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米大統領選。トランプ再選で、世界はどうなるのか。

近頃のニュースを見ていて、どうやらアメリカの大統領選の帰趨はドナルド・トランプに有利と言えそうだ。
 先のCNN討論会ではバイデンの口舌が振るわなかったらしいことや、銃撃未遂によりトランプ人気がいっそう加熱していることなどが影響している。最近ジョー・バイデンが選挙戦から撤退の英断を下したようだが、後任のカマラ・ハリスはどこまでやれるのか、ほんとのところ未知数である。

トランプの主張は前政権のときには、保護貿易主義で国内産業を保護すること、諸外国との同盟関係の見直し、気候変動・地球温暖化の軽視、外国人や移民を排斥することなどだった。おそらく今回も同じ流れになるのだろう。
 こうした主張はなにもトランプにはじまったことではなく、今の世の中全体がそういう流れになっている面がある。たとえば、英国のEUからの離脱、ヨーロッパでは移民排斥の声が高まり極右政党が躍進しているという。日本でも外国人参政権や生活保護の問題などがあったと思う。
 2000年代当時は、世界はグローバル化するとしきりにいわれていて、これからはヒト・モノ・カネが国境を超えて自由に行き来するといわれていたが、今では正反対の流れになっている。いまではグローバル化の代わりに国民国家の台頭である。
 ここでふと思うのは、日本は食料自給率も資源の自給率もかなり低い、という現実だ。もし保護貿易主義をやられて自由に食料や資源も入手できなくなっていったら、自給率の低い日本はどうなってしまうのか…そんな恐ろしい現実が頭をよぎるのである。さらに、近年の異常気象・気候変動による不作、長引く戦争による流通の混乱が、事態の悪化に拍車をかけることになる。

こうした考え方や主張がいいのかわるいのか、わたしには分からない。
 フランスの思想家ジャック・アタリは、西暦2030年には世界はこうなっている、みたいな本を書いていた。そこには、富める者と持たざる者の貧富の差がいっそう拡大し、99%の市民の怒りが爆発する、みたいなことがたしか書かれていた。そうした混迷の世の中を少しでもよくするためには、利他主義が勧められていた
 しかし、トランプという人物をみていて、利他主義とはもっとも縁のない政治家にみえるのである。むしろ、これほど自己中心的な人物もいないだろう。

また、トランプを見ていてふと思うのは、フランスの偉大な大統領シャルル・ド・ゴール(1890-1970)との対比である。
 シャルル・ド・ゴールはあらゆる意味でトランプとは正反対の人物像である。この軍人上がりの政治家は、大衆に迎合することなく、生涯質素な生活にあまんじたという。その著書からいくつかの文章を紹介してみたい。

“世論は有能な人物よりも可愛げのある人物を好み、面倒な議論よりも安易な公約に魅かれるものである。それゆえに、政治家の方も議論を魅了せんと秘術をつくし、時代に迎合して都合よいことばかり語ることとなる。”

“拝金主義の時代はまさに終わった。時勢の振り子は均衡に向かいつつある。破産、スキャンダル、訴訟騒ぎはあるにしても、精神的価値が、再び人の尊敬を集めるようになってきている。兵役がかつて以上に偉大さを現す日も間近い。損得を度外視した献身を美しいと思う日が遠からずやってくるのは疑いのないところである。”

 シャルル・ド・ゴール「剣の刃」


いろんな意味でトランプとは対照的なシャルル・ド・ゴール

もっとも、ド・ゴールは軍人としての経歴が長いこともあり、少々お堅いところも感じさせるが、当時からポピュリズムに批判的だったところがわかる。
 ひるがえって、アメリカのトランプで不気味なことは、一部の信者には神がかり的に“信仰”されているようなところ、そのカルト的な人気である。この人たちに批判的思考力というものはなく、「トランプのいうことは無条件に正しい」と本気で信じているように見える。こういうところから、未来の独裁者が出てこないとも限らない。

アメリカの大統領選がどうなるのか、そして今後の世界がどうなっていくのか、わたしたちには情勢を見守ることしかできない。