生理学 消化と吸収 後編


C.各栄養素の消化と吸収

 食事中には糖質、タンパク質、脂質、食物繊維、ビタミン、ミネラルなど多くの栄養素が含まれています。これらの栄養素の消化吸収過程を解説します。

1.糖質の消化と吸収

 糖質は単糖類、二糖類、多糖類、に分類されます。日常的に摂取する糖質は多糖類であり、そのままでは吸収できません。そのため生体内に入ると消化酵素によって単糖類まで分解され吸収されます。その過程を解説します。

a.オリゴ糖への分解
 日常的に摂取する糖質の大部分は、米や小麦に含まれるデンプンです。摂取されたデンプンは、唾液中のアミラーゼ膵液中のアミラーゼで化学的消化を受けます。
その結果・・・2〜10個の単糖からなるオリゴ糖へ分解されます。
※まだ吸収はできない!!

b.単糖類への分解
 オリゴ糖のほか、スクロース、ラクトース、マルトースなどの二糖類は、小腸の吸収上皮細胞の絨毛表面にあるオリゴ糖分解酵素で、グルコース、フルクトース、ガラクトースなどの単糖類まで分解されます。

c.単糖類の吸収
 単糖類は、吸収上皮細胞により吸収されて血中に入ります。グルコースは主に肝臓、筋、脂肪細胞などに取り込まれますが、それらはインスリンによって制御されます。
 グルコースやガラクトースの吸収では、ナトリウムの水の吸収を伴います。このことを二次性能動輸送と言います。


糖質の化学的消化と吸収

2.タンパク質の消化と吸収

 タンパク質は多数のアミノ酸がペプチド結合した高分子化合物です。これからタンパク質の消化吸収過程を解説します。

a.胃での消化
 タンパク質の消化は、胃液中の消化酵素であるペプシンの働きで始まります。ペプシンは酸性の環境で初めて活性を持ちます。

b.小腸での消化
 酸性の粥上液が十二指腸に送られアルカリ性の膵液などで中和されると、ペプシンの働きは止まります。代わりに、膵液中のトリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、カルボキシぺプチターゼA、カルボキシペプチターゼBといったタンパク質分解酵素が働き始め、消化が進みます。
その結果・・・ペプチドアミノ酸ができます。

c.吸収上皮細胞での消化
 摂取されたタンパク質は最終的にアミノ酸となって吸収され、絨毛の毛細血管へ入り門脈を経由して運ばれます。

タンパク質の化学的消化と吸収

3.脂質の消化と吸収

a.小腸での分解
 食物に含まれる脂質の主成分であるトリグリセリドは、膵液中の脂質分解酵素であるリパーゼの作用を受けて、モノグリセリドと2つの脂肪酸へ分解されます。そして、胆汁中の胆汁酸の作用を受けて、ミセルを形成し吸収上皮細胞内へ取り込まれます。

b.吸収上皮細胞でもカイロミクロンの形成と吸収
 吸収上皮細胞内で取り込まれたトリグリセリドの消化産物は、再びトリグリセリドとなり、脂溶性ビタミンなどの他の脂質と一緒にカイロミクロンと呼ばれるリポタンパク質の一種を形成します。
 カイロミクロンは絨毛内へ放出され、そこからリンパ管へ入ります。リンパ液とともに乳び層ー胸管を経て最終的に左静脈角から静脈に流入します。

脂質の化学的消化と吸収


カイロミクロン

4.食物繊維の吸収と代謝

 食物繊維は小腸ではほとんど消化されません。大腸へそのまま入り、腸内細菌の分解作用を受けて、短鎖脂肪酸に変化し、大腸で吸収されます。

5.ビタミンの吸収

 脂溶性ビタミンは、他の脂質とともにカイロミクロンに含まれて吸収されます。水溶性ビタミンは、吸収上皮細胞内にある特異的な吸収機構を介して吸収されます。
・・・ビタミンB12は胃から分泌される内因子の助けを借りて回腸で吸収されます。

6.ミネラルの吸収

 カルシウム・・・小腸で吸収されます。生体内のカルシウムが不足すると、血中の活性化ビタミンDが増加し、吸収を促進します。
 鉄・・・ビタミンCは鉄に還元作用をもたらして小腸での吸収を助けます。

以上で解説は終了になります!
勉強頑張りましょう!



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