元軍人元自衛官から、看護師になった変わり者たち

わたしが以前書いた記事で「元自衛官たちはどこに再就職するのか?」というものがあった。自衛隊にかぎらず、世界の元軍人たちは軍を除隊したあと何をするのか? というのは前々から関心を持っていた。
 というのも、軍隊に終身雇用なんて発想はふつうはなくて、数年兵役を務めたら辞めるのが世界では主流ではないか。長く務めたとしても、体力的に限界を迎える40歳前後までにはほとんどが辞めていくのではないだろうか。入隊してその中の一部の隊員が、上級士官、上級下士官として、長く軍にとどまる感じだろう。
 なかには、米軍みたいに勤続20年以上で軍人年金が貰える、という国もあるらしい。日本の自衛隊は、入隊してはじめは任期制自衛官といって、海外の軍隊における兵役みたいに契約期間が決まっている場合があるが、一定の階級になると定年までいることができる。それでも、50代になっても自衛官を続けてるような国は世界では例外だろう。

わたしの場合は、やめて他の公務員を目指したりフランスいって外人部隊の試験をうけたりしたのだが入隊はせず、結局日本で看護学校に入り直すことになった。べつに看護師になりたかったわけではなく、ちょうど3.11の大震災で災害派遣医療チームが活躍したりしていたのを見た影響もあっただろう。やる気がある人には申し訳ないけど、本当に成り行きでそうなっただけだった。
 厳しい実習を乗り越え学校は卒業したけれども、結局看護師の仕事は長続きせず、いまは他のケア職種として老人介護の仕事をしている。看護と介護、この二つではたしかに職種が異なるし仕事も役割が違うが、基本となる考え方において大きな差はないと考えている。
 医療の現場で働いていたときに気になっていたことには、いまの医療というのは慢性的な疾患に対してやたら薬を多用して、薬漬けの医療を行ってるわりには大して成果が見えない…どうもわたしにはそのように感じられて、ずっと違和感をおぼえていた。
 そういった治療をつづけて、さぞかし製薬会社は金儲けができることだろう。その一方で、患者さんは病気が治ってるの?? 結局そういうはなしである。ワクチン問題にも通じるものがあるけど、そもそもがうさん臭いものを感じている。
 医療業界では、こうした至極まっとうな疑問を口にすると、たいていひんしゅくを買います。袋だたきにされるかもしれません。だからわたしは、看護師として働くことをやめました。

ところでネットを見ていると、元自衛官とか元軍人から看護師になった人が意外にいることがわかった。ここで、その界隈ではけっこう有名?な二人の人物を紹介したいと思う。
 一人目は、フランス外人部隊の精鋭、第二空挺連隊で衛生兵だった野田力さんである。在隊中には、アフガニスタン派遣も経験されている。
 野田さんは兵役を終えて除隊後に、日本に帰国してから看護学校に入り直し看護師になった。わたしも野田さんとちょうど同じ時期に看護学校に通っており、一度だけメールでやり取りしたことがあったのを憶えている。

野田力さんの著書

もう一人は、旧ツイッターにおいてakikinnというハンドルネームをもつ人物で、航空自衛隊に10年以上も勤務し、精鋭の救難員だった方である。
 この人は航空自衛官でありながら、陸自の空挺レンジャー課程を修了するなど、普通の自衛官がそうそう参加できない極めて過酷な訓練を経験している。そして除隊後に第二の人生として?選んだのが看護大学への入学だったようで、今ではきっちり看護師免許を取得したようである。

アキキンさんの旧ツイッターアカウント

この二人の経歴に較べれば自分なんて目くそ鼻くそに思えてくるが、とにかく似たような経歴と思ってどこか親近感を感じるのである。
 
そもそも近代看護学というものがどうやって発展してきたかを踏まえれば、元軍人が看護師になるのはちっともおかしくはないのかもしれない。
 たとえば、フロレンス・ナイチンゲールはどこで活躍したのか。有名な著作「看護覚え書」は、戦地における英国陸軍野戦病院での逸話であった。この本は訳がこなれていないせいか、まったく読みにくい本ではあったが。
 現代の医学(西洋医学)は“戦場の医学”であると聞いたことがある。そして看護学も例外ではないようにみえる。どちらも、戦争とともに進歩を遂げてきた領域なのだろう。たとえば、わたしは国立病院機構の学校で教育をうけたけれども、国立病院機構の起源は戦前の陸軍病院と海軍病院にさかのぼることができる。そういえば、看護学生の2年目のはじめには“戴帽式”という行事があって、“ナイチンゲール誓詞”を暗唱させられたことを懐かしく想い出す。

ただ、私自身は性格的に“戦う”タイプの人間ではなく、現代の医療における「病気と戦う」という発想にもいまいち共感していない。しかも、かつて治療の対象は戦場で傷を負った若い兵士たちが中心だったろうが、現代においては高齢の慢性疾患を抱えた患者たちである。治療の対象もずいぶん変化しているのに、そういった人たちに“戦場の医学”の発想のままでいいのかな? と疑問を感じてはいます。 
 現代医学は超急性期の治療においては効果が期待できるものの、現代に蔓延する慢性疾患のほとんどすべてには無力でしょう。事実、古くはアンドルー・ワイルという名の医学博士がそういったことを書いていました。そのあたりの現実への理解が求められるし、医療のあり方にも大幅な見直しは必要でしょう。
 政府の財源が限られている以上、一部の業界(製薬など)を儲けさせるために、無意味でなおかつ患者に害を及ぼすかもしれない医療は避けるべきでしょう。本題から外れたけれども、そう感じています。