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‘芸術の秋’ 企画「出張 おしゃべり美術館」
はじめまして。‘芸術の秋’ プロジェクトです。
‘芸術の秋’ プロジェクトは昨年の5月に立上げたプロジェクトです。
アートコミュニケーターとして、アートと人々をつなぐ活動としてきた私たちは、今までは美術館や展覧会場に来ていただいた方を対象に活動をしてきました。これからは私たちの方から出向いていくことも必要なのではないかと思い「出張」を考えました。
そしてご縁があって言語聴覚士の北風祐子氏、三島木愛氏の協力を経て、「アカシアの会」に活動の場を設けていただきました。
「アカシアの会」は失語症や構音障がいの方を対象にした「生きた会話を実践する場」です。失語症が何かもしらない私たちは、そこに参加しているみなさんと秋には何か一緒にイベントをしたいと、まず「失語症」について北風さんに基礎知識の講義をお願いしました。
昨年は、2回「アカシアの会」にお邪魔して「出張 おしゃべり美術館」を行いました。
「出張」で出向き、初めは画集を使い、2回目は、参加者のみなさんに興味を持って美術館に行きたくなるよう札幌国際芸術祭(SIAF2024)の参加作家の作品を印刷したものを使って鑑賞しました。過去2回の経験から参加者のみなさんにできるだけ本物に近い状態で作品を見ていただきたいと思い、今回は、北海道立近代美術館の鑑賞学習支援ツールを利用しました。選んだ作品は、展覧会会期直前の『道産子追憶之巻』です。
使用ツール:『道産子追憶之巻』複製シート・複製巻子の2点
事前準備では、まず鑑賞作品の選定をします。巻子の実物は約29mあり、そのどの部分を鑑賞するかを複製シートを見ながら考えます。鑑賞時間を考えて5枚ピックアップしました。
次にどのような流れで鑑賞を行うかを考えます。まずはピックアップしたシートで作品の一部を鑑賞し、次にシートで鑑賞した部分の巻子を見てもらう。最後に巻子全体(約14m)を広げて鑑賞する。
いよいよ本番です。
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まずは作品を見てもらいます。
そして、作品に描かれていることを話してもらいます。それをホワイトボードに書き留めます。
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みなさんの意見が出揃った頃に、シート①〜③の載っている部分だけ巻子を見せます。
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最後に巻物全体を見て、みなさんの意見を書き留めます。
最初は座っていたみなさんでしたが、巻子を展示すると近くに寄って熱心に鑑賞していました。
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会の最後に、今回の作品の簡単な紹介と7月9日から開催される展覧会のフライヤーを配布しました。
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みなさんから展示室はどこになりますか、と質問が出て関心があること実感しました。
今回は参加者5名、プロジェクトメンバー5名、言語聴覚士北風氏と三島木氏で行いました。
「出張 おしゃべり美術館」も今日で3回目。みなさんも慣れてくれたのでしょうか。以前は単語が多かったように思いますが、今回は文章で説明してくれた場面が多くありました。元々みなさんの注意力、観察眼は鋭いと感じていたので今回は多くのお話が聞けました。
(鑑賞用にシートは5枚用意していましたが、たくさんお話ししてくださったので鑑賞したのは3枚になりました)
またみなさんが巻子を熱心見てくださったので時間が過ぎてしまいました。
「アカシアの会」のみなさん、北風氏、三島木氏、ご協力ありがとうございました。
また機会があれば「出張 おしゃべり美術館」を開催したいと願っております。
北海道立近代美術館
【近美コレクション】浮世絵のヒロインたち 組物・続き絵から生まれるストーリー/岩橋英遠《道産子追憶之巻》/ウィズ・キッズ '24 なぜこのかたちなの?/アートギャラリー北海道 港の今昔 苫小牧市美術博物館コレクションから
会期:2024年7月9日から8月4日
(写真:inagaki・柏原・三宅 /文:はせがわ)