動物愛護エッセイ 『ソラちゃん色の花』 ~ 天国へ向けて果たした約束 ~
昨年、飼ってる小鳥が病気になり世話をしていました。その時間は不思議なくらいに穏やかで、心温まる時間でした。
「ソラ、日光浴は気持ちが良いかい?こんな晴れた日に、おまえと一緒に空を飛べたら楽しいだろうな」
天寿を全うした愛鳥たちとの思い出、心のふれあいをテーマに書かせていただきました。皆さんに明るく爽やか気持ちでご覧いただけるなら幸いです。
* 創作ポリシーにより亡くなった愛鳥の画像は載せておりません。今を生きる小鳥たちのカワイイ画像を楽しみながらご覧ください
* 最後の《あとがき》にだけ、ソラたちの画像を載せてあります。
『ソラちゃん色の花』
~ 天国へ向けて果たした約束 ~
小鳥を飼い始めた経緯
子供の頃を懐かしむことってありますよね。僕の小鳥の飼育は、幼少期を懐かしむところから始まりました。
《子供の頃に飼ってた文鳥、可愛かったな》
《あの子は賢かった。名前を呼べば すぐに僕の手に飛んで来たりして》
幼少期の楽しかった思い出の中に、小鳥がいました。最終的には毎日 頭に浮かぶくらい飼いたい思いが膨らんでいました。
インコを飼う決断
もう一度、小鳥を飼いたい。そして、もし飼うならセキセイインコを飼おうと思っていました。生前、祖母が飼っているのを見ていたので、その愛くるしさを知っていたのです。
ですが命ある動物。衝動買いは良くないですから、しばらく日を置いて我慢しました。数ヶ月は、飼いたい衝動を抑えて過ごしたと思います。
でも飼いたい思いは収まらず、逆に増すばかりで。休日の買物帰りにペット店に立ち寄ったりもしました。
そしてある時、決断しました。これだけ飼いたい思いが続くのなら最期まで責任を持って飼える。間違いない。
《セキセイインコを買おう》
決断した数日後、ペット店へ行きました。
ペット店にて
複合商業施設に入っているペット店。女性の店員さんが親切に飼育方法を教えてくれました。それを参考に、まずは飼育用具選びです。 鳥かご、餌入れ、水入れ容器。雛の時期の給餌用のスプーン、ケージの底に敷く藁。そして、もちろん栄養のある餌も選びました。
飼育用具を選んだ後、鳥の売場に向かいます。そこには文鳥やセキセイインコの他に、カナリアや十姉妹(ジュウシマツ)、コザクラインコ、大型インコのヨウムなどがいて賑やかでした。
《コンニチハ~》
《オハヨ!》
インコは、器用にお喋りする子もいますからね。
初めての御対面
セキセイインコの雛が入っていたのは、鳥かごではなく透明の飼育ケースでした。その中に2羽のセキセイインコが ちょこんと座っていました。
緑色の子と青色の子。 後に我が子のように可愛がることとなる愛鳥との御対面です。
店員さんが2羽を指差し明るい声で「どちらの子になさいます?」
問われて、しばらく思案しました。体格が良くて元気な子を選ぼうと2羽を見比べたのです。 飼うなら明るく元気な子を選びたいですからね。
雛を選ぶ時のポイントがあります。そのポイントをよく観察しました。
*骨格がしっかりしている。
*毛づやが良い。
*お尻の周りが汚れていない。
2羽のどちらも、元気そうでしたが。よく観察すると緑の子の方が体が大きくて、動きも力強く感じました。
「元気そうなので、緑の子にします」
決まれば一刻も早く家に連れて帰りたい。先ほど選んだ飼育用具と合わせて、早く会計を済まそう。
そう思ってレジの方へ振り向いた時に...
ジリジリ ジリ~
背中に感じたのです
まるでレーザービームのような熱い視線を。
視線の主は誰?ゆっくり振り向いたら、青色の子が つぶらな瞳で こちらを見上げていました。その時に気が付きました。
《あっ、そうか。この子は1人ぼっちになってしまうんだ...》
膨らむ想像
閉店後を想像しました。
《おそらく夜中のペット店は無人だから、真っ暗で静かだろう》
《暗がりの中、この子は心細くて怯えるに違いない》
更には
《買い手が、いつ決まるかも分からないぞ》
《買われるのは1週間後。いや、1ヶ月後かも知れない》
《そんなに長く寂しい日が続いたら、かわいそうだな...》
そして最後は
《辛い思いをさせるくらいなら、両方を連れて帰ろう》
そうです。予定とは異なり同情心から2羽を買い、想定していたよりも賑やかな僕の愛鳥生活が始まったのです。
明るく人懐っこいセキセイインコ
2羽を飼うことになり飼育生活は、賑やかになりました。ですが面倒という程ではありません。
2羽は仲が良くて、とても微笑ましかったですし、群れで生きるインコの習性もよく理解できたので。飼ってるうちに《これで良かったんだ》と思えるようになりました。
インコは好奇心が旺盛、人によく懐く。事前に本などで調べていた通り、毎日 陽気な鳴き声、コミカルな動きで楽しませてくれました。
名前に込める飼い主の思い
ペットを飼い始める時の楽しみの1つに《名付け》があります。皆さん、小鳥に限らずペットには かわいい名前や力強い名前を付けておられますよね。
一時、(人間の)我が子に不吉な名前を付けて騒がれた おバカな親がいましたが。まあ、そういう例は稀でしょう。たいてい名前にはポジティブな思いを込めるもの。
《元気に大空を羽ばたいてほしい》そんな思いから青色の子を空(ソラ)と名付けました。
そして《爽やかで実りある生涯を過ごせるように》と、緑色の子は春(ハル)と名付けました。
楽しかった飼育体験
大袈裟だと思われるかも知れませんが、今、振り返るとソラたちの飼育は真剣勝負でした。全力で飼育した分だけ楽しいものだったのです。
病気になったり年老いたり、つらい時期もありましたが。全体を通して見れば、陽気に笑ってる時間の方が圧倒的に多かった。
今回は、たくさんある思い出の中から、特に楽しかったものを3つ書かせていただきます。
(3つ目の思い出に、今回の投稿の主題であるソラたちとの約束が含まれています)
《思い出 1》 まるで人間の幼子
小鳥と言えどもセキセイインコは、表現力が豊か。幼馴染み?の2羽ですから鳥同士の会話も弾むのでしょう。
多様な鳴き声、コミカルな動き。見ているこちらまで、心が弾みます。
ハルは飼主に “べったり”くっつくのを好むタイプ。寝転んだ僕の胸の上で、お昼寝するのはハルでした。全身の力を抜いて、ダラーッと甘えて眠るのです。
ソラは自由主義で、飼主から少し距離を置くタイプ。ベタベタとは甘えない。でも肩の上に止まって 僕の声を聞くのが好きでした。人間の言葉を理解したいのか首を傾げたり、僕の耳や鼻をつついたり。
お互いが交代交代に相手を追いかける。ちょこまか、ちょこまか。そんな落ち着きのない動きを見ていると思わず笑ってしまい癒されました。
急に睡魔に襲われてウトウトする姿も、人間の子供のようで とても愛くるしいものでした。
《思い出2》 勢いある水浴び
温かい時期に週1回程度。愛鳥たちに日光浴や水浴びさせる時間は、僕の大きな楽しみでした。
当時、家にあった客用のガラス製の灰皿。使う機会が無くて処分しようか迷っていたのですが、それに水を入れて試してみたのです。すると、
ポチャン!
初めに勢い良く水に飛び込んだのは、ハルでした。そうですね、例えるなら...
その様子はお豆腐みたいでしたよ。お鍋に豆腐を入れようとしたら手が滑って ポチャン!
そんな感じです。
お豆腐と異なるのは着水してから後の様子。お豆腐は着水しても平常心を保ちますが、インコは気持ちが良いからテンションが上がるのです。
バシャバシャ バシャ~
覗き込んでいるこちらの顔にまで水しぶきが飛んで来ます。
「やっぱり水浴びは気持ちが良いよね。おもいっきりリフレッシュしなよ。いつか一緒に海水浴に行きたいね」
毎年の夏、このような冗談を言って過ごしました。
《思い出3》 念願の初飛行、そして約束
数々の思い出の場面。その中でも、とても強く印象に残っているものがあります。それはソラたちが初めて飛べた日の光景です。
雛から成鳥に育つ。大人になる。それを証明するのは、鳥の場合はやはり《飛ぶ能力》なのですね。雛の時期を卒業するために、鳥は羽ばたく練習をするのです。
パタパタ… パタパタ...
筋力不足
なかなか飛べない。
だけど成長するんです。日に日に羽音は力強くなる。《パタパタ...》が《パタパタッ!パタパタパタッ!》という感じになってくる。
どんどん羽ばたく回数が増えて最後は
パタパタッ! パタパタパタパタッ!
パタパタッ パタパタパタパタパタパタ~!
「あっ!浮いたっ!」
ソラの体が初めて宙に浮いた時、僕は大きな声で喜びました。宙に浮いたと言っても、わずか2~3センチですが。
「スゴいぞ、ソラ!飛べたじゃないか!その名の通り、きっと大空を自由に飛び回れるぞ。」
そしてこの時、ソラとハルに僕はある約束をしていたのです。冗談で言った約束でしたが10年後の今年、それを思い出し実行することになりました。
晩年に増す愛しさ
愛鳥との約束を果たした話の前に、晩年のソラたちとの過ごし方を書かせてください。
笑い声や癒しのある豊かな時間は、ソラたちが病んだり年老いてからも続きました。僕は今までに小鳥だけでなく犬や猫も飼ってきましたが、晩年から更に愛しさが増すように感じます。きっと残された時間を意識するからでしょう。
これは人間も動物も同じかも知れませんね。
ソラもハルも晩年は飛ぶ回数が減り、放鳥時には羽ばたくよりも僕の手や肩の上で過ごす時間が増えました。
出来るだけ明るく声をかけます。
「ソラ、今朝も ごはん美味しいかい?水も ちゃんと飲むんだよ」
「ハル、僕の留守中は寂しくなかった?よし、今日は一緒に何か歌おう!」
飼育者が体験する厳しい現実
長生きしてほしい。少しでも多くの時間、この子たちと一緒に過ごしたい。ですが現実は現実です。命あるものは皆、年老いていく。
そして命あるものは皆、最後は必ず死ぬのです。
別れの時は静かに やって来ました。セキセイインコの平均寿命よりも早く、ハルが逝きました。
覚悟はしていたけれど、僕は床にひれ伏して号泣しました。この時期、自身の病気が重なった事もあり半年くらい精神的に滅入ってしまったのです。
《なんで逝ってしまうんだよ...》
《もっと◯◯してやれば良かった》
ネガティブ思考のサイクルから なかなか抜け出せずに過ごしました。
その翌年には、ハルやソラの妹分だったアイが急病で亡くなりました。アイはとても元気な子でしたのでショックを受けましたし、繊細な小鳥を飼う難しさを痛感しました。
愛鳥から学んだ命の尊さ
ハルを失い、アイも失い、かなり精神的に弱ったのですが。残された子の世話があります。何があってもペットの飼育の手は抜けません。
「ソラ、おはよう。ハルやアイの分まで長生きしようね。今日も楽しい時間を過ごそう」
特にハルの最期は、上手くケアが出来ずに大きな後悔が残ったので。ソラの晩年は後悔のないようにと、出来るだけ 一緒に過ごす時間を作りました。
「ソラ、ありがとうね。一緒に過ごせて楽しいよ。今日もお喋りしよう。疲れたら僕の手のひらでお昼寝するかい?」
毎朝の餌や水の交換。鳥かごの清掃。放鳥時の会話。ベランダでの日光浴。
老鳥となったソラちゃんの世話をした時間。手のひらに包んで、撫でながら声をかけた時間。僕は命の尊さや平和の価値を学びました。
命の尊さ。平和の価値。
これらは必ず、優しさと共に存在するのだと。とても大きな教訓を わずか40グラムほどの小鳥たちが教えてくれたのです。
100% 感謝の涙
晩年は病気になりお腹が膨れて、動きも鈍くなっていたソラ。できるだけ優しくケアしました。
でも、時は訪れます。
ある朝、鳥かご用のカーテンを開けるとソラは亡くなっていました。
もちろん辛かった。小さくなり、固くなった屍を手のひらに包んで、涙がポロポロ溢れました。
だけど後悔はありませんでした。《もっと◯◯してあげれば良かった》という思いは全く無かった。
「最大限の愛情を持って看てあげられた」と自信を持って言えたから。この時に溢れた涙は、楽しい時間を共に過ごしてくれたソラへの100% 感謝の涙でした。
供養の花
元々、僕はベランダで花を育てていました。趣味というほどの植え方ではなく、適当に花を買って育てていたのです。
花に詳しくないので、とにかく毎朝 水やりをして、時々 自分の感覚で肥料を与える。それだけの育て方です。
ソラたちが亡くなってからは、プランターの花に供養の思いを込めるようになりました。花を見ながら(時には花に語りかけながら)あの子たちと笑った日々を思い出す。
そしてある時、気付いたのです。亡くなった子を供養するには、その子たちに似た色の花を飾った方が良いのではないのかと。
僕の想いがより分かりやすく伝わるから。
天国に向けて果たす約束
幼いソラが羽ばたいて初めて宙に浮かんだ日。念願の初飛行が叶ったあの日。僕は冗談混じりにソラたちに約束したのです。
「おまえたちと一緒に空を飛べたら楽しいだろうな〜 でも僕には羽がないから諦めるよ。おまえたちだけで飛んで楽しめば良いさ。
でも、たくさん飛んで疲れても ちゃんと間違わずに家に帰って来るんだぞ。
迷子にならないように、何か分かりやすい目印を、ベランダに置いておくから安心しなよ」
分かりやすい目印、 約束の花
ええ、きっとそうなのです。間違いありません。ソラたちは仲良く大空を飛び回り、つい、はしゃぎ過ぎたのです。
はしゃぎ過ぎて、勢い余って天国にまで飛んで行ったのです。ですから今もあの子たちは、天国で陽気に遊んでいるはず。
僕は、たいてい赤やオレンジなど明るい色の花をベランダに飾っていましたから。きっとあの子たちは気付いたでしょう
《ねえ、見て!あれは私たちの家よ。明るい色の花を飾ってくれてるわ》
花を飾っていた
だから、遠い天国から
ちゃんとソラたちは気付いてくれていた
でも、もっと
もっともっと僕の思いを伝えたい
強いメッセージをあの子たちに伝えたい
ならば、あの子たちに似た色の花を
飾ってあげれば良い。
そうすれば更に喜んでくれるはずだから
《あのプランターの花は、私たちに
愛情を伝えるために飾ってくれてるのね》
明るい色の花に加えて、
ハルの供養には
バジルなどのハーブを植えました
ハーブの緑色の葉や香りは、爽やかで
素直なイメージも膨らむから
それはハルそのものです
ソラとアイには
彼女たちに似た青系の花を植えてあげました
花屋やホームセンターを探したのです
そしたら僕がイメージした通りの花が
見つかったのです
花屋の店員さんが教えてくれました
《小さい花ですが、強くて育てやすい》と。
こうやって花に手のひらを寄せれば、
ソラやアイが花となって、今も近くで
元気に生きてくれてるような気がします
今も僕は、おまえたちのことを
大切に思っているんだよ
だから
おまえたちに似た花を探して
こうやって分かりやすく飾ってるんだよ
ハルちゃん色のハーブ
そしてアイちゃん色、ソラちゃん色の花
それは約束
飼主として堂々と胸を張った僕が
大粒の感謝の涙を流しながら
天国へ向けて果たした約束。
どうか、気持ちを楽にしてください
何も無理されることはありませんよ
もしもあなたが
大切な人との別れに泣いておられるなら、
もしもあなたが
大切な動物との別れに苦しまれてるなら
必ず立ち直れると僕はお伝えしたかったのです
感謝の気持ちさえあれば、
きっと悲しみは乗り越えられると思います
尊い命を愛するように
僕は言葉を愛します
まるで小鳥の囀りのように
僕の言葉が心地好く、
あなたの心に響いたなら望外の喜びです。
拙文、最後までご覧くださり
ありがとうございました。
《完》
あとがき
ペット店では、売れ残ってしまう動物たちがいるそうです。もしかしたらソラとハルは、店としては《売れ残り》の扱いだったのかも知れません。
ですが、とても愛嬌があり、お利口さんでしたから。他の鳥よりも劣っている点など少しもありませんでした。
だから今、僕は思っているんですよ。あのペット店で ずっとソラとハルは他の子の陰に隠れていたのだと。 僕と出会えるまで、勝ち残って待ってくれていたのだと。
愛嬌では、まるで金メダリストのように優秀だったあの子達の画像。最後に載せさせていただきました。
僕のそばにいて毎日を明るく、一所懸命に生きてくれた。そんなこの子たちのことを、もしよろしければ、誉めてやってください。
ひろまる愛理
2024年7月、祇園祭も終えた京都にて。
たくさん甘えてくれたね
ありがとう、ハル
楽しい思い出をありがとう、
ソラ 大好きだったよ
個性豊かに
そして一所懸命に生きてくれたね
ありがとう、アイ
僕は、ずっと忘れないから
ずっと大切に思ってるから
安心して
天国で のびのび楽しく、
飛び回ると良いよ
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