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北朝鮮特殊部隊がロシアに派遣された件。

最近ニュースで話題になってることに、北朝鮮の精鋭部隊とされる第11軍団、通称“暴風軍団”の兵士たちがロシアに移動しており、今後はウクライナとの戦闘に投入されるらしい、というものがある。このことはアメリカや韓国の情報機関なども把握しており、どうやら確実視されてるようである。

12月までに数個の旅団、総勢12000人規模を派遣し、すでに3000人が極東から西部に移動を終えているとされる。
 これに対して、受入国であるロシアの兵士たちの評判は芳しくない。隊列を組んで歩く北朝鮮兵たちを見て、「クソ中国人ども」と揶揄しているようだ。
 また、派遣したとして、実際にどのように運用するのかも不明だ。ふつうなら、支援軍として北朝鮮の軍服を着用して、北朝鮮人による指揮監督と統制のもとで運用するのが通常だろう。しかし、実際にはこの兵士たちはロシアの戦闘服と装備品を支給されており、ロシア人による細かな指揮監督を受けるのではないか、という観測がある。
 一説によると、北朝鮮兵士30人につき3人もの上級将校をつけるとされる。30人の部隊といえば小隊であり、将校は一人か多くても二人のはずである。共産圏の軍隊にあるとされる“政治将校”というやつだろうか?

そういえばむかし、村上龍の小説に「半島を出よ 上下」(2005)というものがあった。あらすじは、北の特殊戦兵士たちが福岡に潜入し、福岡ドームを占拠して観客たちを人質にする。日本政府が手をこまねいているうちに、後続の部隊がロシア製の輸送機にのって続々と着陸してきて、たちまち街は制圧されてしまう。そして彼らは宣言する「自分たちは北朝鮮の反乱軍であり、独立を宣言する」と。そうすることで、北朝鮮政府は関与を否定できるわけだ。
 当時は、北朝鮮による日本人拉致事件が明るみになってまもない時期であり、朝鮮半島情勢が注目されていた。小説では、特殊戦兵士たちは暴力と貧窮によって鍛えられた冷酷非情な殺人マシーンのように描かれ、恐ろしい内容だった。

実際の北朝鮮特殊部隊とはどういうものなのだろうか?
 彼らは印象として、暗殺や格闘、悪路を踏破する能力、耐久力は高そうである。たとえば、自衛隊の幹部候補生には2夜3日かけて100キロ行進という行事がある。一方、北の特殊部隊員たちは“一日で100キロ”歩くのだという。
 下にバンキシャという番組のリンクを貼っておくが、第11軍団で上級兵士だったという脱北者の貴重な証言があり、興味深いものがある。

証言によれば、ニュースで取り上げられていた、ロシアで装備品を受け取る北朝鮮兵士たちの映像について「11軍団の兵士たちのように見える」ということ。
 その根拠は、歩きかたが特徴的だからであるという。「軍団の兵士たちは訓練で木やセメントを蹴り上げるため関節を悪くしやすく、特徴的な歩き方をする」のだという。ただし、「体格が小さく、入隊してまだ2〜3年の、最近新兵から脱したような兵士たちだろう」とも指摘している。
 軍団の訓練については、「35キロの荷物を担いで12キロの山道を登ったり、135キロ以上の丸太を二人で担いで山に登り、無事に戻ってこれた者たちだけが食事にありつけた」という話をしていた。
 給養面では「他の部隊よりも優遇されていた」と語り、「2日に一度は鶏一羽が支給される」のだと。また、「市場で、他の部隊の兵士たちが食事をしているときに11軍団の兵士たちが通りかかったら、優先的に席を譲られていた」と証言している。

北朝鮮軍のロシア派兵によって、ウクライナ戦線はどう変わるのか。また、韓国との交流を拒否し、頑なになる一方である北朝鮮が今後どう動くのか。今後の報道を注意深く見守っていきたいところである。