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(pmconf登壇資料・動画)プロダクトマネジメントと人間中心設計、デザイナーからPMへのキャリアシフト

念願のpmconf登壇

光栄にもプロダクトマネージャーカンファレンス2022で登壇させていただきました。4月にPMにロールシフトした際「いつか自分も発表できたらいいなぁ」と遠い目標に思っていたのですが、落ちても失うものなどない!と気合いで公募セッションに応募したところ、採択されました。

プレゼン1ヶ月くらい前からめちゃくちゃ緊張していました。そちらの体験記は別途記すとして、ここでは登壇スライドと文字起こしをします。誰かの役に立てば幸いです。


自己紹介

こんにちは。富士通の吉川と申します。

本日はプロダクトマネジメントと人間中心設計、デザイナーからPMへのキャリアシフト、というタイトルでお話しさせていただきます。

私は富士通株式会社のデザインセンターというところに所属しています。200名程度のインハウスデザイン組織です。

私はながらくクライアントワーク中心のUXデザイナーをやっておりましたが、現在は社内向けアプリケーション開発チームのプロダクトマネージャーをやっております。12名のチームです。

どういったアプリケーションかと申しますと、弊社の営業部門向けの仮説提案アプリというものです。お客様への提案をまとめ上げていくようなアプリケーションを内製チームで開発しております。

本日おはなしすること

本日お話しすることは主に2つございます。

1つはクライアントワーク中心のデザイナー/人間中心設計専門家だった私が、どのように自社プロダクトのプロダクトマネージャーになっていったか、もう1つは現在のプロダクトマネジメントの中でどのように人間中心設計を活用しているのか、についてです。

プロダクト開発にもっとコミットしていきたいデザイナーの方や、デザイナーからプロダクトマネージャーのキャリアに興味がある方に参考になれば幸いです。よろしくお願いいたします。

人間中心設計とは

はじめに人間中心設計ですが、厳密に言うと ISOやJISの規格で記述されています。ですがこのプレゼンではいわゆる UXデザインと捉えていただいて大きな問題はないと思います。

要はユーザーの行動や心理状態などを調査して、ニーズや要求事項を把握しましょう。それに基づいてプロダクトを作りましょう。そしてプロダクトを作ったら本当にニーズや要求事項を満たしているか確認しましょう。もし満たしていなければ(適切なフェーズに戻って)このサイクルをぐるぐる回していこう、という考え方です。(注釈:ここで言うプロダクトとは、リリース前の試作品も含みます。)

いわゆるUXデザインやデザインプロセスと思っていただいても大きな問題ないかなと思います。

デザイナーからプロダクトマネージャーになるまで

では1つ目、デザイナーからプロダクトマネージャーになるまでについてお話しします。

こちらに大まかですが、私がデザイナーからプロダクトマネージャーになっていくまでのフェーズを書いています。大きく3つございます。

クライアントワークのデザイナー時代

もともとクライアントワーク中心のデザイナーということで、富士通のお客様のシステムインテグレーションのUIUXデザインやサービスデザインを担当しておりました。

いろんな業種のプロジェクトを経験し、私の場合は金融業、製造業、保険、証券業が多かったです。

ただクライアントワークにはつきものですが、やはりデザイナーへの期待値調整に都度苦労したりもしました。大きな会社ですので3ヶ月とか半年ごとにプロジェクトメンバーが変わり、そのたびに(お客さまや担当SEらと)調整をする必要があったということです。

あとは戦略や企画に踏み込みにくかったり、当然ですが納品後に関わることが難しいということがありました。

アジャイルチームのデザイナー時代

大きな転機になったのが真ん中、アジャイルチームのデザイナーとして活動をしたことです。

ここではお客さまと一緒にアジャイル開発の武者修行に行きました。これは東京証券取引所様の新規事業開発プロジェクトだったのですが、写真にあるとおりPivotal Labs(現在はVMware Tanzu Labs)というところに一緒に武者修行にいきました。

そこで本格的なアジャイル開発に出会い、私はとても感動しました。 デザインのプロセスと開発のプロセスが完全に接続されていて全然無駄がないことがわかり、もともと持っていた課題感がかなり解消されてると感じました。

アジャイル開発の認識がここで一気に変わりました。

Pivotal Labsではコンサルタントが実際に開発チームに入り、ペアワークをしながら教えてくれます。体制としてデザイナー、デベロッパー、そしてプロダクトマネージャーの3つのロールでプロダクトを開発していくという形でした。

当時私はデザイナーとして参画していて、デザイナーのコンサルタントとお客様のデザイナーの3人で活動していたわけですが、同じチームのプロダクトマネージャーのコンサルタントが PMやUX界隈で著名な坂田一倫さんでした。なので私が初めて出会ったプロのPMというと坂田さんだったわけです。


デザイナー/アジャイルチーム作り担当時代

このプロジェクトには常駐で1年ほど携わっていましたが、その後はデザインセンターに戻りまして、先ほどご紹介した自社プロダクト開発チームに途中からジョインする形になりました。

そこでは本格的なアジャイル開発の経験があるのが自分だけの状態でしたので、それをチームにインストールしつつ私もデザイナーとして入り、チームとして成長していったということです。(Pivotal Labsでコンサルタントに教わったことを、今度は自分が教えていく番になったということです。)

現在は人数も4倍ぐらいになっており、チームも育ってきましたのでこのタイミングで自分はPMになりました。

人間中心のモノづくりを広げていくことでPMにたどりついた

というながれでPMになったわけですが、振り返ってみると私は人間中心のものづくりを広げていくことで結果的にPMにたどりついたと思います。

もともとは自分がデザイナーとして人間中心の活動をする。そこからそれをチームに広げ、プロダクト開発チームが人間中心になるようにしていく。そして今は人間中心のチームをもっと増やしたり、組織として大きくしていく活動をしています。一貫して人間中心のものづくりをどのように行っていくか、というところで取り組んでいきました。

何が言いたいかと申しますと、もし皆さんのなかに現在デザイナーをされていて、いずれPMになっていきたいと考えている方がいらっしゃいましたら、皆さんの持っている人間中心の考え方や、ユーザーに向き合いながらものを作っていくという姿勢、その価値はものすごく高いものだということです。

PMはたくさんの知識を必要としますし、いろんな方と話す必要があります。ただそのためにディベロッパーを2年間やってみようとか、本気で経営戦略を学ぼうとか、データサイエンスをガチで学ぼうとかいろんな考え方もあると思いますが、(全く異なる職種に転向するより)もともと持っている人間中心をベースに広げていくやり方もあるんじゃないかな、ということです。
(注釈:本プレゼンのタイトルがキャリアチェンジではなくキャリアシフトとしている理由です)


人間中心設計だけではプロダクト開発できない

これまでの流れで私もいろいろ学んできましたが、人間中心設計に関していうと、人間中心設計だけではプロダクトは開発できないということをすごく感じました。

というのも、人間中心設計やUXデザインの手法の中心は調査と評価なんですね。

ユーザーを調査しましょう、ユーザーはこんなこと言ってます、プロダクト評価したらこういう結果でした、というふうに調査と評価なんですね。なのでプロダクト開発の具体的なやり方は含んでいないんです。

でもそれは当たり前のことで、もともと人間中心設計は対象がソフトウェアであれハードウェアであれ、空間とか建築、またサービスであれ何にでも適用できる形で記載されているんですね。なので当然そこはないということです。

じゃあどういうふうにものを作るのかという部分について、私はアジャイル開発がガッツリ当てはまったということです。

ずっとインハウスのデザイン組織(デザイナー集団)でデザイン活動をしていたり、デザインファームに勤めながらクライアントにデザインサービスを提供していると、ややもするとデザインのプロセスとプロダクト開発のプロセスを混同する可能性もあるのかなと思っていて、そこは私はすごく反省して学びになったところがあります。

アジャイル開発との出会い

では具体的にどういったことがアジャイル開発に書かれていて人間中心設計に書かれていないかというと、いくつかあるんですけれども例えば1年後に何らかのサービスをリリースしましょうと決まっている場合、

チーム構成

どういうロールの人を集めれば良いか、それぞれの人のタスクってなんですかっていう話ですとか、

過ごし方/会議体

どういう過ごし方するか、1 週間の会議って何がありますか、誰が参加しますかという設定の仕方ですとか、

優先度

1年後のリリースの向けどういう順番で作っていきますかとか、

強いチームづくり

あとは私がとても感動したところですが、強いチーム作りということで、プロダクトを作っていく人たちがチームとして強くなって、自律的に成長できるようになるための考え方やエッセンスがアジャイル開発に入ってるんですね。そこが私はすごく参考になりました。

本日は細かくはお話ししませんがアジャイル開発をイテレーションと思ってる方は、それ以外にもいろんなエッセンスがあるのでぜひ参考にしてみてください。


プロダクトマネジメントにおける人間中心設計の活用

本日の2つ目、プロダクトマネジメントにおける人間中心設計についてお話しいたします。こちらが今私たちのチームで採用しているプロダクト開発のプロセスですが、仮説検証とアジャイル開発でものを作っていくということです。

不確実性が高いプロジェクトの場合、自分たちは何を作るべきなんだろう、または何を作ってはいけないんだろうということを探索しながらものを作っていく必要があるので、この仮説検証のプロセスが非常に大事になってきます。

で、人間中心設計どこに当てはまるかと言うと、この仮説検証の方に当てはまります。

仮説検証サイクル

具体的に仮説検証プロセスがどういうものかというと、4つぐらいに分けています。

検証仮説の設定

一番最初に検証すべき仮説を設定します。何を検証すべきなのかを決めるということです。

検証方法の立案・準備

2番目は検証するためにはどういうリサーチをしたらいいんだろうとか、どういう人に聞けばいいんだろうといった準備をします。

リサーチの実施

3番目はリサーチを実施するということで、インタビューであれば当日のモデレーション(進行役)したり、適切な聞き方をしていくということです。

仮説の検証

最後は仮説の検証で、そもそも最初に設定した仮説ってあってたんだっけ、ダメだったんだっけみたいなことをジャッジするという流れになるわけです。

仮説検証では人間中心設計の考え方がすごく活きます。特に真ん中の2つ、どういうリサーチしたらいいんだろうかと設計するところ、あとは当日の聞き方ですがやはりコツがあるんですね、誘導尋問しないようにするとか。アンケートをつくる場合もそうですが、そういったことに人間中心設計のスキルが活きます。

ただそれだけでは足りないところもあるのでそれは最後にお話ししたいと思います。

プロダクトマネジメントにおける人間中心設計の活用

ということで文字だけですが、プロダクトマネジメントにおける人間中心設計の活用ということで3つぐらいポイントあると思っています。

思いつき・思い込みだけでプロダクトを作ってしまうリスクを軽減できる

1つ目は、思いつきとか思い込みだけでプロダクトを作ってしまうリスクを軽減できるということです。もちろん思いつきや思い込みはものすごく大事なんですが、思いつき思い込みのまま作ってしまうというのは良くないんですね。
仮説検証するとユーザーと触れてる中でなんかちょっと違うなとか、自分の考えが間違っているとか早く気づけるというのがあります。

効果的・効率的なユーザーリサーチを実施できる

2つ目は、効果的・効率的なユーザーリサーチを実施できるということです。先ほどの話しましたけれども内容に合わせたリサーチ実施できるということです。

本当にユーザーの課題を解決できるのか解像度高く理解できる

3つ目は、本当にユーザーの課題を解決できるのか解像度高く理解できるということです。プロダクトを開発していくなかで、いろんなKPIやアクセスログなどを確認されると思いますが、なんでこうなってんだっけとか、なにが悪いんだっけとか、なんでユーザー増えないんだっけ、みたいな時にユーザーの目線から多分こうなんじゃないですかと説明することができるということです。このときユーザーはこう思ってますよ、ここで怖くてボタン押せないんですよ、みたいなことです。

リサーチの認識が変わった

ただですね、PMになっていく中でリサーチのへの認識が変わったっていう話なんですが、ここ皆さんに本日お伝えしたいと思ってるところです。

人間中心設計におけるリサーチ

わかりやすさのために乱暴に書いてるところもありますが、人間中心設計のおけるリサーチ、従来私がやっていたのはどちらかというとユーザー調査とプロダクトの評価なんですね。ですのでリサーチャーに求められることはリサーチのプロとして依頼に応じたリサーチを設計したり実施できるということだと思います。

リサーチ結果の活用に関しても、ユーザー中心のプロダクト開発のための提言と書いてますが、ユーザーはこういう行動をしてますよ、こういうニーズがありますよ、プロダクトはこういう評価でした、みたいなことをレポートするということです。

でゴールとしては、組織が人間中心活動を実施して高いUXを提供できる、というのがあるのかなと思います。

プロダクトマネジメントにおけるリサーチ

対しまして右側ですね、プロダクトマネジメントにおける、という言い方か適切かわかりませんが、現在やってるリサーチはそもそも視点が仮説検証なんですね。

ですのでリサーチャーに求められることは適切な手法を選ぶとか実施できることももちろん大切ですが、プロダクトのドメイン知識を持っていることや、プロダクトの状況を考慮した仮説を立てることができる、そしてそれを検証することが求められると思っています。

ですので、いま検証すべきものってこれかこれだよね、というのをチームと一緒に作って検証する、ということが求められます。

またリサーチ結果に関しても、提言というよりむしろプロダクト開発の意思決定にそのまま使えるものだとか、またはもう意思決定そのものですね。

AとBだったらAに行きましょう、Bに行っていきません、ということ。リサーチの結果すぐアクションが起こせる、というところまで含めているのかなと思います。

ですのでゴールとしてはプロダクトが失敗する確率を下げるということかなと考えています。

この対比にはいろんなご意見があると思いますが、私の認識が変わってきたということです。

まとめ

ということで、最後になりますが本日2つのことをお話しさせていただきました。

1つはデザイナーからプロダクトマネージャーへのシフトについて。ユーザー中心のものづくりをもっと組織として広げていきたい、そこにコミットしていきたい人にとってはお勧めのキャリアかなと思います。

当然デザインやデザインプロセスの知識だけではNGですので、プロダクトを作るということがどういうことなのか、ということも含め、新しく知識や経験を積んでいく必要があります。

 本日は細かくお話しませんでしたが、PMはいろんなメンバーと話していくことになりますのでお互いの信頼関係を作っていくことは非常に大切になります。

2つ目のプロダクトマネジメントにおける人間中心設計に関しては、仮説検証に役立つという話をさせていただきました。うまく実施することでユーザーの要求を満たすプロダクト開発に貢献するということです。

ただその心の構えとして、筋の良い仮説を出すということですね、プロダクトの意思決定に直結するリサーチを心がける、というのが大切だと思っています。

最後になりますが、本日いろいろお話ししましたが、私の原点は人間中心設計だと思っております。それはデザイナーであれPMであれ変わらないんですね。

人を理解して人が喜ぶものを作る、作ったものをユーザーが使って喜んでいる、役に立ってる、困りごとが解消できている、そういうシーンを実際に見届ける、目撃するところまでが自分の仕事だと思って、今後も取り組んでいきたいと思っています。

今日のお話に皆様の参考になるところがあれば幸いです。
本日はありがとうございました。


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