朝なんて来なければいいのに

朝になったら君はまた

私がアイロンをかけたシャツを着て

私がプレゼントしたネクタイを締めて

「いってきます」と笑顔で私に手を振って

あの女の元へ向かうのだろう

そんな朝など来なければいいのだ

だから私はこうして

私がアイロンを放置してシャツを燃やし

私がプレゼントしたネクタイで寝ている君の首を絞め

「一緒に行こう」と笑顔で君にキスをして

共にあの世へ向かう覚悟で




カーテン越しの朝日が眩しくて 目をあける


明るさになれない視界も

横たわる病院のベッドも

全身に巻かれた包帯も

見知らぬ天井も

何もかも真っ白だ


また私だけ朝を迎えてしまった


私がアイロンをかけたシャツを着て

私がプレゼントしたネクタイを締めた君が

「いってきます」の笑顔をくれない世界ならもう


朝なんて来なければいいのに



〈終〉

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