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無職転生、MFゴースト、現代アニメが抱えるコンプラ問題

昭和〜平成で流行したアニメが令和においては再放送不可能な作品が多々ある。

理由は急速に加速した「コンプライアンス」という言葉による。

「無職転生」を含め、近年アニメ界では「転生物」が多い。
「コンプライアンス」対する「異世界の話ですから」という言い訳が必要な時代背景が大きな理由となっているかと思う。

友人に紹介されて暇つぶしにみ始めた「無職転生」はその内容の面白さにハマってしまった。
と、同時にタイトルと違って大人向けのアニメだと実感した。
第2話でいきなりロキシーの大変なシーンに出会し、第22話ではエリスとルーデウスが結ばれる。ルーデウスは元々オタクの生まれ変わりだから良しとしても、エリスは15歳、「異世界」設定でなければ1発アウト。
パウロの不倫、最終的にルーデウスが2人の奥さんを娶るとなれば、「異世界」設定でも問題作になり、炎上まで。

僕個人としては漫画家さんが描いた物語が気に入らなかったら、見なければ良いと思う。
「シン・エヴァンゲリオン」といい、「無職転生」といい、自分の思い通りのストーリーにならないからと言って作家さんを批判し、炎上させるのは理不尽極まりないことだと思う。

話は「MFゴースト」に

これは、しげの秀一氏が「バリバリ伝説」から始まり、「頭文字D」とサーキットではなく公道が舞台になっている「走り屋」物語。

バイクレーサーだった僕にとってバリバリ伝説」はバイブルのような本だった。
当時は峠に「走り屋」が集まり、速さを競っていた。
その車バージョンが「頭文字D」群馬県の峠を舞台にサーキットでは味わえない公道レースの醍醐味を描いている。
(伊香保温泉街のマンホールは「頭文字D」になっている)

「MFゴースト」は「頭文字D」の主人公だった藤原拓海の教え子片桐夏向が主人公の物語。
藤原拓海が乗っていたのがAE86
片桐夏向はトヨタ・86に乗る。

とはいえ、1995年に始まった「頭文字D」と違ってコンプライアンスがうるさい時代に公道レースを描くのは至難の技。
それでもサーキットを走るレースとは違う、公道レースならではの面白さを描きたい作者は凡人が思いつかないアイディアを繰り出してきた。

しげの秀一氏は天才と思った。
公道レースを助長するような漫画を描きづらくなってしまった現代に合法的な公道レースができるエリアを作り上げてしまった。
それは富士山の噴火によって避難区域となって誰も住人がいなくなってしまった箱根、芦ノ湖、エリア。

箱根方面を走ったことがある人なら「MFゴースト」を見て、そのリアルさに感動するかと思う。
そして、「頭文字D」の主人公たちが大人になり、新たなレギュレーションを考え、次世代のレーサーたちに走りの場を提供しているのも個人的には嬉しい。

近年のアニメが説明的になり、誰でも理解できて見やすくなる中で
しげの秀一氏は全くと言っていいほど遠慮がないのがいい。

作中「スリーペダル」という言葉がなん度も出てくる片桐夏向が乗るトヨタ・86は時代遅れの「スリーペダル」と言われる。
運転免許を取らない若者が増え、運転免許を取っても殆どがオートマ限定の時代に「スリーペダル」という言葉が理解されるのか。
僕の後輩は「久保田さん、一番左のペダルは何ですか?」と僕に聞いたくらいだから。

そして、「MFゴースト」のレギュレーション、「グリップウエイトレシオの均一化」、レースの世界にパワーウエイトレシオという言葉はあるが、しげの秀一氏はグリップウエイトレシオ」という新たな言葉を作り出してきた。
簡単にいうと、重量が重い車は太いタイヤを履ける。軽い車は細いタイヤになる。
4WDやミドシップにはハンデあり。
パワーに制限はなし。

「グリップウエイトレシオ」に関しては作中で説明がなされているが、、理解できる人が何%いるかと思う。

難しすぎて、見る人が減ってしまうのが嫌で物語を簡単にする、とか、説明を多くするということが一切ないから小気味良い。

勿論、専門用語が理解できなくてもレースのことが分からなくても、レースの時の夏向とプライベートの夏向のギャップやお世話になっている西園寺家のひとり娘、恋との物語もあり面白く見ることができる。

先日、放送された8時だよ全員集合は「不適切だけど面白い」という言い訳タイトルで放送された。
「コンプライアンス」という言葉でエンタメが縛られる時代、貴重な作品が「炎上」で消えていってしまう世の中にはしたくないと思う。



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久保田弘信
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