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「《桶川ストーカー殺人事件》「私、殺されるかもしれない」」という記事を紹介する清水潔氏のX(旧Twitter)ポスト

午前8:18 · 2023年10月26日 · 13.6万 件の表示

/home/a66/sc/2023-10-27_002517_清水 潔 @NOSUKE0607 24年前、私は現場にいた。 警察より先に犯人を特定したが警察は動かない。それでも報じ続けた…、スト.jpg

あれから、はや24年が経とうとしている。“ストーカー”という言葉がまだ浸透していなかった1999年10月26日、埼玉県のJR桶川駅前で21歳(当時)の女子大生、猪野詩織さんが何者かに刺し殺された。当初は通り魔による犯行と思われたが、事件前、詩織さんがストーカー被害に遭っていたという情報が浮上。被害者の私生活に関する報道も広がるなか、写真週刊誌『FOCUS』の記者・清水潔氏は、詩織さんの友人2名から重大な証言を得る……。
 のちに、「ストーカー規制法」が制定されるきっかけとなったことでも知られる「桶川ストーカー殺人事件」。週刊誌記者による執念の取材は、犯人を追い詰めるとともに警察組織の腐敗を暴き、一大スクープとなった。その一部始終をまとめた事件ノンフィクションの金字塔『桶川ストーカー殺人事件 -遺言-』(新潮文庫)を抜粋して紹介。抜粋部分は、被害者・猪野詩織さんの友人、「島田」と「陽子」(ともに仮名)の驚くべき言葉からはじまる──。【前後編の前編。後編から読む】
※プライバシー保護の観点により、一部の個人名をアルファベットに置き換えて表記しています。
 * * *
「詩織はAと警察に殺されたんです」


普段の人間関係の中で、「人を疑うこと」が良いことなのか悪いことなのかと問われれば、私は後者だと答えるだろう。しかし、取材となれば話は別だ。情報が少ない場合、面白そうな展開の話をしてくれる取材相手というのは信じてしまいたくなる。だが、そんな内情を承知の上でジャーナリストに接近してくる手合いがいることも私は知っている。安易に人の話を信じてロクなことはない。事件記者から見れば世の中は嘘ツキばかりである。

だが、この人達に嘘を吐く理由はなかった。彼らにはこの事件に関して利害関係がそもそもないからだ。警察の件にしても「犯人だ」というのはどうかと思ったが、見たところ二人とも妙な思い込みを持つタイプにも見えない。
 被害者側が、警察の対応に不満を感じて逆恨みする場合はままある。警察のせいで事件が起きたのだと思い込んでしまう人だっている。しかし、島田さんの口調や表情は、そういった人達によく見受けられるアンバランスさからは遥かに遠い。

 店員がグラスを四つ運んできた。消えたままのモニター、黙りこくった四人、コードが巻かれたままのマイク。さぞや異様な光景であったろう。

「先ほどの話ですけど」咳をしてからそう言ったのだが、声が少し嗄れてしまった。「私が殺されたら犯人はA、という言葉は詩織さん自身が言ったのですね」
 島田さんと陽子さんは同時に頷いた。
「僕達は何度もその言葉を聞きました。彼女の部屋には遺書みたいなメモまで残されていました。詩織はそうまでしてAのことを言い遺そうとしていたんです。それなのに、僕達は何もできないままで……。警察にも相談したのに警察は何もしてくれませんでした。それで結局詩織は殺されてしまったんです……。今は僕達だって怖いんです。今度は僕達の番かもしれないんです」

「犯人」が警察だというのはそういう意味だったのか。相談したにも拘らず、対応してくれなかった。ストーカーを取り締まる法律はこの時点では日本に存在しない。何かと言えば民事不介入を言い立てる警察のことだ、取り合わなかったのも頷ける気はした。
 だがそれと同時に、取材をしていたときに感じた詩織さんの友人達の頑なさが朧気ながら分かったような気がした。殺されるかも知れない、という恐怖すら彼らは感じていたのだ。私は殺される、と言っていた詩織さんが実際に殺され、しかも警察が取り合ってくれないことは詩織さんの件で証明済みだ。カラオケボックスに来るまでの島田さん達の警戒ぶりも腑に落ちた。

私は手真似で藤本記者にメモ取りを頼んだ。聞き手に専念したかった。もともと私自身はあまりメモは取らない。テープレコーダーも使わない。氏名、住所、数字、センテンスなどの重要な部分のみペンを使う。集中して聞くこと、会話をすることが大切と信じているからだ。相手の話を聞き、表情を窺い、真偽を判断しながら同時に長大なメモを取るなどという神業は私には出来ない。しかしこの長い長いインタビューは、藤本記者のおかげで正確なメモが残されることになった。
「一体、Aっていうのは何者なんですか」
「それが分からないんです。何をしているのかも、どこにいるのかも。いや……」
 島田さんは手帳を取り出した。私は訝しい思いでそれを見ていた。手帳を繰った島田さんは続けた。
「池袋の方に住んでいるみたいです。東口です。詩織もそこには行ったことがあるんですが、仕事すら分からないんです」

コロモが弾ける音と、ゴマ油の匂いが漂う細長い店内。二人は座敷のテーブルを挟んで向かい合った。水を向ける島田さんに、詩織さんはギョッとするようなことを言い出した。
「私、殺されるかもしれない」
 詩織さんはその言葉を、まるでこの日私達に話をする島田さんのように真剣な表情で切り出した。そして島田さんは、この日の私のような思いでその言葉を聞いた。
「何言ってるんだ、こいつ」と思ったのだ。ドラマの主人公か悲劇のヒロインにでもなったつもりか。もしかしたらちょっとおかしくなってしまったんじゃないか、と疑念さえ感じる島田さんに、詩織さんはこう言った。
「いいからこの名前をメモしておいて。私が急に死んだり殺されたりしたら、犯人はコイツだから」

事件から遡ること七ヶ月。この時の詩織さんが、いったいどこまで本気で自分の運命に不安を覚えていたのか今となっては分からない。だが、島田さんはこの日から「運命の日」を迎えるまで、何度となく詩織さんから相談を受けることになる。そして彼は、すべてが恐ろしいほど正確に、詩織さんの予測通りに進んでいくのを目の当たりにすることになる──。
 * * *
 後編では、現場で張り込みながらも犯人を逮捕しない捜査員と現場記者の攻防。事件解決かスクープか、葛藤する記者がとった行動で事件が動き始める。

桶川ストーカー事件国賠訴訟を支援する会 http://okegawa-support.la.coocan.jp/

2023/02/03 00:21
スクラップ
 埼玉県桶川市で1999年10月に起きた「桶川ストーカー殺人事件」の被害者遺族が、県警の捜査怠慢があったとして県に損害賠償を求めた民事裁判の記録を、さいたま地裁が廃棄していたことがわかった。事件はストーカー規制法制定のきっかけになったが、同地裁は「保存期間の満了」を理由に2012年2月に廃棄したという。
 事件では、女子大学生の猪野詩織さん(当時21歳)が刺殺され、元交際相手の知人らの有罪判決が確定。00年にはストーカー行為を明確に禁じる同法が成立した。事件前の警察の不適切な対応も問題となり、両親が起こした民事裁判は、03年に同地裁が県に550万円の賠償を命じ、06年に最高裁で判決が確定した。
さいたま地方裁判所
 最高裁は民事裁判記録の保存を原則5年とする一方、史料的価値が高いものは事実上の永久保存(特別保存)とするよう各裁判所に求めている。同地裁は桶川の事件の民事裁判記録を特別保存の対象外としていた。判決文は保管しているという。

この裁判の判決が、去る平成15年2月26日にさいたま地方裁判所から下されました。 内容は、全く信じられないものでありました。 埼玉県警上尾署のこの事件で、私たちが助けを求めていたにもかかわらず、怠慢捜査、無捜査を行った直接の担当警察官は、既に行われた刑事裁判の中で有罪判決が下され懲戒免職処分となっています。
このような事実がある中、判決内容の要旨は、
警察の捜査懈怠の違法性はあり、娘が名誉毀損の被害を受け、さらに被害を受けることが客観的に認められたのに、警察が適正な捜査をして市民を犯罪者から守ってくれる期待・信頼を、捜査懈怠等により侵害した事による慰謝料が認められるので被告埼玉県(警察)は、原告(被害者)に慰謝料500万円の支払いを命ずる。
但し、警察の捜査懈怠等と娘の死亡との間には、相当因果関係はない。 として、この裁判で私たちの訴えてきた本質は、裁判所の警察擁護の方針の下に掻き消されてしまいました。
 娘は、私たちは、ストーカー達の名誉毀損行為のみを警察に訴えてきたのではありません。様々な被害を受け、娘は、自分と家族を心配して、身内に何をされるか分からない危機感と恐怖感を抱き、犯人達から家族を助けて欲しいと警察に救いの手を求めに行ったのです。極めて大きな信頼と期待を抱きながら何度も足を運んだのです。
 しかし、警察が行ったことは、怠慢捜査と無捜査でありました。その結果が、娘の殺害に繋がってしまったことは、誰が考えても明確なのであります。それを裁判官は、警察の捜査怠慢等と娘殺害の因果関係はないと言いますが、一般国民は信じられるのでしょうか。何故か、裏の別の意図が、隠されているとしか考えられません。警察がこの稀なケースの国賠で負けるような事があると、第二、第三に繋がるとすれば、被害者の言い分は、絶対に認められない事なのです。


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