ドラマ 「司馬懿 軍師連盟」
最近視聴し始めた中国ドラマ、「司馬懿 軍師連盟」が中々に面白い。
三国志を司馬懿の視点から再構成したドラマとなっているのだが、よく知られる事件や戦いを切り口を変えて描くドラマになっている。
司馬懿はその軍歴から多くのドラマやゲームでは諸葛孔明のライバルとして扱われる。加えて魏の内部で巨大な権力を手中に収め、その子孫達が魏を簒奪し晋王朝を築く。いわば最後の勝者となった人物である。こうした事実ゆえにずる賢さ、抜け目なさといった要素を持つキャラクターになることが多い。
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しかしこのドラマでは主人公ということもあってか、そう言った陰気な描かれ方はせず、司馬懿は才智に溢れ且つ耐えることを知る、賢人として描かれている。士族の若者から魏の頂点に上り詰めていく過程でも、抜け目なく立ち回ってのし上がるというよりはむしろパワハラじみた曹一族の命令に耐え忍び、猜疑心をうまく躱し、権力に執着を見せないことで却って身を保ってきたという物語になっている。
漢王朝を事実上簒奪し自らの王朝を開こうとする曹操と、彼を支えながらも漢の臣下としての忠義に悩む荀彧達、旧士族達の葛藤。宗室と貴族のパワーバランスを巧妙に制御しながら自己の権力を確立せんとする曹丕との緊張関係。軍部を掌握し士族達と激しく対立する曹一族から向けられる憎悪。
さながら万華鏡のように変化し続ける政局の中、司馬懿は持ち前の知略と愛する家族達の支えを受けて着実に歩みを進めていく。
司馬懿とその人間関係にスポットが当てられているため、赤壁に戦いや関羽の死と言った通常の盛り上がる場面をバッサリとカットしているがそれが却って「味」を作り出している。
もちろん、生涯最大の宿敵となる諸葛孔明はもう一人の主人公としてその背負うものも含めて大きくピックアップされている。
二人は持てる知恵の限りを尽くして激しく軍略を戦わせる。中国ドラマならではの迫力ある合戦シーンと共に描かれる二人の知略戦は三国志に精通している人でも改めて楽しめる物に仕上がっている。一方で司馬懿は皇帝に向けられる猜疑心と、孔明は暗君の失策や同僚達からの嫉妬に悩まされており、二人は様々な意味でお互いを似たもの同士の好敵手と捉えている。その戦いは激しい一方で旧友が語り合うかのような雰囲気を醸し出している。
これまで中々主役としては扱われなかった司馬懿を中心に据えることで,このドラマは一味も二味も違う仕上がりとなっていると言っていい。
三国志は多くのエンタメで扱われる題材であるため、飽きてしまったという人も多いかもしれない。自分はそういう方々にこそ、この作品をお勧めしたい。自分がよく知っているはずの物語も、視点を変えればまた違った面白さに出会えることを今作は教えてくれる。
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