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トランプの復権で、おもわず見返した映画:「ボーダーライン ソルジャーズ・デイ」
周知のように、今月からドナルド・トランプがよくもわるくもアメリカ大統領に返り咲く。
就任前から、能力よりも自分への忠誠心を重視した?極端な閣僚人事が話題となり、多国間協調などはなっから眼中にない発言の数々が物議を醸している。
そんなトランプが選挙前から公約として掲げるのが、不法移民の強制送還である。おそらくは数百万人規模の不法移民の送還のために、軍隊を動員することまで示唆している。
このことでふと思い出した映画に、「ボーダーライン」シリーズの二作目、「ボーダーライン ソルジャーズ・デイ」(2017)がある。この作品はアメリカ・メキシコ国境における麻薬戦争を描いた、わりとシリアスなテーマのアクション映画である。とくに二作目は、不法移民が作品の大きなテーマとなっている。
俳優のベニチオ・デル・トロとジョシュ・ブローリンがふたたびコンビを組み、これがなかなかいい味を出しているように思う。ただし、二作目では米国政府が手のひらを返して方針を転換したことで、物語は複雑な経緯をたどることになる。
また、派手なアクション一辺倒というわけでもなく、たとえば聾唖の農夫と手話を介してコミュニケーションを行うシーンがあったりと、なにげに繊細な描写があったりして、そのことが作品の価値を高めているように思える。
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かつて、メキシコの麻薬カルテルは、コカインなどの麻薬をアメリカに密輸することでお金を稼いでいたが、現在は不法移民を密輸することが大きな収入源になっているのだという。
もちろん、不法移民のほとんど大半はただ家族を養うために、わずかなチャンスと夢に賭けてアメリカに渡ろうとするわけだが、なかにはテロリストや犯罪者となって米国内で大きな事件を起こすことがある。そんな不法移民の密輸を斡旋するメキシコ麻薬カルテルに対抗し打撃を与えるために、非情とも思えるような秘密の軍事作戦が展開される。
バイデン政権の移民政策に問題があったとはいえ、トランプはどこまで本気で不法移民を追い出すつもりなのか。もっとも、トランプとその支持者の発言のふしぶしを聞くかぎり、この人たちは不法移民のみならず合法的な移民さえ快く思っていないことがわかる。
一方で、不法移民は米国経済にとって不可欠であるという主張や、不法移民がとりわけ犯罪率が高いわけではない、とする主張もきかれる。
以前Netflixのドキュメンタリー「移民国家は語る」では、米国で暮らす不法移民たちと、それを拘束しようとするICE(移民・税関執行局)、ボーダーパトロール(国境警備隊)などに密着して描かれていた。
作品はどちらかといえば、当時のトランプ政権の移民政策に批判的な感じはしたものの、それでも不法移民とそれを拘束する側の両者の立場から、できるだけ中立に描こうとしているように見えた。
米国にかぎらず、全世界で極右勢力が台頭するなかで、移民に対して寛容な社会でありたいと願う。一方で、移民受け入れによって社会秩序や治安が崩壊しないように、受け入れには慎重にすすめる必要があるとも思っている。これはなかなか、バランスを取るのが難しい政策であるように思う。