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パン屋での嬉しいエピソード #part1
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今日は、パン屋での嬉しいエピソードということで、数回にわたりお客さまとのドラマをお伝えしていこうと思います。
私は、以前食パン専門店を経営し、毎日パンを焼き販売していました。
その食パンは、小麦粉ベースの食パンなのですが、玄米を20%、古代米を10%ほど混ぜ込んだ食パンでした。高齢者の多い街でしたので、地域のおじいちゃん、おばあちゃんに喜んでもらえるよう、商品開発をしてご提供していました。
玄米や古代米のお米の力で、食べるほどに身体の内側から健康的になって長生きをしてほしい、美味しいものを食べて家族の会話が増えればと願い毎日、食パンを焼いて販売していました。
とある日、30代くらいの女性にご来店いただきました。その女性は、定期的にご来店いただく常連さんで、いつものように「こんにちは!」と挨拶を交わして、いつもの食パンをお渡ししようとしました。
なんだか、いつもに比べ、元気がなさそうな感じがその表情から伺えたのですが、わたしの取り越し苦労かなと控えていました。
カウンター越しに食パンを袋に入れてお会計をしようとした時に、「すみませんが、、、」といつもに比べ寂しげな声で話始められました。
「食パンを箱か何かに入れてもらえませんか?」
と尋ねられました。最初意図がわからず
「赤い、かわいい箱ならご用意できますが」とお答えしたところ
「実は、ここの食パン、うちの母が大好きでいつも美味しい!と嬉しそうに食べていたんです。でも、先日亡くなって墓前にお供えをしたいと思って買いに来たんです。」
と話していただきました。
それをお聞きし倉庫から見合うような箱を探し出してお供え物としてお渡ししました。
「これで母も喜びます」
と、少し声に力が戻ったような感じを受けました。
その後、そのお客さまとは、しばらくお会いすることはなかったのですが、2年後くらいでしょうか、偶然にも再開の時が来ました。
それは、伊勢丹で催事出店していた時のことです。
搬入口の駐車場から食パンの入った番重を台車に数段重ねて運んでいたい時のこと。
「あの〜」
と背後から声をかけられました。振り向くと伊勢丹の服装した女性が。搬入の際に何か間違ったことをしたのかと頭をよぎりましたが、思いつくようなことはしていません。
で、その女性は続けて「数年前にお店に伺った時に、母の、、、」と偶然の再開に驚きました。
ちょうど、その方は伊勢丹に勤務されていて、たまたま私が通りがかった際に見つけて頂き、どうしてもあの時のお礼が言いたかったと。
そうやって人の記憶に残る食品をご提供できたこと。家族での会話やつながりに微力ながらも貢献できたこと。これは、商売としてだけで行動していては得られないものです。
本当に嬉しい出来事でした。