りょうのはなし/Ep.1 from木の葉隠れの里🇺🇸
私は大学の最初の1年間、国際寮で生活をした。
大学に寮はいくつかあって、国際寮はひとつだけ。
入学前に希望の寮を第三希望まで書き、大学に提出しなければならなかった。
留学願望があり、日常的に英語を使って過ごしたかった私は、もちろん国際寮を第一希望に。
それも必ずしも叶えられるわけではなかったので、国際寮に決まった時は嬉しかった。
しかし第二関門があった。
国際寮には"ユニット"というものがある。
共同スペースのある大きな部屋に、一人ずつ個室が8つ集まったものがユニット。
間取りはこんな感じ。
共同スペースには椅子や机、ホワイトボード、水道、冷蔵庫などがある。
国際寮とはいうものの、大きく分けて日本人ユニットと国際ユニットの二つがあって、これは字のまま日本人だけのユニットor留学生が少なくとも一人入るユニットに振り分けられる。
寮の希望を提出する時に、絶対に国際ユニットがいい!という旨を書いたのだけど、実際は入寮日まで分からなかった。
日本人ユニットだとしたら、国際寮に入る意味ないやん…
そんな不安を抱え迎えた入寮日。
ユニットには必ず"RA(Resident Assistant)"、いわゆる先輩の残寮生がいて、入寮日には担当ユニットのRAが新入生の寮生を寮で迎え入れた。
「5階のユニットのRAしてる、優です!よろしく!ほないこか!」
そう言ってエレベーターに連れられ、5階のボタンを押した。
〔ドアが閉まります。Door closing.〕
うわぁ。国際的だぁ。
国際寮に住むんだ、ってじわじわと実感が湧いてきた。
〔5階です。5th floor.〕
ドアが開いた。
目の前を白人が何やら言いながら走って通り過ぎていった。
彼がまだエレベーターに乗ったままの私たちの前に戻ってきた。
こちらを見ながら、両の手のひらを水平にして手裏剣を何枚も投げるような動作をしている。
唇はすぼめられ、額にはナルトの木の葉マークが手書きで書かれた透明の養生テープ。
うわぁ。国際的だぁ。
っていうより、
うわぁ。絵に描いたような白人アニメオタクだぁ。
「Hello〜」
「H,Hi」
「オレノ、ナマエハ、ウズマキブライアン!ヨロシクダッテバヨ!」
寮生活、なんだか面白くなりそうだってばよ。