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6月16日(日曜)は父の日! おすすめの話5つを紹介します 〜ひろのぶと株式会社の刊行書籍から〜

みなさん、こんにちは。
ひろのぶと株式会社 編集の廣瀬です。

6月16日(日曜)は、父の日です。

父の日って、日付が決まっているのではなく
毎年6月第3日曜日なんですよね。
ということは、6月も、もう3週目。
あっという間すぎませんか。
光陰矢の如しとはまさにこのことで、

……ちがった、時間が早いという話ではなく
父の日の話でした。

父の日に読みたい話 5選

ということで、
本日は「父の日に読みたい話」を
ひろのぶと株式会社の刊行書籍の中から5つ
廣瀬の独断と偏見でご紹介いたします!

稲田万里『全部を賭けない恋がはじまれば』

『全部を賭けない恋がはじまれば』から
紹介する一篇は、
「第五章 幼少」より『じゃがいも』です。

7歳の父とのドライブの記憶を描く『じゃがいも』

“私”が7歳だった、ある日のお昼時。
テレビを見ていた“私”の後ろで
突如、父と母が口論を始めます。

激しさを増す母の怒りに、
父は“私”の手を引いて、外へ。
車に乗り、あてもないドライブに出る二人。

父は、黙ってアクセルをぎゅうぎゅうに踏みスピードを上げた。
「スピード出したらダメってお母さん、言ってたよ。」
「今日はいないんだよ、お母さん。何してもいいんだよ。」

『全部を賭けない恋がはじまれば』より

その後“私”がつなぎ止める家族。
そして大人になった“私”が振り返る当時と、今の家族。

7歳の視点から見た父が
どこか不安げで強がっていて、
だけど愛おしい。

そんな「完璧ではない」家族の姿と
“私”の原点を描いた一篇です。

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立川談笑『令和版 現代落語論』

『令和版 現代落語論』からは、
「【第二章】談笑はこう変える! 〜改作解説9選〜」より
読みたい&聴きたい3つの噺を紹介します。

『文七元結』 〜ダメな親父も、根底にあるのは息子と娘への愛〜

人情噺の代表格とも言われる演目。
田中泰延は『文七も……』くらいで「泣く!」と言います。

【基本のあらすじ】
腕のいい左官職人だった長兵衛。
しかし、博打にのめり込んで、
仕事道具の道具箱まで質に入れてしまいます。

そんな年の瀬、家族を思い
自ら吉原の妓楼へ向かう娘のおひさ。
「来年の大晦日までに返済すれば
 おひさに客は取らせない」という
温情付きで、女将に五十両の大金を借り受けた長兵衛。

ところが、その帰り道
橋から身投げをしようとする
若者に遭遇した長兵衛は、
彼を救うためのその五十両を渡してしまい……
最後には、善意が善意を呼ぶ心温まるお噺です。

談笑版の改作では、
ひとり、これまでの『文七元結』には登場しなかった
おひさのお兄さんが登場。
長兵衛のダメな側面ではなく、愛情深さが
グッと増して、より心に染み入る噺に。

ぜひ、従来版との比較と、改作の視点まで
本でチェックしてみてくださいね!

▼ 談笑版『文七元結』 YouTubeでも公開中

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『子別れ』 〜子が改めて結ぶ、夫婦の縁〜

落語の噺って、
おっちょこちょいだったり、だらしがなかったり
見栄っ張りだったり、遊び好きだったり……
なんだかちょっとずつ「ダメ」な人たちが登場します。

だからお話が転がるし、おもしろい。人間らしい。

談笑師匠は『令和版 現代落語論』の中でも
「落語はダメな私たちを肯定してくれる」と語っています。

『子別れ』は、まさにそんなお話だなぁと感じる演目。

あらすじは、ざっくりいうと
大工の熊五郎とその(元)女房のヨリを
二人の子供・亀吉が戻そうとするお話。

それが、談笑版『子別れ 昭和篇』では舞台が昭和に!
また、サゲも現代の価値観や知識に合わせ
改変しています。

ところが、舞台の時代設定が変わっても
従来版と読み比べると、やっぱり『子別れ』なんです。
変えていること、引き継ぐこと。
ぜひ、比べて感じてみてくださいね。

ちなみに田中泰延に
「談笑師匠の『子別れ 昭和篇』なんですけど、」と話しかけると
数秒後に泣きます。

▼ 談笑版『子別れ 昭和篇』 YouTubeでも公開中

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『浜野矩隨(のりゆき)』 〜追うのも、越すのも、父の存在は、大きい〜

この噺の中に、実は「父」は登場しません。

おそらく、「母の日」に紹介するほうが
わかりやすい演目だと思います。

だけど、私はこれをあえて「父の日」に紹介したいのです。

【基本のあらすじ】
主人公の浜野矩隨の父は、
腰元彫り(侍の刀の装飾品。金属工芸)の名人として
大人気を博していました。

しかし、その名人が亡くなると
弟子たちはいつしか工房を去り、
今では息子の矩隨がひとり
母と暮らす裏長屋で細々と腰元彫りを続けるばかり。

馴染みの道具屋はいつも作品を買い取ってくれますが
それは父への恩義から。
矩隨の作品は理解されず、なかなか売れません。

そしてある日、道具屋はついに矩隨に呆れて
「腰元彫りをやめてしまえ」と言い放ちます。

うなだれる矩隨に、母は
「私のために観音様を彫ってほしい」
と言います。

父を引き継ぎ、その背中を追いかける矩隨。
その矩隨がぶつかる、
父の評判という大きすぎる背中。
そして最後は、その父の存在を乗り越え
自身も名人となる浜野矩隨。

『浜野矩隨』は、そんな
父と子のつながりが描かれた作品であり、
父とはどういう存在なのかを感じさせる演目だと
私は感じています。

これもまた、演目名を口にしただけで
泰延さんが「泣く!」という一作。
書籍制作での談笑師匠による高座の収録では、
観客全員がシーンとして、最後には涙する。
そんな不思議な一体感を得た落語会でした。

▼ 談笑版『浜野矩隨』 YouTubeでも公開中

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田所敦嗣『スローシャッター』

『スローシャッター』も、
「父」や「親子」とかかる話がいくつかあって
全部を紹介しようか悩んだのですが……

今回は、やっぱりこの一篇にしぼって紹介します。

『メコンデルタの花嫁』 〜ベトナムの「親父の一番長い日」〜

もう、この一篇の紹介は
ベトナムの「親父の一番長い日」
この一言で十分なのですが。

ベトナム、メコンデルタ地方東部にある
田所さんの取引先のトゥイ。
秘書を務めるリエンは、彼の娘。

ある年、リエンが結婚すると聞いた田所さん。
トゥイにそのことを尋ねると、
「式にお前も来い」と言われます。

そして、式の日。
トゥイと田所さんのやりとりが……田所さん、洒落てる……。

どんな声をかけていいのか悩んだけど、ある日の言葉を思い出した。

「ベトナムの男は、人前で泣いたりしないんじゃなかったっけ?」

そう言うと、彼は笑いながら僕の背中を軽く叩いて、静かに下を向いた。

『スローシャッター』より

あれ、ベトナムの「親父の一番長い日」として
いいエッセイを紹介していたはずなのに
結論が、田所さんが洒落てるってところに
急旋回してしましました。

でも、いいんです。流れる空気が。
いやあ、男同士の関係が羨ましくなる。
いい一篇です。

ぜひ、静かな夕暮れ時、ウイスキーロックと一緒に、どうぞ。

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おまけ|私は、父の日には……

実は、何も贈っていません。

というのも、5月から8月まで
母の日、父の日、父の誕生日、母の誕生日と続くので
まとめてちょっといいものを贈るようになりました。

それでも、編集やライターという
仕事をやっている性でしょうか。
毎年この時期には「父の日だな」と考えます。

父親の存在は、大人になるほど大きくなる。

高校生ぐらいまでは、父のことを
「市民体育館のジム契約したんだから
 ちゃんと通えばいいのに」
とか……
「え、ブラピと同い年?! 嘘でしょ?!」
とか……
「せっかく買った服なんだから
 もっとちゃんと着こなしてよ〜」
とか……
(あ、こんなこと会社のアカウントで書いたってバレたら怒られるかしら)

まあ、平たく言えば
どこにでもいる、
ちょっとだらしなくてお腹が気になる、
だけど知識はあって読書好きでちょっと頼りになる
サラリーマンのおじさん……くらいに思っていました。

それが、大学で上京し、
社会人になって一人暮らし、
仕事をしながら家の契約やら電気やらなんやら
生活に必要な細々したことも自分でやらねばとなり……

あれれ、自分のお世話さえ満足にできない、
仕事だって不足だらけ。

ああ、仕事をしながら、
仕事を家に持ち帰ることはあっても
仕事の愚痴を家では吐かず、
そして家族のこと、自身の両親のこと、
子供のこと……と考えていた父は(そして母も)
それだけで、すごいことだったんだなぁ……

と、年齢を重ねるごとに感じます。

いやぁ。全然、追いつけないです。
おじさんって思っていた頃の自分を
どつきに帰りたいです。

きっと、だから今日の5選の中に
私は『浜野矩隨』を入れたんだろうなぁ。

みなさんにとって、
「父親」とはどんな存在ですか?

今日ご紹介した、ひろのぶと株式会社の
刊行書籍に収録されているお話でも。
それ以外の本であっても。

読書が、そんな「自分と人のつながり」を
ふと思い返す機会になったら、うれしいです。



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