らないちょっかい出しながらも常に見守る人。
「常に逃げ道を用意してあげてください」と、9年前フィリピンに移住し、インターナショナルスクールに通い始めて、あまりに異なる環境に戸惑い混乱する子どもたちの姿を見てそう私に言った。
せっかくここまで来たんだからと、その環境を強いることなく、日本人学校に編入なり、再び帰国するなり、とにかく別の選択肢も選べるように…という意味での逃げ道。
寧ろ「せっかくだから頑張らなくちゃ…」思考の私は、夫のこの時の言葉に考えを改めることになった。
そして、この度の長男の挑戦も、本人の望む挑戦をしたらいいし、それで全てコケてもどーにでもなると思ってサポートしていたし、夫ともそう話していた。
塾は行かないと長男自ら決めたので、初めは家庭教師並みにサポートしていた自宅学習も、コツを掴み始めたらどんどん自分で調べて(主にYouTubeで)理解を深めては反復練習して得点力をつけてきた。起きてる時間のほとんどを勉強に費やしている姿を見て感心しながらも「何をそこまで…」と不思議に思うくらいだった。
結局、最初に想定していた都立高もレベルを2つくらい上げての挑戦になった。
しかし、出鼻を挫くわけではないけれど、自分の経験を振り返ってみても、またこれからが実力の深め時かなと思うし、正念場、さらに本気度が試されるかなとも思う。
それでも究極は、なにはともあれ人生トライ&エラー、あらゆる苦楽を体験しに生まれてきていると私自身は考えているので、感謝は忘れずに好きに生きたらいいと思っている。
ドキドキも挫折も無力感も達成感も存在意義も全部存分に味わったら大成功。行き詰まったと感じる時も、だいたいは井の中の蛙状態であることが多い。ただ、そんな時1人だとその狭い世界観に気付くのはかなり難易度高いので、困った時の駆け込み寺的存在になれればそれでいいかなー私は。
本当は本人に改めて今どんなことを思うのかアウトプットしてもらいたいところだけど、完全に絶っていたゲームを思い切りやりたい&やっているので、今はちょっと待とうと思う。
一つだけ、確か都立入試前に「フィリピンに6年住んだことはどうだったのかなー?」と尋ねたことがあって。
フィリピンに行った時も帰国した時も、学校の勉強で一番苦労したのは学年的にも長男だったから、どう思っているのか聞いてみたのだ。
そのこたえは割と即答で「良かったと思うー」と。
それ聞いて思った。親の無茶振りも良き経験にしてしまったあんたがすごいよ…と。まだまだ未熟で、どこか「俺スゴイ」がある子だし伝えてないけど、母は嬉しかったよー
中学卒業おめでとう!