狂想曲としての「白日」と化した「奇跡の地球」
かつて桑田さんと桜井さんがツインボーカルで歌った「奇跡の地球」を最近よく思い出すようになった。
世間がコロナに振り回されているからだろう。震災の時も思ったけれど、やっぱり普段の日常はあたりまえじゃなくて、普段通りの生活を送れるって奇跡だし、星の寿命で考えればむしろ人間が快適に活動できる日常の方がレアなんだと改めて考えた。
そもそもコロナは敵!みたいにみんなで結束力を高めて戦いましょうという風潮に少しだけ違和感を覚えてしまう。もちろん私もコロナは怖いし、できれば早く収束してほしいと人間だから願ってしまうけれど、人間側の都合の良い善悪の解釈だけでコロナ問題を考えてしまっていいのかと思う。
ウイルスも微生物の中に含まれるらしい。つまり生き物ということになる。コロナも生き物だと考えれば、どういう過程で生まれたのかは知らないけれど、生まれたからには生きたいというか生きようとするのが生き物の本能だろうから、それを人間が抑えようとしても限度があるだろう。
実際、今まで人間は賢い脳を巧みに操って、様々な抗ウイルス薬の類を生み出して、人間に不都合なウイルス撲滅を図ってきたわけであるけれど、例えば最近も個人的に風邪をひいて細菌を殺す薬(抗生剤)を服用したりしたけれど、飲んだら飲んだで副作用によって体がかゆくなったり、おなかが痛くなったりして、あぁ体の中の細菌たちが必死に抵抗しているんだなと実感したりした。
どんなに優れた薬を開発しても、結局はそれより強いウイルスの出現は避けられないと昔好きだったオカルト系のテレビ番組で聞いたことがある。人間が敵とみなしてウイルスと戦おうとすればするほど、相手も強靭になってしまうんだから、本当は無駄な抵抗はやめて、仕方がないからウイルスたちと共存できたらいいのではないかとも考えてしまう。
地球という星側から見れば、小さな微生物たちよりもむしろ人間という生き物の方が敵だろうと思う。微生物たちは別にそこまで地球に悪影響を与えないだろう。現状を考えれば、人間活動によって地球は本来の姿を保てなくなっている。例えば温暖化による海面水位の上昇や、相次ぐ森林火災、砂漠化など。これは地球側から考えると、もしかしたら想定外の事態で、人間を良くは思っていない気がする。だからその人間たちにまるで仕返しでもするかのように、未知のウイルスによって人間が慌てふためいているように感じる。コロナじゃなくとも、永久凍土が溶ければ、今まで封じ込められていたかつてのウイルスたちがまた台頭することも十分にあり得るらしいし、人間なんて生き物の頂点に君臨しているように見えるだけで、まだまだ弱い生き物だなと痛感する。だって小さな小さな微生物に怯えて生きているんだから。
恐竜もそうだったけれど、強そうな生き物って案外もろいんだなと思ったりする。本当に強い生き物って実は一番小さな微生物の類なんだろうとコロナの件で考えるようになった。小さければ小さいほど、生存競争を考えた場合、長く生きられるのではないかと。医学の知識も科学の知識もない素人の発想だけれど。小さい生き物って生命力がすごいんだなと、人間なんて太刀打ちできない生き物かもしれないなと驚かされた。クマムシが最強と言われているように、ウイルスも含めて微生物って強い生き物だなと私は畏れるようになった。
たまたま運よく、人間が台頭できる時代はもはやそう長くは残されていないのかもしれない。産業革命が起きて、あたりまえのように便利な生活ができるようになったし、それがこれからも続くと信じてやまない人間だったけれど、数十年に一度の〇〇とか異常事態とか、想定外の出来事などがどんどん増えてしまっているから、もはや人間の力では制御できない事態に陥っているんじゃないのかなと思わざるを得ない。
地球側からすれば、そんなの人間にとって不利益なだけで、長い長い星の寿命から考えればこれもたまたまある時代に台頭した生物が引き起こしたちょっとした変動期に過ぎなくて、星として星が存続するためにちゃんと浄化しようとするんだろうなと思ったりする。
<変わりゆく街は明日なき無情の世界>
<黄昏が空間(そら)に映した異常な未来>
桑田さんの歌詞はまるで予言みたいだなと。たまたまHIVウイルスに苦しむ人々を救済する目的で作られたチャリティーソングだし。
音楽業界、エンタメ業界を含めてコロナによって大打撃を受けている人間にとって必要な経済活動は、他の生物や地球にとっては何の意味も持たないものなんだろうなと考えると悲しくもなる。私も含めて音楽やその他の芸術によって今まで人生を支えられて、家計も支えられて、それらに希望を託して、信じて、生きてきたのに、価値観がひっくり返ってしまって、虚しい。
たしかに芸術って娯楽として捉えられやすい。震災の時だって、歌やお笑いは自粛しましょうみたいな風潮が一時的にあったけれど、9年前、それらによって心救われた人たちは少なくないわけで。歌の力や娯楽の力をたしかに手応えとして感じたのに、今回ばかりはライブに関してはしばらくの間、どうにもなりそうにもない。アーティストは配信ライブや楽曲制作などできるし、リスナーも配信を見たり、楽曲を聞いたりはできるわけで、そういう立場なら我慢できるとして、ライブ、コンサートのみで食べてる人たちの苦労は計り知れない。でも先にも述べたようにそれは人間たちが困っているだけで、他の生き物や星にとっては関係のないことだからもどかしい。
他の生物や星は芸術なんて必要としないんだろう。そもそも人間なんて地球に存在しない方がいいと思っているかもしれない。地球側からすれば人間は邪魔な生き物かもしれない。微生物たちの方が地球にとっては利益を与えているのかもしれないから。
でも少しだけ勝手に良い方に想像力を働かせると、他の生物や星にも音楽のような芸術は良い影響を与えられるのではないかと考えてみた。童話やファンタジーを書いている人間の戯言だけれど、他の生き物や星だって、素敵な旋律を聞けば、良い環境、より良い命をつなぐことができるんじゃないかと思う。
心地良い音楽が流れる星は良い微生物が繁殖する気がするし素敵な星になる気がするし、心に響く旋律は人間以外の生き物にも届いている気がする。だって他の生き物たちにも心はあるだろうから。言葉は通じなくても、心が通じる瞬間があるように、きっと他の生き物たちにも心はあるのだから、心で感じられる音楽はきっと彼らの元にも届く。実際これは本当の話で、飼い猫がKing Gnu「白日」に興味を示してくれる。井口さんの美しいファルセットに反応している気がする。人間だけでなく、猫にも届く歌があるんだと感動した。
<時には誰かを 知らず知らずのうちに 傷つけてしまったり 失ったりして初めて 犯した罪を知る>「白日」
<生まれながらに罪を背負って>「奇跡の地球」
※無理矢理コロナの話に絡めると、<誰か>は地球という奇跡の星。奇跡の星を傷つけて、失いかけていて、人間は犯した罪を知り始めている。
人間が生み出した音楽は他の生き物にも良い影響を与えられる気がするから、地球を救おうとしている?コロナウイルスという微生物には申し訳ないけれど、ここで人間の文化が途絶えるわけにもいかないんだと共生の道を打診したい。
別に存在しててもいいから、これ以上強いウイルスにならないでくださいとお願いしたい。そのためにも人間も相手を敵と思わず、地球という奇跡の星で微生物も含めて、多くの生物たちと共存する生き方に生活をシフトさせたらいいと思う。
今日たまたま取り扱った教材「人間は他の星に住むことができるのか」という真面目な考察文の中にも<「奇跡の星」地球を大切にしていくことがなにより重要です。>という一節が登場した。火星にも住める可能性があるかというテーマの元、火星は火という漢字が使われているのとは裏腹に、表面温度の平均が氷点下43度、最低温度は氷点下140度にも達する星らしい。でも将来的に地表温度を上げる技術などが整備されれば、火星移住も夢ではないらしい。しかしやはり現時点で生命が育まれる条件が揃っている星は地球しかないから、地球は「奇跡の星」という話にまとまる。
「奇跡の星」を牛耳っている人間たちを地球が諭すように、時折、大地震や疫病が起きる。その度に人間は負けるものかと戦い続ける。戦うのは良いことだけれど、すべてを敵とは思わずに、人間に何かを教えてくれる<曖昧なサイン>だと思って生き方を変えることができたらいいのにと思ったりする。実際、私も変わることも変えることもできないのだけれど。何も変えられないし、偉そうなことを言える立場でもないけれど、ロックな童話作家になりたい夢を持っている人間として、こうして文章で発信することは何かを変えるきっかけになるかなと思い、取り留めもなく綴ってみた次第です。
<今の僕には 何ができるの? 何になれるの? 誰かのために生きるなら 正しいことばかり 言ってらんないよな>
<季節を越えて また出逢えたら 君の名前を 呼んでもいいかな その頃にはきっと 春風が吹くだろう>
コロナを乗り越えることができたら、またライブが普通に開催されるというかけがえのない日常に戻れたら、今回のことがきっかけで生まれるかもしれないそれぞれのアーティストの新曲を聞くこともできるかもしれない。
ウイルスはまるで目に見えない降り頻る雪のようでもあるけれど、真っ白な雪の下にも必ず春の息吹は眠っていて、時間はかかるかもしれないけれど、 #春は必ず来る はずだから、今は見えない雪に心を凍らせられて、全てを包み込まれるしかない。
無造作に置かれた庭の植木鉢を見ると、ヒヤシンスの芽が顔を覗かせていた。何となく人間活動が停滞していても、季節は確実に春に近づいている。こんな年に限って、桜が例年より早く開花する予測も出ている。震災の時と同じで人間以外は至っていつも通りの時間が流れている。季節は止まらないし、春も夏もやって来る。半年も過ぎれば人間の手によってコロナウイルスの治療薬も開発されて、またウイルスたちは増強を謀ることだろう。それの繰り返し。季節も人間対ウイルスの歴史も止まることなく、巡り続ける。
せめて音楽はすべての生き物たちにとって有益なものでありますように。
そう願うことくらいしか今はできないけれど。
#春は必ず来る #白日 #奇跡の地球 #コロナ
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