《①十人十色の自己決定》北欧留学に学ぶ障害者福祉の在り方《デンマーク人にインタビュー》
女の子大好きな車椅子ユーザーのNくんと過ごした半年間を振り返ってアシスタントだった彼が今、思うこと。
簡単な質問をしてみた。
《自己決定ってなんですか?》
「自分自身で自由に決めること」と
話すクリスチャン、当時25歳。
彼がエグモントホイスコーレで半年間
アシスタントとして同じくらい大きな体の
車椅子ユーザー、Nくんを
サポートする日々の中で
自己決定について話してくれた。
「彼の場合、『スクワットしたい』とは
言えるけど、こちらが操作しなくても
それを彼が実行できるわけじゃない。
時々彼の決定に対して
こちら側が操作する場面もある。
彼は自分の意見を持ってるし、
理解力も高い。
ニュースもよく読んでるし、
すべてのことは覚えてる。
事故の前までのことはね。」
彼の人生をよりよくしたい。
「いつもすぐに忘れちゃうんだ。
短いことしか覚えていられない。」
わかりやすく
彼のことを説明してくれた後で、
笑いながら
「彼はいつも
どうやったら女の子たちと話せるか、
って僕にたずねるんだ。」
そこで
健康維持のため体重の増加をセーブしたい
本人の意思と
キーワードの女の子をくっつけて、
クリスチャンはある提案を。
「やっぱり女の子たちにモテるには
鍛えないとねって。
そしたら、
彼はトレーニングも欠かさず
行くようになったんだ。
あとは、間食を減らすために
《バッグinキャロット》計画もやってるよ。
カバンの中に人参を入れて、
お菓子を食べ過ぎないように
人参で時々セーブしてるんだ。
彼、人参好きだから。
僕は彼の人生を豊かにしたいし、
少しでも良い方向へ発展させたい。
彼はすごく頭がよくて
6ヶ国語を話せるんだ。
それを彼がみんなに披露したいと言った時、
ランゲージカフェでもやって
女の子を呼んでみるのは?って提案して。
そこから一緒に
どうやったら女の子が来るか考えたんだ。
クッキーやコーヒーを用意したらどうか?
なんてね。
ここまで話してみても、
彼が常に女の子のことを考えてる
ってことがわかるでしょ?笑」
気をつけていることは、共同生活の中で
彼の障害が不利にならないようにすること。
事故による脳への障害から思ったことは
すぐに言ってしまう傾向にあるNくん。
時々、集団の場では
周りを困惑させることもしばしば。
誰かの説明中にも話したくて、
スっと手をあげる彼の横でクリスチャンは
「まず、彼が何を言いたいか聞いてみる。
例えば彼が笑っていたら冗談言って
みんなを笑かしたいんだなってわかるし、
シリアスな顔だったら
一緒にその場を離れて落ちつかせるよ。
時々失敗してセンシティブな子にも
ひどいこと言ってしまう時もあるんだ。
そんな時はまず彼の言動を止めてから、
さりげなくその子のところに行って、
『バカなことまた言ってるだけだから、
本気にしないでね』ってフォローするよ。」
クリスチャンの優しい配慮も
本人同士がトラブルにならないよう
アシスタントとしてはとても大事である。
僕はベジタリアンになる!
「最初に彼が僕にそう言った時、
ベジタリアンはおもしろくないし、
大変だよとアドバイスした。」
食べるものが限られるからだろうか?
クリスチャン自身がベジタリアン。
エグモントでは生徒それぞれの食に
柔軟に対応している。
「いつも横で別メニューを食べる僕が
気になって、
時々僕の食事を取ろうとするんだ。
そんな時は
『だめ。
これはベジタリアンだから、
あげない。』ってきっぱりNOと言う。
さっきも言ったけど
彼は本当に頭が良くて
アシスタントになってから気候や自然、
エコの話や経済の話なんかも
彼とよくするようになって。
ベジタリアンになれ!とは言ってないのに
彼がベジタリアンになるって言って
翌週からの
ベジタリアンのリスト(名簿)に
名前を書きに行った時は
正直、うれしかったよ。」
そう言って
約15分ほどのインタビューを終えた。
クリスチャンは
終始笑顔で語ってくれ、
その翌年、見事にエグモント内の
ヘルプティーチャーに選ばれた。
また違った側面で彼とふれあうことや、
彼以外の学生たちを見れるいい機会だろう。
いつも周りを気にかけて
必ず挨拶を忘れない真面目で
素直なクリスチャンから学ぶ、
十人十色の自己決定。
今シリーズの記事について
《十人十色の自己決定》は
「健常者と障害者」
という目には見えない隔たりに
疑問を感じながら飛び込んだ
北欧デンマークにある
エグモントホイスコーレンでの学生lifeは
「環境さえあれば、障害なんて越えていく」
まさにそんなワクワクドキドキが
止まらない日々だった。
エグモント卒業間近にふと考えた
「障害のある人の自己決定」について
障害のあるユーザーをサポートする
様々な人にインタビューした。
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