FGO感想 地獄界曼荼羅
このnoteにはFate/Grand Order 第2部5.5章のネタバレが含まれます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ゴールデン」この言葉をこれほどカッコいいと思う日が来るとは思わなかった。
坂田金時、金太郎。日本人なら幼い頃に一度はそのお話を楽しんだ御伽噺の英雄をここまでカッコよく描かいてくれてとても嬉しい。
正義の味方という言葉、本シリーズでは何かと重い言葉だがここでは実に爽快な宣言だった。
ここは完全に日曜朝の戦隊ヒーロー番組のノリ
ギリシャがスーパーロボット大戦だったが平安時代も凄かったようである。というか、西から流れてきたということはアレスの真体の残骸なのだろうか。
渡辺綱もついに登場した。金時の兄貴分ということで豪快な武者を想像していたが実際には冷静沈着、謹厳実直を絵に描いたようなキャラクターでこれはこれで良いと思った。
彼と茨木童子の関係性は今後幕間で触れられるのだろう。想像以上に残酷で救いのない真実が眠っているようだ。
茨木童子が自分の過去、自己の真実に直面した時、彼女はどうなってしまうのだろう。そして綱は、あの橋で彼女の腕を切り飛ばした武者はどうするのだろうか。
源頼光と酒呑童子にさらなる掘り下げがなされたことも嬉しかった。
頼光については常々その精神に幼い部分があると指摘されていた。己が魔性をその並外れた精神力で封じ込め、武士として生きてしまったがためにどうしようもなく彼女の中には愛を求める少女、文殊丸が眠ったままなのだろう。今回はナーサリー・ライムが寄り添ってくれたが史実の彼女にはそういう人がいたとは思われない。
ひょっとすると、酒呑童子だけが唯一その可能性を持っていたのかもしれないが。
酒呑童子と金時の過去についてもそろそろ本格的に開示されそうで怖いやら楽しみやら。
他にもマスターのお供として八面六臂の活躍だった加藤段蔵、紫式部とバベッジ、清少納言の関係性、まさかの登場を果たした玉藻とカエサル級の大人物としてその威厳を見せた藤原道長。登場人物が誰も彼も魅力的に描かれていた。
そしてやはりアルターエゴ・リンボ。悪役としてこれほど気持ちよく倒せるキャラもいない。これまで散々煮湯を飲まされた相手だったのでみんなの力を合わせてこの男と戦う爽快感がひとしおだった。
相変わらず趣味が悪い野郎である。Fateシリーズには魅力的な”悪“が何人も登場するが、古典的な“悪役“としての完成度はこの男が一番かもしれない。
もちろんただ悪辣な相手というだけでは読者に側にストレスが溜まる一方になってしまう。しかしリンボの場合、優れた智謀と陰陽師としての高い実力がありながら、その傲慢さと計画を気分で変えてしまう適当さのせいで結局足を掬われてしまう。
こういう男だからこそ金時のような気持ちのいいヒーローが輝くのだろう。
実にいい断末魔、いい末路だった。戦隊ヒーローの悪役はこうでなくてはいけない。
安倍晴明と蘆屋道満。この二人もようやく情報が開示された。
安倍晴明はまぁ、想像通りというか、マーリンやホームズの同類であった。ついに一度も顔見せせず手紙だけでこの事態を解決に導いたのはさすがという他はない。
道満も登場。やはりリンボはあくまでアルターエゴであり、人間としての苦悩、今日を守る陰陽師としての責任感ある人物だったのだとわかった。だからこそ、自分を凌駕する天才と比較され続けて歪んでしまったのだと思うと悲しい気持ちになる。
しかしこの二人の間には間違いなく友情と呼べるものがあった。最終的には崩れ去ってしまったとしてもそれは嘘ではない。
自分としては晴明が最後までリンボの前に姿を現さなかったのは、あのアルターエゴを道満とは認めないという意思表示なのだろうと思う。安倍晴明が陰陽師として戦うのは天下に蘆屋道満ただ一人。彼の悪性だけを切り取ったカリカチュアであるリンボと安倍晴明が戦うことはない。晴明がリンボと戦ってしまえば蘆屋道満という人間の真実が忘れられてしまう。そうやって滅ぼしてしまった唯一の盟友に詫びているのかもしれない。
全体としてFGO夏の劇場版と言えるような痛快な物語だった。今年中にこれを配信してくれた制作スタッフの方々に感謝したい。
ピックアップ第二弾も楽しみだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?