Moon Sick Ep.6
それでも離れようとしない彼女の頭の上に、軽くキスをすると、ようやく彼女が顔を上げた。
もうすでにアルコールの入っている彼女の顔が赤く火照っている。目も少し潤んでいるように見える。その表情で俺の方を見上げてくるものだから、ぐっとこない男がいるだろうか?
俺は彼女の唇にキスをした。彼女が照れくさそうに笑う。俺は、もう一度、今度は、顎を支えて、きちんとしたキスをした。ほどなくして彼女の手が、首の後ろに回された時には、もう、どちらからともなくかみつくようにキスを交わしていた。
夜は長い…。
シャワーを浴び、着替えて、グラスにアルコールを注ぐ頃には、夜は、もうすっかり更けていた。ベランダに出ても、音らしい音は、何も聞こえない。皆、もう寝静まっているのだ。
天体望遠鏡を覗くと、偶然、流れ星が横切るのが見えた。
「あっ…」
思わず声が出た。
「どうかした?」
その声に、部屋着に着替えた彼女もベランダにでてきた。
「今、流れ星が流れた」
「へぇ、私も見たい」
俺は、彼女に、覗く場所を教えた。
彼女は、そのまましばらく眺めていたが、流れ星を見ることは叶わなかったらしい。少し、拗ねたような素振りを見せるところが、またかわいい。
「それじゃあ…」
と言って、俺は、月にポイントを合わせた。
今夜はちょうど満月で、真夜中にしては、明るい夜だった。月は、いつもより大きな光を放っている。
天体望遠鏡で、月にピントを合わせていると、白い光を放っていただけの月が、ある瞬間、急に色付き始め、クレーターが姿をみせはじめる。
あれは、何度見ても、ちょっと心がゾクッとするのだ。それが、こんな満月なら、なおさらだ。
俺は、彼女に、月のクレーターを見せてやるつもりだった。ほんのただ、それだけの軽い気持ちだったんだ。
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