破顔の笑みを見た! 著者・編集者・装幀家、印刷立ち会いへ|#スローシャッター マガジン Vol.2
みなさん、こんにちは。ひろのぶと株式会社 編集の廣瀬です。
第2回となる #スローシャッター マガジン。本日は私から、11月末に行ってまいりました、藤原印刷さんでの印刷立ち合いの様子をお伝えします。
今回は、著者の田所敦嗣さん、しゃちょう・編集担当の田中泰延、そして装幀の上田豪さんが、そろって藤原印刷さんの松本本社におじゃましました。なんと、豪さんが一緒ということで、「カバー」のみでなく、「表紙」「帯」の印刷も立ち会えることに。
つまり「盛りだくさん」なんです!
そこで今日は、写真とキャプションを中心に、じゃんじゃか当日の様子をお伝えしていきます。印刷の仕組みなどは、#全恋 マガジンの印刷立ち会いの記事を参考にしてみてくださいね。
【帯】黒い用紙の上で、特色インクのカラーを再現せよ!
今回の帯の用紙は、黒。その上にグレーのインク(特色)で帯文を印字します。ただし、黒の上にグレーを載せると、下地によって本来のインクの色より暗くなってしまうもの。そこで藤原印刷さんからのご提案により、白で印刷した上に希望のグレーのインクを載せることにしました。
色校への赤(フィードバック・修正依頼)を反映した最終調整の仕上がりを、担当オペレーターさんと一緒に豪さんが確認します。
さあ、印刷に入っていきます!
田所さんは、機械に興味深々。その様子を見て、「やっぱり、工場を訪問したりする仕事の人だなぁ、仕事柄だなぁ」と泰延さん・豪さんは話していました。
ちなみに、何も刷られていない左側は、このあと別の工場に運ばれて「箔押し」で文字が施されます。
ということで、帯印刷、これにて無事終了!
そのまま、カバーの印刷立ち会いへGo!
【カバー】美しき、パール感。鮮やかな東南アジアの夜を表現せよ!
#全恋 のカバー印刷の時と同じ印刷機へ移動すると、前回もお世話になった藤原印刷プリンティングディレクター、花岡秀明さんが印刷準備を整えてくださっていました。
色校を「かなりいい仕上がり」と言ってニコニコしながら、さらに美しいカバーにすべく数点調整依頼を入れていた豪さん。表現したいのは、田中泰延が撮影した、東南アジアの鮮やかな夜です。
そして、廣瀬は驚いた。
花岡さんの調整を確認した途端の
豪さんの、この笑顔!!!
マスク越しにもビシバシ伝わってくる喜び。「破顔の笑み」とはこの時のためにあった言葉なのではないかと、カメラ越しに思いました。ホッとされたのか、花岡さんもニコニコうれしそうな笑顔です。
ところで今回のカバー、独特の光沢と輝きがあるのは、写真でもお分かりいただけるでしょうか……?
この鮮やかな艶めきは、「銀塩写真のイメージを」という豪さんの思い。独特のパール感がある用紙を使っているのです。サインをした白い部分を見ていただくと、柔らかに煌めくパール感が分かりやすいかもしれません。
また、このパール感につながるところなのですが、用紙の手触りも独特のざらつきと吸い付くような滑らかさがあります。
ぜひ、みなさんも本を手にしたら、たくさんなでなでして、その手触りまで楽しんでくださいね!
【閑話休題】手土産大臣で心を掴め!
カバーの印刷後は、表紙の機械の調整に少し時間がかかるため、応接室に移動。藤原(兄)さんにご挨拶しました。
まずはしゃちょう田中泰延、手土産大臣の実力を発揮です。
「面白い恋人」トークに満足したら、今度は #スローシャッター のベトナム取材についてや、今回のデザインコンセプトについてなど、本に関わる話が進みました。
ここで豪さんが何を語ったかは……
1:「#スローシャッター マガジン Vol.1」をご覧ください。
2:12/23(金)のイベントで、より詳しく、豪さんの生の声で聞けるはず! 下北沢 本屋B&Bさんにて、20:00〜。来場参加はもちろん、配信、見逃し視聴もあります。ぜひ!
【表紙】黒の絶妙さとライトの表現。ベトナムの交差点に立ったような気分をつくり出せ!
そうこうしているうちに、表紙の印刷準備が整いました。再び、印刷所へ。
本日最後の立ち会いです。
黒は締めたい。でも黒が潰れてしまわないように。鮮やかなライトを表現して、ベトナムの交差点の香りを……。そのために必要な調整を、写真も参考にしながら2人で詰めていきます。
より東南アジアの夜のライト感が再現できるようもう少し全体の彩度を上げたい。そこでマゼンタ濃度を上げる調整をしつつ、濁りを抑えるためにシアン濃度を下げる調整をして、再度印刷。
そして、ついに……豪さんOKが!
最後は、表紙と一緒に記念撮影もしました。
細かな修正方法ではなく、「何を表現したいか」が大切
実は表紙の調整と確認、すごい熱気と密度でしたが、時間は10分ほどでOKが出るスピーディーさでした。
この日の夜、豪さんが話していたことです。
「花岡さんから、『彩度を上げるなら濃度も上げないと平坦になるから』と言われた。
『この写真をどう定着させればいいのか』というアートディレクターの狙いを、すべてを伝えずとも花岡さんがしっかり理解してくださっていることがわかる言葉だったから、驚いた。
ただ『鮮やかにしたい』ではなく、何を表現したくてどう鮮やかにしたいのか、それを汲み取ってくれているから出てくる声で、そこが通じ合っているからイメージを共有して完成に持っていきやすかった」
事前に東京の藤原(弟)さんが細かく豪さんとコミュニケーションを取ってくださっていたから。プリンティングディレクターの花岡さんがデザインからその意図を汲み取ろうとしてくださったから。
豪さんの言葉に、やはり最後にクオリティーを決めて技術力を生かすのは「人」なのだと感じました。
藤原印刷のみなさん、今回もありがとうございました!
立ち会い中に垣間見た、田所敦嗣という男
長い。長いのですが、もう一つだけ。立ち会い中に印象的だった、記しておきたいシーンがあります。
帯の印刷立ち会い中の出来事です。
ふとカメラから顔を上げると、さっきまで横にいたはずの田所さんがいない。あれ? と見回すと、田所さんは後ろで別の作業をしているスタッフさんに話しかけていました。
これまで、 #スローシャッター の編集チームとして一篇一篇をたどりながら、実はずっと、少しだけ不思議でした。「どうして、この人の出張はこんな交流が生まれるのだろう?」と。
海外出張をしている人は、他にもいる。何かを一緒につくる、ということを仕事にしている人も、他にもいる。なんなら、長期の駐在でもっと長く、深く、現地に入り込んでいる人だって、きっといます。
だけど、#スローシャッター の物語と交流は、田所さんだから、なのです。
その理由を、この自然と印刷所の人と話をしている姿に、垣間見れた気がしました。田所さんは、人が好きなんだと。水産のお仕事でも、工場訪問では同じように自然と話を聞いているんだろう。それが、田所さんの自然な姿なんだろうなと。
私にとっては今回の印刷立ち会い、その田所さんの姿を見られたことが一番の収穫だったかもしれません。
田所さんの人柄が生み出した20篇の物語と、プロの魂と熱気がぎゅっと詰まった一冊。書店さんやネット書店、そしてHironobu&Co. ONLINE STOREでご予約受付中です! ぜひ、手に取ってこの日の熱気を感じてみてくださいね。