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だから、その絵は鹿児島にある。

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〜2月9日 08:30

場面1:筑波の大学の部屋(数年前・春)

(質素だが整理された大学の部屋。啓一が絵筆を置く。友人たちが集まっている。)

友人1:お、また新作か、啓一。今回はずいぶんと力が入ってるな。

友人2:本当だ。前よりもずっと深みが出てる。この風景、どこかで見たことある気がするんだが…

啓一:(少し照れながら)ああ、故郷の近くの海を描いてみたんだ。久しぶりに帰った時に、どうしても描きたくなって。

(妹の幸恵が明るい声で訪ねてくる。)

幸恵:お兄ちゃん! 遊びに来たよ!

啓一:幸恵! よく来たな。遠かっただろう。

幸恵:全然! お兄ちゃんに会えると思えば、へっちゃらだよ!

(幸恵は部屋を見回し、壁の絵に目を留める。)

幸恵:(絵に近づいて)わあ…! この絵…すごく素敵。なんだか懐かしい気持ちになる。

啓一:(微笑む) そうか? ありがとう。

幸恵:(啓一を見つめて、少し遠慮がちに)ねえ、お兄ちゃん…この絵、もらえない?

啓一:え?

幸恵:すごく気に入ったの。大阪の部屋に飾りたいな。いつもお兄ちゃんのことを思い出せるように。

啓一:(少し迷うが、妹の真剣な表情を見て)…いいよ。幸恵がそんなに気に入ってくれるなら。大切にしてくれよ。

幸恵:(満面の笑みで) うん! ありがとう、お兄ちゃん!

場面2:大阪の実家・幸恵の部屋(数か月後・夏)

(大阪の実家。幸恵の部屋に啓一の描いた絵が飾られている。幸恵と母の孝子が話している。)

孝子:本当にいい絵ね。啓一が描いたとは思えないわ。ずいぶんと腕を上げたのね。

幸恵:そうでしょ? 私もすごく気に入ってるの。毎日見てると、心が落ち着くんだ。

(そこに母の叔父、つまり啓一と幸恵の大叔父にあたる保が鹿児島から新築祝いにやってくる。)

保:(玄関から入ってきて)おお、孝子、立派な家を建てたな!

孝子:保叔父さん! 遠いところをありがとうございます。さあ、どうぞ中へ。

(保は部屋を見回し、幸恵の部屋に飾られた絵に目を留める。)

保:(絵に近づいて、目を細める)ほう…これは…

孝子:ああ、これは啓一が描いた絵なんです。

保:(幸恵を見て)君のお兄さんが描いたのか? これは素晴らしい。故郷の風景によく似ている。

幸恵:そうなんです。私もすごく気に入って、お兄ちゃんから譲ってもらったんです。

保:(絵を見つめて、感慨深げに)この絵…もらえないか?

幸恵:え?

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