わたしが切りとった棚田のショートストーリー【夏-秋編】
初夏、田んぼを訪れると
カエルとウグイスの声、水が流れる音が心地よく響いている
鏡のような水面が空を映す
イトミミズはおしりをふりふりしてダンス!
イネは、ひとりでたくましく立ち、ほかの生き物に助けられながらすくすくと育っている
棚田に人の気配は少ない
そのかわり
水の中は賑やかさを増して
生き物たちの楽園のよう
イネの葉に隠れるクモや、水面を滑るアメンボを
息を潜め、じっと見ているのが好きだ
7月の田んぼは透明で
翡翠色の世界になる
瑞々しいイネの身体は次の世代へ種を残そうと変化していた
田んぼがこんなに身近にならなければ
イネの花を見ることもなかっただろう
花の咲く時間は短いのだ
緑のじゅうたん
まっ白な雲
真っ青な空
何と美しいコントラストだろうか
8月は
おわりとはじまりが交差する
棚田の水を落として
田んぼを乾かす
今年の稲刈りのためと、
来年の準備が始まっている
イネは立派に穂を実らせ、その時がくるのを待っている
金色の棚田を見下ろすとき
いつもナウシカを思い出す笑
秋はセミの声が騒がしい
ついに、黄金色のイネを刈りとる時がきた
地面は乾燥してヒビが入り、パズルができそうだなと思う
生きものたちのフィールドは、水田から乾燥地へと変化をとげる
イネがすくすく育つ舞台を、意図的に用意するのはたけしくんの役目
残されたイネの身体は
目には見えない無数の生き物たちの呼吸により、次の世代のエネルギーとなる…
(冬-春編へと続く)
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