POP-UP展示と販売のお知らせ
彼らに正式な呼び名はない。ウクライナ東部ハルキウで撮り続けているスケーターたち。誰でも出入り自由な、ゆるやかなスケートコミュニティなせいか、捉え所を見つけるのが難しい。いつもよく話すスケートビデオグラファーのミキータが描いていたXАТОБ СКЕЙТБОРДИНГ(ハトーヴ・スケートボーディング)というグラフィティを見せてもらったことがあり、私は彼らをそう呼ぶことにしている。
XАТОБ(ハトーブ)とはハルキウ国立オペラ・バレエ劇場の頭文字をとったものだ。建物はゴリゴリした異様な雰囲気のあるブルータリズム建築で、彼らのたまり場はその劇場前の広場であり、その空間は戦時下であっても市民の憩いの場というか、適当にハングアウトできる場としても親しまれている。ハルキウ滞在中にスケーターたちにテレグラム(メッセージアプリ)で連絡してみると、たいてい「今からハトーブに行く」とか「あとでハトーブで会おう」とか合言葉のような言葉が返ってくる。そのうち自分もその合言葉を使うようになったし、滞在中はほとんど毎日ハトーブで撮影していた。
彼らがどんな場所にいるかというと、先月10月の間、ロシアからのミサイル・ドローン攻撃は2000発だったと国防省が発表している。80%の確率で迎撃できたとしても、ひと月の間に400発がウクライナに落ちている。むちゃくちゃである。そんななか彼らはスケートボードに乗っている。だからどうしたというよりも、その事実が何よりもヤバいと思う。
はっきり言って自分でもマニアックだと思う。戦時下にある東欧の国の、さらに地方のスケボーコミュニティの写真だ。それでもとにかくハトーブのみんながかっこいい。スケボーに関して相変わらず素人同然の私だが、かっこよさはわかる。それをみんなに見てもらいたい。
ずいぶんと前置きが長くなってしまったが、急遽ポップアップをすることにした。グッズの販売がメインで、スペースが限られているため写真の展示は少数の予定。
●日時 11月15日(金)〜11月22日(金)13:00−20:00
●場所 KungFu Camera(東京都杉並区高円寺北3-2-12)
会期中は基本的にずっと在廊しています。
グッズとして秋にも春にも着られるロングTシャツも用意した。2種類。
ひとつはウクライナ東部ハルキウのスケーター、ロマンが対戦車障害物を飛び越えている写真をバックプリントしたもの。彼も写真が好きで、なぜか私を撮ってくれたしもした。こちらは胸元にキリル文字でXАТОБ СКЕЙТБОРДИНГのロゴがある。
もうひとつは、「俺のトリックを撮って」と何度も言われ、そのトリックがうまくいかないと「リプレイ!」と私に言ってくる少年。おかげでたくさんの失敗したフィルムが残ってしまったが。彼を写した写真が背中にある。両袖にXАТОБ СКЕЙТБОРДИНГのロゴ。キリル文字は読めるようで読みにくい、欧米的じゃない雰囲気が好き。これを撮ったときは夏で夜9時になっても空は明るい。夜間外出禁止令で10時には帰らないといけないので、やや焦りつつ撮影した写真だ。背景に暗くそびえたつように写っているのがオペラ・バレエ劇場のハトーヴだ。
あとはロゴ入りのナップサック(黒、ブルー、オレンジ、蛍光イエロー、蛍光グリーン)。さらにキワモノとしては軍手、靴下、安全ベストなども用意する予定。
アメリカ大統領選でトランプ候補が当選したニュースを見たあと、ビデオグラファーのミキータと連絡をとっていたら「私たちのことを忘れないでほしい」とメッセージを送ってきた。アメリカの支援がなければかなり厳しい状況に追い込まれるのは確かだ。支援には全くならないが、ポップアップでシャツを売って、彼らにグッズを送る送料にあてたい。(現在なぜかEMSが一番安いという異常事態)
ぜひお越しください。