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【今日のコラム:学生時代の変な奴⑤】

【今日のコラム:学生時代の変な奴⑤】

 

このシリーズも早5段目。思い出し思い出しに書いていこうと思う。

同窓会などすれば、ネタはとことん出てくると思うが、ここはあくまで私の印象度の高い奴を追っていきたい。

今回は大学の後輩Tくんについて書こうと思う。

 

■Tくん

Tくんは(も)、大学の軽音楽サークルの後輩で、確か私の2つ下だ。

年下であったが迫力があった。自身の正義意識も強く、なかなか馬鹿に出来ない存在であった。背丈は割と高めで、何というか、顔を後頭部上あたりから、皮ごと引っ張ったような、釣り目で、きりっとした不細工であった。

 

軽音楽サークルの部員には2パターンあって、1つは音楽(バンド)経験者、もう1つは楽器すら触ったことがない未経験者で構成されている。Tくんは後者の人であったが、何せ負けず嫌いであったため、同級の素人で集まったバンドでも、彼は早くベテランになり、先輩と肩を並べようと必死であり、素人メンバーのやる気のなさにしびれを切らしていた。

そのTくん率いる素人バンドも幼稚といえば幼稚で、うまくできない奴を罵ると、「じゃあ、お前やってみろ」と、あくまで楽器パートが違うので、理にかなっていない反発をくりかえしていた。

そんな中、われわれ高校からやっていた、いわゆる「ベテラン」陣は、当時、ウッドストックで度肝を抜かしたレッド・ホット・チリ・ペッパーズに憧れ、コピーバンドを組むことにした。もちろん演奏は大変難しいが、レッチリになりきる気持ちの方が強くメキメキ、上手くなっていった。ちなみに私はフリー役、そうベースを担当していた。

しかしながら、一番の悩みの種は、相応な歌い手(ボーカル)がいないことだ。レッチリのボーカルといえばアンソニーで、テクニックはもちろんカリスマ性が非常に高かった。歌が上手い奴は軽音の中にも居たのは居たが、核となるカリスマに欠けていたのだ。

 そこで目につけたのが上記Tくんである。

Tくんは頑張ってギターボーカルでビートルズをコピーしていたが、彼の迫力では、ビートルズにおさまるタイプではない。決して歌は上手くないが、そのカリスマ性の高さから、彼をスカウトした。またレッチリのアンソニーはラップ調の歌が多いので、多少音を外しても迫力で押し倒せることができた。

Tくんに、まずウッドストック(レッチリメンバーが人間等身大の電球を頭につけてオープニングで演ずるやつだ)のビデオを見せ、そのすごさの解説と、彼の役は君しかいない、と若干持って彼につたえたところ、超本気になり、俺、今日からアンソニーになるといいだして、半年後には当時のアンソニーと同じくらい紙を伸ばしていた。Tくんのボーカルは決して褒められたものではなかったが、努力家の彼は、アンソニーのパフォーマンスを全て自分のものにしており、もう、Tくんは東洋版アンソニーにしか見えなかった。それはすごいことである。

 そんな中、我らのFラン大学にも目玉があり、学際の際、キャンパス中心に割としっかりした特設ステージがあり、そこで予選に勝ち抜いたバンド3組程度が演奏できる、という我々にとってはメインのイベントであった。当然、われわれレッチリのコピーバンド(レッドホットチリファンターズという、以下RHCF))も予選にエントリーした。

 審査は、サークル連合という組織の幹部5名程度が行う。

われわれRHCFは予選で最高のパフォーマンスが出来たことを自負していた。予想通り、というか予想を超え、われわれRHCFは予選1位通過となり、本番では大トリの役を勝ち取ったのだ!

サークル連合の理事中は我がサークルの部長であり、興奮して連絡してきた。すごいよ!RHCFは2位と大差をつけて1位になってたよ!

 もちろん私たちは喜んだ。部長はぜひ、内密だけど、得票を見せたいということで、個人的に見せてもらった。評は凄くよく「パフォーマンスが最高」「ボーカルが迫力ある」など、票に嬉しい言葉が書いてあった。最後の票をめくると「ボーカルの背中が汚い」と書いてあった。レッチリ同様、上半身裸でプレーをしたので、Tくんの背中の汚さが目立ったようだ。サークル連合の理事長である部長に訊いてみた。この票はプラス評価なのか、マイナス評価なのかを。とうぜん、それはプラス評価だったらしい。

 

全身でぶつけた予選。背中の汚さも青春の表れとして評価されたのかな?

ともあれ、1位通過には変わりはない。

 

Tくんには頭は上がらないし、もう40歳を超えた今、事業を立ち上げ、大成功しているとのこと。カリスマはやはりカリスマなのだ。

 

つづく


 


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