代々木上原の小学生
この間、代々木上原にある日本最大のモスク、東京ジャーミイへ行った。
イスラム教徒ではない私だが神秘的でかしこまった雰囲気はとても好きで、よく足を運んではモスクの見学と施設内のハラールショップに入りお土産を買う。
その日もトルコ産オリーブオイル入りボディクリーム(世界一香りがいい)とよくわからないトルコ菓子を買い、施設の大理石のベンチで休憩していた。
そこへとても品のいい、おそらくこの周辺に住む納税額が私の数十倍はあるような中年男性が通りかかった。
ここ代々木上原は芸能人が住むと噂の高級住宅街なので何も驚くことはない。
次の瞬間である。
おそらく、その男性の息子であろう小学生くらいの男の子が父親、いやダディを呼びながら走ってゆく。
「パパ待ってよ」
右手にはApple Watch スマホはカメラの数からするにおそらくiPhone14Pro 帽子はNewEraのキャップにPatagoniaのボアジャケット、靴はNikeのAirMaxときた。
負けである。完膚なきまでの敗北。世帯所得という現世最強のパンチにノックアウトした瞬間である。
かつて近所のジャスコで買ってもらったジャージに身を包み、プーマのビリビリ財布を中3まで使ってた私とは世界が違う。このモスクのように彼からは気品のある異国の雰囲気を醸し出していた。
しかしここ、高級住宅街の代々木上原では私こそ異教徒、異世界からの住人である。
そうして私はハラールショップの袋を抱えすごすごと帰路に着いた。