人は環境が変わると髪を切るという話
私はもうかれこれ20年以上髪を伸ばしています。
いわゆるスーパーロングという腰までの長さで、しかも癖っ毛なので勝手にお蝶夫人みたいな巻毛になるという。長い時は重さで上はまっすぐ、毛先は縦ロールなのでお手入れも意外に楽で仕事中は上の方でお団子にしておけば邪魔にもなりません。
切るのは、あまりに毛先が傷んでいる時だけ。
冬の時期はマフラーを巻くのが大好きなのですが、髪がボサボサになってしまうのだけはずっと嫌いでした。
失恋をすると髪を切るといいます。急な環境の変化を一新するためとかなんとかいいますが、実際は理由なんてものはなく「ただ切りたくなっただけ」が正解なのでしょう。
でもやっぱり人は環境が変わると髪を切るのです。
今日、髪をショートボブに切ってきました。
義母が美容師で自宅の1階をサロンにしているので、うちの家族はみんな美容室へ行ったことがありません。今日も義母にお願いしてカットを。一応後ろに長女がついてアレンジに口を出していました(笑)
数十年のぶりの短い髪はやっぱりとても軽いです。
でも短くなった髪を見て切なさを感じる。夫が愛した私の長い髪。短い髪も似合ってるよと頭を撫でる。
昨日、1日がかりで病院へ行ってきました。
一昨日受けたPET-CTの結果が出て、映像を見せてもらいました。
右側に細長い鈍い光。それが何を意味するのか。
前回の診察で21日入院、22日に手術は決定していましたが術式についてはまだ未定のままだったのが、この映像で決定したのです。
「悪性が疑わしい、万全を期すために開腹手術にします」
「退院時期についてははっきりと決められません」
「手術中に病理検査をし、その結果で悪性が認められたら卵巣と子宮その周りの組織とリンパを全て切除します」
「良性でも経過により逆の卵巣に異常が出れば再手術は免れません」
「術後の病理検査で悪性と診断されることもあります」
「全ての臓器を今回切除するか決めてください」
…今日この場で?今?
考えたのはほんの数分。
「私はもう3人の子供も産んで、年齢的にももう必要ないと思います。」
「では全て切除しますね」
夫が「これは癌ですか?」と訊く。
「卵巣腫瘍の場合は手術をしないとわからないのです。術中の病理検査の結果はその後ご主人に告知します」
「結果次第では術後から抗がん剤治療など話をしましょう」
かくして、真相は夫へ託されたのでした。
婦人科系の告知はゆるゆると順を追ってなされるものだと知りました。
その場ではショックを受けることもなく、泣くこともなく「よろしくお願いします」と笑顔で言いました。
私の卵巣腫瘍は長さが20cmを越えているため、おへその上10cmくらいから下へ長く切ることになるそうです。
それだけ長いと術後痛そうだなぁ。退院も年明けになるかも。
帰りの車の中で「私のお腹の中の子宮がなくなったら、空っぽな部分は何で埋まるんだろうね」と夫に質問したあと、ぽろぽろと涙が出てきました。
まだ病気の真相への実感は湧かない。
そういえば、初回から腫瘍について話をされていたけど、こんなことになるとは思ってもいなかったのです。
今、私の中にあるのは手術の恐怖と、家族の心配だけ。
髪を切ったのは、もちろん入院に邪魔になるからだけど、これから治療をがんばるんだと誓う意思表明でもある。
あとキレイにマフラーを巻けるようになって複雑だけど嬉しいと思う。
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