#スローシャッター マガジン Vol.7 田中泰延からの手紙 「人生を、始めたんだよ」
ひろのぶと株式会社 代表取締役社長 田中泰延です
2022年12月16日、金曜日。
ついにこの日がやってきました。
田所敦嗣『スローシャッター』発売日です。
感謝してもしきれません。書いてくれた人、作ってくれた人、売ってくれるみなさん、買ってくださるみなさん、読んでくださるみなさん、感想を届けてくださるみなさん、この会社そのものを支えてくださっているみなさん、コーディネーターのマイケル、スタイリストのジェシー、メイクアップのリンダ、スタントのジム、プロデューサーのアシュリー、そしてピッツバーグの両親、
それはね、もう、一人の部屋でさんざん泣いた。
ひとつ言えることは、私は何もやってないし、何もできないということです。
みんなが、やってくれる。
朕はそういう存在であることをあらためて確認した。御名御璽。
私からの手紙ということで、とってもセンチメンタルな伊代はまだ16だから的なジャーニー感あふれるメッセージが届くと思ったら大間違いだ。
今日はどうでもいい苦労話をさせていただく。
田中泰延、編集者デビュー
この本は、
著者 田所敦嗣
編集 田中泰延
編集補 廣瀬翼
装幀 上田豪
という座組みで始まりました。
まぁ、初めてのことばっかりでしたわ。
編集といいましても、やり方がわからない。
なので特殊なやり方を採用しました。
よいこは真似しちゃだめな方法です。
❶まずは田所敦嗣さんの原文が「note」にある。
❷それを作者本人が「本にするなら直そう」とリライト
ここからがびっくりだ。
❸田中泰延が勝手に主観でもって書き換え
ただし、そもそも田中泰延は田所敦嗣の文章に惚れ込んで本にしたいと申し出たわけで、そのいいところを一切、削りたくもないし、改変したくもない。
なので、どうしても読みにくいところ、文章がややわかりにくいかしらね、ってとこを直して田所さんに見せて、ふたりは「ああ、これでいいですね、できましたね」と安心する。
だが…そんなわけねえだろう。できてるわけねえだろう。
❹ここで編集補佐といいつつ、始皇帝を退位させる勢いで廣瀬翼が登場する。
もうね、pdfのアイコンからしておかしい。
なんか見えている。
恐ろしい。
廣瀬さんは書籍編集者としては稲田万里さんの『全部を賭けない恋がはじまれば』がデビューですが、そもそもWEB媒体で校正、校閲のプロとしてお仕事をされておられにおなりになられてございます。
❻田中と田所が廣瀬に説教されて初稿ができる
だが、こんなことで終わるわけはない。
さらに本物のプロヘッショナルがやってくる
❼校閲会社からのチェックが入る
凄まじいですよ、専門の会社は。プロヘッショナルですよ。
たとえば「20年前の夏、スカンジナビア航空の963便に乗り込んだ僕は」
とあったら、
「20年前の夏季シーズンにスカンジナビア航空963便は存在したか」
を徹底的に調べてくれます。
なかったら、
【2002年にその便名は存在しません。
7月1日から9月30日まで運行されていた
21:00成田発 同日18:00ヘルシンキ着の964便と思われます】
などと戻ってきます。すみませんでした。
❽そしてやっとDTP上田豪さんにお渡し
❾最後に見たら…まだあるわあるわ 誤字も脱字も
➓もうしらん できた
とにかく、できた
これを20回、繰り返して
なんとか、おかしなところのない本ができた、と思ってます。
あったらごめん。
たぶんないと思う。ないんじゃないかな。ま ちょっと覚悟はしておけ。
でも20回だけ繰り返しただけじゃないんですよ。
40回近く、やったんです。
それを「仕事の鬼」廣瀬翼は
「収めるのは20篇にしましょう。これ以上本が厚くなったら読みにくいわ」
ばっさり半分にしました。
泣きました。叫びました。
ぜんぶ面白いのに!
でも、その決断があったから、
「珠玉の」と胸を張って送り出せる短篇集になりました。
だからね
つまり、ここに納められているのは半分。
加えて、田所敦嗣には
まだ、それ以上の数の未発表原稿がある。
だからね、ちっちゃい声で言いますよ。
みなさん、買ってください
直販サイトからのご購入なら
送料はかかっちゃうんですが(ごめんなさい)
すごく、いいものつけました。
で、本書にはあえて収録しなかった(田所さんの本だからね)
田中泰延の「あとがき」を載せました。
田中泰延が100億年ぶりに文章を書きました。
すんごい、いいんです。
人生が始まる
この前、糸井重里さんととんかつを食べました。
田中が出版社を作ったとき、糸井さんは、なにも言ってないのに
「田所さんの本を出すんでしょ」
といきなり当てました。
びっくりしました。
超能力者か。
その糸井さんがおっしゃいました。
とんかつ食べながら。
「田中さんは、出版社を始めたんじゃないんだよ。
人生を、始めたんだよ」
この本を書いた人、関わった人、読んでくれた人、
そして旅に出た人、誰かに出会った人。
みんなの人生が、また、ちょっと始まりますように。