「常識」を透明にする
将棋の藤井聡太さんが、先日、7大タイトルの王位戦決定戦に4連勝し、史上最年少での二冠と八段昇格を決めました。おめでとうございます。
私も将棋が好きで、羽生さんは私のアイドルでした。史上初の7冠を獲得し、棋界初の国民栄誉賞も受賞しました。羽生さんは史上最高の棋士で、今後は羽生さん以上の棋士は現われないだろうと思っていました。が、藤井さん!です。もう言葉では言い表せないくらい、本当にすごいです。
AIでも考えつかないような一手を繰り出す柔軟な思考力だけでなく、その何とも言えない人間性も魅力的です。私が何を言っても野暮ったくなりますが、年齢とか関係なく、尊敬してしまいます。このデジタル時代に、人間が思考の限界まで考え対峙する姿は、将棋に興味のない人にも、将棋の面白さや奥深さを広めているように思います。
そう、藤井さんはまさに世間の、将棋界の常識を突き破ったのです。
このコロナ禍で今まで当たり前と思われたことが、急に出来なくなりました。ビジネス然り、買い物や働き方然り。裏を返せば、今常識と思われていることもやり方次第で、無効化することもできるということです。
常識を無効化するためのトレーニングとして、デコードワークというものがあります。これは私が以前、哲学とビジネスを融合させるプログラムで学んだ方法です。
デ・コードとは、コード、つまり常識や固定観念を脱すること。「自分が当たり前に正しいと思っていること」「自分の中の常識や思い込み」を突き破る、壊す、転回する、無効化することを、「デコード」といいます。
誰かのコピーされた情報の中で生きる私たちにとって、自分の軸を持ちつつ、世の中の構造に働きかけようとするのであれば、デコードされた考え方を持たないと、結局、有象無象の輩として埋もれてしまうのです。
だからこそ、自分の思考の過程を言語化し、新しい論理をつくることが求められるのです。デコードは、訓練しないとなかなかできません。
「ダイエットをする今までにない画期的な方法は?」
「ハロウィンになるとなぜ日本人は騒ぐのか?」
「自分が日本の総理大臣なら、何からとりかかるか?」
そんな問いを立て、あり得ないような答えでも相手を納得させる後付けの論理をつくることができれば、ビジネスでも人生でも自分が目指す「結果」に近づくことができるはずです。
例えばですが、もう9月も終わりに近づいてきましたね。オリンピックも花火も海もない夏でした。
それでは、
「なぜ夏だけ“終わり”が惜しまれるのかについて、あなたの考えを教えて欲しい。」
と言われたらどんな風に答えますか?
どんな答えを出すかよりも、むしろ、どんな過程でその答えに辿り着いたかを意識してみると、独自の考えがあなたの中に生まれてくる感覚に触れることができると思います。
私は、こんな風に考えてみました。
夏だけ”終わり”が惜しまれるのではありません。「惜しむ」の語源は「愛しむ」から来ているくらい、そもそも、人は惜しむ生き物なのです。
「ああしたほうが良かった。」
「こうしたほうが良かった。」
「もったいない。」
「惜しみない努力をします。」
と自分の言動に偏った思いを込めていきます。
過去への後悔を、未来への不安を取り除くために惜しむのです。そうして、安心したいのです。その先には、自分の内にある私的言語から解放されたい。
つまり、「忘れたい」という欲求があります。
でも、人はなかなか忘れることができず、その「忘れたい」という欲求が反転して、「惜しむ」という行為に表れているのです。
春夏秋冬と勝手に季節を決め、さらには”終わり”という区切りを勝手に設定することで、人は、ただただ惜しみたいだけなのです。」
出てきた答えよりもむしろ、答えに至るまでの思考のプロセスを言語化することが良いトレーニングになると実感しています。
どんな考え方であってもいいんです。新しい考え方というのは、最初は否定・非難されるのがほとんど。知らないから、分からないから周りから拒絶されます。しかし、後々その新しい考え方が広く深く浸透すると、世の中のデファクトスタンダードになるのです。
誰かの考えをフォローし、現状が変わらないことを嘆き続けますか?
それとも、世の中であなたがやるべきことを見つけ、新しい考え方を生みだす努力をし、伝え続けることを選びますか?
決めるのは、あなた自身です。
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