ゴッドハンドに出会ってしまった
数年間通い続けた美容室から、友人の紹介で別のところに通うようになった。
上品で、服のセンスもいい、もちろん、髪型もとても素敵な友人。近くのステキなタワーマンションの住民。雲の上に住んでいる。
ある時、美容室はどこに行っているの?と尋ねた。
すると、以前住んでいた駅の方まで、わざわざ通っているのだという(といっても、そんなに遠くないけど)。
へー、わざわざ行っているのか、と感心した。
「キャラが濃い美容師さんだから、人によって、合う合わないはあるんだけど。でも腕は確かなの」
そして、結構キツいことを言う人だから、びっくりしないでね、としきりに言う。
その当時、私自身も5年くらい、同じ美容室に通っていた。これといって不満はなかったから、美容室を変えるつもりはなかった。
ところが、数ヶ月後、ひょんなことで、その美容室に足を運ぶことになった。
隣の市に住んでいる別の友人がいる。
ある時、その彼女がイメチェンをしたいと言う。
そこで、髪型を変えるなら、お勧めの美容師さんを聞いたよ、とまだ自分では行ったことのない美容室を話題にした。
思いのほか乗り気だったので、それならば私も一度カットをお願いしてみよう、と2人で一緒に行くことにした。
あれから半年。
2人一緒に行ったのは一度きりだった。
でも、わたしはそれ以来、定期的にその美容室に通うようになった。5年以上通っていた、お気に入りだった美容室から、あっさり乗り換えてしまった。辛口という、友人の評判も気にならなかった。
2回目に行った時に、美容師さんに「最長で、どれくらい行かなくても良いですか?」と質問してみた。
「ショートでも、3ヶ月は持ちますよ」との回答だった。髪が伸びることを想定して切っているから、持ちがいいと評判らしい。
さすがに、わたしは3ヶ月経つと前髪が伸びすぎて重くなるので、その前に切りたくなってしまうけど。
ゴッドハンドに出会ってしまった。
多分わたしも、紹介してくれた友人と同じく、ここに通い続けるだろう。
副業全盛期の今、誰もが一つのことだけでは生きていけない時代になった。
その一方で、一つのことだけで生きられる人の価値を感じている。