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AHOISM in BEACON2


人生をかろうじて支えた言葉たち

人間は言葉で出来ている。
どんな言葉を発するか? つまりどんな言葉を選ぶかは、
その人物の輪郭を、性根を、人生を曝け出してしまう。

AHOはマダガスカル語で「私」と言う意味だそうだ。
だから、AHOISMとは無理矢理訳せば「私主義」。

昔読んだ、多分中学の時だ。
武者小路実篤むしゃのこうじ さねあつの言葉に、こんなのがあった。記憶で書いているから多少の差異はあるかも。

「全てを曝け出せないのには理由がある。
 自信がないか、何もないかだ」

白樺派のボンボンのように想われる実篤だが、
この辛辣なものの言い様には、と胸を衝かれた。

全てを曝け出す事は出来ないが、何もない訳ではないので、
取り敢えず自分の人生をかろうじて支えてくれた言葉を紡ぐ。
少しでも若い読者の役に立つ、役に立てるような言葉を吐き出せれば、
と思う。

三日三月三年みっか みつき さんねん

子供の頃、父親が言った言葉。
あまり能書きを言わない、言えない人だったが、
この言葉はよく覚えている。

今は、就職しても若い人は、三日目、三月目、三年目に辞めていく。
そんな意味合いで使われるらしい。

(バブルの時は、本当に新卒の半分以上が三ヵ月目には離職していた)

父親の言った意味は違う。
就職して、三日勤まれば三月勤まる。
三月勤まれば三年勤まる。
三年勤まれば一生勤める事ができる。
注意力散漫。
堪え性のない息子の教訓にしたかったのかも知れない。

遺品整理をしていたら、会社のOB会の会報に出したと思われる
原稿の下書きが出てきた。

そこで初めて、父親が上ふたりの兄が戦死したので、
下ふたりの弟の養育費学費のために上京し就職した事を知った。
この時、父親は13歳になったばかりだった。

ほぼ同じ会社を勤め上げた父親は70歳で完全リタイヤした。
約60年間の勤め人生活。
この言葉は、父親自身を支える言葉だったのだろう。
大正14年生まれ、享年94。
生きていれば来年、昭和と同じ100年を迎えた人。

今の若い人には通じない言葉かも知れないが、
別の言葉で言えば、石の上にも三年、とも言う。
少なくとも三年続けなければ見えてこないものはあるし、
曲がりなりにも成し遂げられることもある。
例えば・・・。

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