もうスウェーデンだけ特別じゃない
これまで強固なロックダウンを実施してきたイタリアやスペイン、そしてスウェーデンの隣国のノルウェーやデンマークも、今週以降、外出禁止令を緩和し、今後は最善の方法を模索しながら社会を徐々にオープンしていくことになる。
世界の中でもユニークだと注目を集めていたスウェーデンの対策と、他のヨーロッパ諸国の対策の差は今後は徐々に縮まっていくだろう。人々は少しずつ時間をかけて社会に戻り、感染を拡大させないように細心の注意を払って暮らしていくことになる。
スウェーデンと、徹底した社会隔離によりこれまで感染者数や死亡者数を低く抑えてきた他の国々との間に違いがあるとすれば、これらの国では今後は「閉じた社会の開き方」という難しい舵取りを行わなくていけない点だ。長い目でみると、その違いは結局は「時間」的なものに集約されてしまうものなのかもしれない。
スウェーデンのやり方が正しかったか間違っていたかということは、現時点ではもちろんわからないし、もっと時間が経って後で検証した時に仮に肯定的な見方ができたとしても、それは「正解」ではなく「スウェーデンのやり方もコロナの危機を乗り切るための選択肢の一つだった」くらいの評価が妥当なように思う。
この先1年も2年も影響が続くだろうと予想されるウイルスの前で勝者などいない。
さて、スウェーデンは、他国がこれからくぐり抜けないといけない道を先に通ってきただけだと仮定すれば、そこからなにか他の国にも役に立ちそうなラーニングはないのだろうか?
例えば、下記にあげた三つの点はつい1ヶ月くらい前であれば「スウェーデンのやっていることは狂気の沙汰としか思えない」と世界の人々は思っていただろうが、今後はどの国もこの方向に進まなくてはならない。ワクチンや治療薬ができるまで社会をロックダウンし続けることは困難なのだから。
いい知らせがあるとすれば、これらの点において、スウェーデンではこれまでこのやり方でなんとかまわってきたようだということだ。それは例えば、
1.保育園、幼稚園、小中学校を休校にしなかった点
幸いなことに新型コロナウイルスでは登校を続けた子どもたちが感染源となり、感染が爆発的に拡大したりはしていない。またスウェーデンの子どもたちは学校にはいっているが、一方おじいちゃんおばあちゃんとは会わない、高齢者とは距離をとるというルールをよく守っている。
他に比較するものがないので今のところはっきりとはわからないが、学校に通い続けることで子どもたちのメンタルが守られているとも言われている。そして学力も。
2.行政機関や企業は基本的に活動をやめなかった点
しかし、それにもかかわらず観光や小売業、レストランなどの飲食産業を中心として失業者や企業の倒産は拡大している。だたその影響は経済活動をすべて停止した状態と比べると低く抑えられていると試算されている。
3.個人には行動の自由がある点。
混雑した状況や他人との接触は避けるべきだが、高リスクグループとされスーパーにも行くなと要請されている高齢者も、散歩や屋外での運動はご自由に、というか逆に推奨されている。
自由に外出できることで身体機能の維持はもちろんのこと、精神状態にも好影響を与えている(はずだ)。
一方、以前も書いたがスウェーデンの対策がうまく機能しなかった点も、既にいくつも明らかになっている。一番大きな問題点は、高齢者住宅、高齢者介護施設での感染拡大を防げなかったことだ。これはスウェーデンの高い死亡者数の一因とも考えられている。
さて、ロックダウン緩和のための準備の一環として、例えば隣国デンマークでは先週から毎週30万人の規模のPCR検査が始まっている。
これがスウェーデンでは、昨夜インタビューに答えていたハレングレン社会担当大臣によると、先週実施できた検査数は2万4000だ。これまでに実施してきた検査数の合計でもEU27カ国のうちで人口あたりの検査率として後ろから数えて8番目という低いものだ。
ハレングレンによると、今は検査キットの数だけでなく実施する体制もようやく整ったので、5月半ばには週に10万人の検査を実施できるそうだ。
印象に残ったのは、検査の目的として彼女があげていたのが「今コロナ感染の疑いで医療や看護の現場を離れている職員に、感染していないという検査結果と共に、はやく現場に戻ってきてもらうこと」とした点だ。
なんのために検査するのか? それは私が安心したり心配したりするためじゃなくて、国や行政の役割をきちんと機能させるためだったのか、そうか、そうだったのか? そう言われれば当たり前か?……
いずれにせよ、社会の封鎖政策においても、PCR検査の数においても「スウェーデンだけ違うことやってる」という他国との差は、今後はどんどんなくなっていきそうな5月4日の月曜日の朝です。
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