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カツカレー

ある日、中国人の友だちと新大久保に出かけた。

彼は日本語学校に通っていて、まだ来日して数ヶ月といったところ。基本は英語で話し、たまに片言の日本語で会話する。

夕方に近づいた頃、中国人の彼が「この辺りで美味しいカレーが食べられるんだけど行かない?」とのこと。

ほー、新大久保でカレーとは。
新大久保といえば東京最大のコリアンタウンで右も左も唐辛子いっぱいで、気を抜けばしり穴を持っていかれるような場所。
腹も多少空いてきたので快く彼の提案を受け入れる。


ほんの少し歩き、ついたのは駅すぐのカレー屋
外観はいたって普通の店構え。いうところの日本カレーが食べられるCoCo壱みたいな店だ。
われわれ日本人からすればなんともないカレー屋だが、彼からしてみれば異国の食べ物。そう考えているうちに彼は少し興奮気味に店内へと入っていき、私もついていった。


入店してびっくり、店主と思しき男性はこのジャパンカレーには似つかわしくない、本場インドorバングラデシュ系のおじさんではないか。
インド人全無視カレーライスは聞いたことあるが、これではインド人直視カレーライスではないか。
面食らっているうちに中国人の彼はその店主と談笑ののち席についた。

中国人の彼はカツカレーが好きらしく、私も同じ注文にした。
曰く、日本で食べた物の中で一番美味しいとのこと。

しばらくして運ばれてきたカツカレーはいたって普通の見た目。味も普通に美味しくこれと言って目新しさもなかった。

「いやー日本のカレーは本当に美味しいよ、こんなに美味しいカレーは上海に行っても食べれれないね」
本国上海ではギターのインストラクターをやっていたという彼は、トンカツに大量の卓上スパイスをかけながら、日本の食べ物事情がいかに優れていることを教えてくれた。(同時に習◯平の悪口も)

そこへ店主のインド人の店主が割って入る

「君たち、カレーはどこの食べ物か知っているかい」
カレーはインドでしょう。アジア人の我々はそう答える

「いや違うね!これは小麦粉がたくさん入っているんだ、こんなの俺の知っているカレーじゃないね!」

それもそうだ。確かにここは日本のど真ん中東京。いくら韓国人の多い新大久保といえど、味の好みは日本風。

「だけども美味しいだろう?俺が作ってんだからさ」

店主の自信満々の口ぶりも頷ける。
スパイシーなルウに熱々の白ごはん。揚げたてサクサクのトンカツが乗ってるんだからこれはもう嫌いな日本人は居ないだろう。
そして意外にも中国出身の彼の舌にも合うらしい。

インドで生まれたカレー。植民地時代にイギリス料理となり日本へ伝来。洋食店でジャイアンツ選手が考案したカツカレーが今、インド人の手によって作られ、中国人の彼と日本人の私のもとへ運ばれる。そしてここは新大久保、東京のコリアンタウン。

グローバリゼーションが起こしたイノベーションは幾つもあるが、食文化もこう逆輸入の形で私に還ってきた。

世界に感謝。オツカレーカツカレー。











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