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誰かを大切にできるのは、誰かから大切にされた人

「姉弟、仲がいいですね」

最近、よく言われるようになりました。
奈美が良太のことをnoteに書くようになってからです。

障害のあるきょうだいを持つ人は我慢してきたことが多くて、
障害のあるきょうだいのことを嫌いになったり、仲が悪くなってしまう人も多いのに、
どうしてですか?と聞かれる機会も増えてきました。

確かに奈美と良太は仲がいい。
でもそれを、そこまで特別なことだとは言われるまで思っていませんでした。 
なぜ2人の仲がいいのか、改めてこの機会にその理由について考えてみることにしました。

私の大失敗

奈美が幼稚園生の頃、とてもショックな出来事がありました。

良太を抱っこして、奈美の手を引き一緒にお買い物に行く途中。
奈美はつまずいて転び、大泣きをしてしまいました。
その瞬間、私の口から咄嗟に出た言葉は、

「早く立ちなさい!」

そう言われた奈美は、さらに大泣き。
泣きっ面にハチとは、きっとこういう状態のことをいうのだろうと思った。
そして奈美は私にこう言いました。

「ママは奈美ちゃんのことが嫌いでしょ。好きなのは良太だけでしょ」

私は自分の耳を疑いました。
奈美ちゃんが嫌い?いない方がいい?
こんなに大好きなのに・・・・・・なぜ?
私の頭の中は真っ白になっていました。

どうしてそんなふうに思うのか、私には全く想像がつかなかったからです。
動揺しながらも必死で冷静を装いつつ、奈美に聞いてみると、
全く予想もしない答えが返ってきました。

「だって、ママは良太が転んだら大丈夫?ってやさしく言うけど、奈美ちゃんが転んだら、早く立ちなさいって怒って言うでしょ」

頭を岩石で殴られたくらいの衝撃でした。

2人のことを同じだけ大好きなのに。
奈美のことが嫌いだなんて思うはずもないのに。

私は無意識に、障害があって成長も遅く、手のかかる良太にばかりに目を向けていたのです。
知らず知らずのうちに、聞き分けのいい奈美に安心しきっていて、そんな思いをしているなんて全く気付いていなかったのです。

「ごめんね。ママは奈美ちゃんのことが大好きなんだけど、良太を守れる強い子になってほしかっただけなの。悲しかったよね。ごめんね。」

どれだけ寂しい思いをさせてきたんだろう。どれだけ我慢をさせてきたんだろう。
私は今でも、あの時の奈美の気持ちを思うと、自分のことが本当に情けなく、悲しい気持ちで涙が出そうになります。


大げさくらいでちょうどいい

それから、私は決めました。
あなたのことが大好きだという思いを奈美に、わかるように伝えようと。
絶対にちゃんと感じてもらえるように、かなりのオーバーリアクションで表現しようと思いました。

とはいえ、今までそんなふうにやったことがないので、いきなりやろうとしても照れくさくて
なかなかできませんでした。
頭ではわかっていても素直に行動できないという、大人とは厄介なものだなとその時思いました。

そこで私が見出したのは、女優になるという作戦です。
アイラブユーといってどこでもかしこでもハグをするアメリカ人のママになりきること。
事あるごとに抱きしめ、「大好き」はしょっちゅう声に出して言いました。

それが大成功。

それから奈美は良太に優しくするようになりました。2人で仲良く遊ぶようになりました。

それが今もずっと続いています。

大切な気持ちは、オーバーリアクションくらいでようやく、やっと伝わるものでした。


人を大切にできるのは、人から大切にされた人

奈美にも良太にも、姉弟なんだから仲良くしなさいとは、1度も言ったことがありません。

奈美と良太の仲のよさは「仲良くしなさい」と言われたからではなく、
自分は大切に思われている、愛されていると、それぞれが感じていたからだと思います。

気がつけば、奈美は良太のことが大好きで、良太は奈美のことが大好きで。
お互いがお互いのことを大切に、支え合う姉弟になっていました。

人は、人から大切にされると、人を大切にできる人になるんだ。

奈美と良太から教えてもらいました。


家族だからちゃんと伝えたい思い

もしあの時、奈美が私に泣いて訴えてくれなかったら、私は奈美に寂しい思いをさせ続けていたのかもしれません。
奈美は良太のことを嫌いなまま生きていたのかもしれません。

2人のことが大好き、そんなのわが子だから当然。言わなくても伝わっている、家族だから当たり前。私は無意識に、勝手にそう思い込んでいたのでした。

でも本当はそうではなかったのです。

1番近くにいる大切な存在だからこそ、ちゃんと伝えなければいけまけん。

だから私は今も、伝えたい気持ちは必ず大げさくらいにして伝えています。
「伝わっているはず」ではなく「ぜったいに伝わっている」と確信できるくらいに。

大切な気持ちは、それくらいでようやく伝わるものなのかも知れません。

とかなんとか、偉そうに書き連ねましたが、姉弟の仲の良さは私がそうしてほしいと努力した賜物ではなく、あの時、奈美の泣きながらの訴えが功を奏したものでした。

あの時の幼い奈美にもう1度、ありがとうを言いたいと思います。

素敵な写真はすべて、フォトグラファー 別所隆弘さんが撮影してくださったものです。私たち家族の宝物。

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