目が合う本
先月の始め頃、九品仏に行きました。
九品仏は大井町線の九品仏駅を出てすぐそこにあります。そして駅からすぐそこにある九品仏よりもさらにすぐそこに、小さな古本屋さんがあります。とってもシブい古本屋さんです。
そのシブい古本屋さんは店前にラックを出していて、そこにもいくつかシブい本が並んでいます。いつもここを通る時はこのシブい本が並んだラックを見遣りつつ通過するのですが、その日はそのシブい本の中の特にシブい一冊と目がバシッと合ってしまいました。しかし私は九品仏に向かっていたので『目が合ったな。気になるな』と思いながらもそのまま直進したのです。しかし九品仏にいる間ずっと気になっていたので、帰り道にその気になる本を手にしてみたところなかなか面白そう。買うことにしました。
本を手に店内に入ると、所狭しと歴史モノやら映画関係、文学系に科学系に哲学系などなどあらゆるジャンルの、そしてもしも濃淡がはかれる秤があるならばどの本も最大値の『特濃』に針が振り切ってしまいそうなくらいの、そのどれもこれもがザ・古本オブ古本といった風情バリバリで縦にも横にもモーレツに重なっていました。『こりゃすんごいな!てゆーか亜空間だな!』と思いました。きっと店主もタダゴトではないに違いなかろう。おそるおそる奥まで行ってみると、なんと意外にも若い兄さん店主がおにぎりを食べながらちょんと座って仕事していました。お〜!そう来たか。しかもMacBook使ってるし!
ということで、買ってきた本はこれです。
『伊豆の魚村』ですよ。この『伊豆の漁村』が店前のラックの中から私のことをジーっと見てきたんですよ。みると1953年2月出版と書いてあるので今から69年前に出た本ということですね。69年の時を経た熱視線ですよ。そして@九品仏という出会い。出会いはロマンじゃのう!
で、この『伊豆の魚村』とても薄い本なので一見軽く読めそうに思ったのですが、写真が多くてけっこうなボリュームなんです。たい焼きで言えばしっぽのぎりぎりまでみっちりあんこが入っている感じです。いや、ほぼあんこって感じなのできんつばかな?
どうやって写真を撮ったかのエピソードもあったり、文と写真なのにものすごくリアルに伝わります。岩波写真文庫というシリーズのようです。
バックナンバーも興味深いものが多いですね。特に気になるのが37巻だなー。
と、ボリューミーなのでゆっくり少しずつ読んでいるのですが、昨日また続きを読みたくなったので持って出かけ電車の中で読んでいたら、右側からものすごい熱視線。私の隣の隣に座った小学生男子がものすごい身を乗り出して『伊豆の漁村』の表紙に釘付けになっていました。降りるまでの2駅の間表情一つ変えず微動だにせず、据わった目でジーっと……。
何かものすごい強烈なものをこの小学生男子に植え付けてしまったような気がしてなりませんでしたが、私も九品仏の古本屋で同じように釘付けになってこうして持っているので、男子よ、これは運命と思って受け入れてくれたまい。なんなら九品仏の古本屋に行って他の岩波写真文庫を買うのだ。お年玉で。
それにしても『伊豆の漁村』、ガチンコで目が合う本なのかもしれません。
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古本屋といえば神保町!以前神保町で行ったライブの動画をおひとつどうぞ。
hirokophone ビールタイム15@神保町楽屋『小さなradio』
『小さなradio』はラジオビールタイムでもピックアップされました!スタジオテイクで聴けますよ♪
2021.12.26放送分『ラジオビールタイム』#4
中華こばやしトリビュートEP『paradise』に入ってます!
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