『〈卵王子〉カイルロッドの苦難』
冴木忍/富士見ファンタジア文庫/全9巻(小説)
1992年から1995年にかけて刊行。わたしが読んだのは完結後の多分1996年。挿し絵に惹かれて1巻を買って読み、即座に全巻揃えて一気に読んだ。
みたいな話。
もう少し説明すると。
カイルロッドはルナンを石に変えた張本人を倒すために旅をし、さまざまな人と出会いふれあい、つらく悲しい別れも経験する。成長もするが、のんきでちょっと間抜けな普通の青年のまま物語は進んでいく。
しかしカイルロッドには本人の知らない宿命があった。
もうこの宿命がつらい。
カイルロッドが背負っている宿命を知っている人々は、なんでこの子じゃなきゃだめなんだと苦悩する。普通の人生を送らせてやりたいと思う。
思ってもカイルロッドにしか頼れない、カイルロッドに背負わせざるを得ないつらさ。
わたしも何度も読んで知ってるからつらい。何度読んでもつらい。
以前、昔好きだった物のほとんどが嫌になり、本もかなりの数を捨てた時期がある(最近じわじわ後悔している。じわこうだ)。
しかしそんな時にも卵王子は捨てなかった。
理由は「絵が好きだから資料として」。一体なんの資料なのかは分からないが、本当に捨てなくて良かった。
まさに「隠れた名作」。隠れてなかったらすみません。でも埋もれてしまってるとは思う。