ブラジルへの修行の旅③目に見えないサポーター現る
ブラジルの師匠の家に着いて最初の夜、そこは標高1600Mの山の中。南半球にあるブラジルの1月は季節は日本と逆の夏。周囲にはほかに明かりもなく見上げれば満天の星で天の川もきれいにみえる。はあ、、それにしても長い旅だった。メキシコとペルーに行ったことはあるけれどブラジルはさらに遠い国。しかも今回は旅行ではない。
夕飯の後、師匠の奥様がさりげなく「主人はね、毎朝欠かさず日の出前に起きるのよ」特に師匠は私に何も言わないけど、気になって日の出時間を調べてみた。(5時前かあ、、そんなに早く起きて何をしているんだろう)一応目覚ましをかけてベッドに入ったもののなんだか気持ちが高ぶって寝付けない。
山の師匠の家は3階建てで私が借りている部屋はトイレとシャワー付きで2階にある。師匠の書斎と寝室は3階。1階から3階までは家の中央のダイニング横から大きな吹きぬけの階段で繋がっている。山の夜明け前は暗闇と静寂の世界。結局目覚ましが鳴る前に起きた私は、足音を立てないように一歩ずつ手摺につかまりながら真っ暗な階段を上っていった。そして師匠の書斎をそっとガラス越しに覗きこんだ。
暗闇の中で椅子に誰か座っている。師匠だ!そしてよく見ると隣にもう一つ椅子が同じ方向に向けて並べてある。(これって私のため?ここに座れという事なんだろうか、、)戸惑いながら部屋に入り、音をたてないように静かにその椅子に座ってはみたものの、さて何をしていいのかわからない。師匠は私が来たことに気付かないのか(いや、気付いていないはずはない)軽く頭を下げ両手をお腹の前で組んだまま微動だにしない。息すらしていないかのようである。
師匠と私を山の暗闇と静寂そして凛とした空気が包み込む。まるで別次元にいるかのような不思議な空間だった。その時私は背後に何か特別な気配を感じた(誰かいる!しかもひとりじゃない)うまく言葉では表現できないが、とても大きな気高い氣(エネルギー)が私たちを見つめているようである。そして何故か自然に涙が溢れてきた。私は目には見えない確かな存在たちをからだで感じていた。
どのくらい時間がたったのだろう。ふと我に返り気が付くとあたりはうっすらと明るくなり、外では日の出を告げる鳥達がさえずっている。そして暗闇ではわからなかったがふと後ろを振り向くと、そこには道家の歴代の継承者である先人たちの顔写真が横一列にずらっと並んでいた。
さて氣功には大きく分けて動功と静功がある。太極拳や八卦掌、道(タオ)体操のように動きのあるものは動功、動かず静かに瞑想のようにするのが静功。静と動(陰と陽)どちらも大事な氣功である。氣功はその両方をやらなければいけない。そして氣功(静功)の行きつく先が三つの無(三無の世界)といわれている。道家の奥秘伝である。あの時師匠はその三無の世界にいたのだろうか。
その日から毎朝、道家仙宗 龍門派十二代目の継承者の師匠とそして見えない先人たちとの夜明け前の静功の修行は続いた。