全米50州カバーするには
日本酒をアメリカに輸出する際のゴールは、全米50州で商品を流通させることだ。
そのためには、ユタ州のような州政府がアルコールを専売している“コントロールステーツ”を除き、各州トップのディストリビューター(卸し会社)に商品取り扱いをしてもらうことが必要だ。
年間2千万ケースを出荷するカルフォルニア最大級のワイナリーは「各州ディストリビューターのトップ3社までとビジネスしないとダメだ」(幹部)と言う。州に1社だけだと配達できないアカウントが出てきてしまう。可能性のある全アカウントをカバーするためには、3重の流通網が必要というわけだ。
実際には、3社に同じ商品を紹介するわけにはいかないので、異なる商品ラインを紹介する。そのため、大手ワイナリーは同じジュース(ワインの中身)に対して何種類ものラベルを用意し、市場をくまなくカバーしているのだ。
日本酒の場合、今のところカリフォルニアやニューヨークなどの大市場については日系と米系ディストリビューター各1社でカバーし、フロリダ、ワシントン、ハワイ、コロラド、アリゾナなどの中堅市場は日系ディストリビューター1社でカバー。その他の州はアルコール免許を持った日系ディストリビューターがないので、米系でカバーすることになる。
ただし、プレミアム酒の需要がそれほどない南部や中西部では、意欲のある米系ディストリビューターを探すのが難しい場合がある。低価格の米国産酒の需要はあっても、高価な輸入酒を買いたい店は限られているからだ。
ワインとは違い、まだ全米カバーの対応をするほど機が熟していないのかもしれない。とはいえ、ラーメン・チェーンの全米展開を始め、日本食ブームを追い風に日本酒の人気も加速している。今後売上が伸びてくれば米系ディストリビューターを増やし、商品ラインも増やして対応することになるだろう。